ライセンス販売本数が一カ月で4,000万本を突破し、Windows 7のペースを上回ることがわかったWindows 8。Microsoftおよび日本マイクロソフトでは、より多くの販売結果を得るために、法人向けの取り組みをさらに強化している。タッチ操作を主体としたWindows 8はトレーニングコストの軽減や、セキュリティ強化による利用シーンの拡充は現実的だ。今週のレポートは11月末に日本マイクロソフトで記者説明会が行われたので、同社の取り組みをお送りする。

そしてもう一つ興味深いのが、次期Windows OSではないかと噂されている「Windows Blue(開発コード名)」の存在だ。海外ニュースサイトである「The Verge」により、これまで明らかになっていなかった情報が報じられたので、未確定情報ながらも本レポートで紹介する。

法人向け取り組みを強化するMicrosoft

Windows 8におけるドラスティックなUI(ユーザーインターフェース)の大きな変更は、販売不振につながるのではないかと言われていた。だが、先日報じられたように、大方の予想を裏切る結果に驚きを隠せない方は少なくない。Microsoftの発表によるとWindows 8の売れ行きは一カ月で4,000万本を超えた。

リリースから三日間で400万本を販売したという発表を踏まえると、約133万本/日のペースで販売されたことになる。いまだ多くのユーザーを抱えているWindows XPは、リリースから二週間で700万本を販売し、Windows 7は三カ月で6,000万本を販売した。Windows 8の販売はダウンロード形式を重視しているからこそ、このペースを実現できたのだろう。

だが、より多くのユーザーにWindows 8を普及させるには、個人だけなく法人も取り込まなければならない。Windows XPを導入している企業は少なくないが、同OSのメインストリームサポートは2009年4月14日と既に終了し、延長サポートも2014年4月8日と500日を切った。延長サポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなるため、Windows 7もしくはWindows 8への乗り換えニーズが発生するのは火を見るよりも明らかだ。

もちろんMicrosoftも手をこまねいている訳はなく、同様の意見は各発表会でスピーチしてきた。そこで、法人向けの機能や日本市場における導入支援など、日本マイクロソフトの新たな取り組みを記者向けに行った発表会に参加し、その内容をレポートする。

壇上に上がって法人向け機能の説明やデモ(デモンストレーション)を行ったのは、MicrosoftのWindows Business Group Windows Commercial担当シニアディレクターとなるErwin Visser(アーウィン・ヴィッサー)氏。「Windows 8はWindows 95以来の大きな存在である」と述べつつ、「エンタープライズ環境で求められるセキュリティや管理性、過去のアプリケーション資産を活用できる」と強調。他にもWindows 7とWindows 8の混合した環境で利用可能な点や、クライアント仮想化などビジネスシーンにおけるWindows 8の機能を説明した(図01)。

図01 MicrosoftのWindows Commercial担当シニアディレクター、Erwin Visser氏

Windows 8に関するデモは、基本機能の説明やWindows To Goによるもので、さして目新しいものはなかった。興味深いのは海外企業による早期導入事例。Emirates Airline(エミレーツ航空)では、乗務員および乗客を管理するWindowsアプリを開発し、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)は銀行口座管理用Windowsストアアプリを提供し、タッチ操作による取引の明細や小切手の確認が可能だという(図02~03)。

図02 乗務員の管理アプリをタッチに対応させたEmirates Airlineの事例を紹介

図03 Bank of Americaが開発したWindowsストアアプリ。オンラインバンキングのデモを行った

導入事例に関しては、日本マイクロソフトの業務執行役員 Windows本部 本部長である藤本恭史氏も壇上に登場し、早期導入表明を行った企業やWindowsストアアプリのデモを紹介。先ほどと変わって興味深いのは日本市場のWindows 8導入状況だ(図04~05)。

図04 日本マイクロソフトの業務執行役員 Windows本部 本部長、藤本恭史氏

図05 対面販売用カタログとなるインフォテリアの「Handbook」

既に16社が早期導入を表明し、報じられたNTTドコモとの法人向けタブレット市場に関する協業では、共同営業により3社(3,000台以上)でWindows 8導入案件を獲得。中~大規模企業70社以上と商談を展開中だという。この他にも日本マイクロソフト単独では100社程度の商談を行っているそうだ。

また、同社では法人市場向けデスクトップアプリの対応にも注力し、2012年11月時点で1,102本のデスクトップアプリをリリースし、「Windows互換性センター」による認定を取得したデスクトップアプリは94本を超えたという。この数字は一見すると少なく見えるが、藤本氏によると「ロゴ取得の増加率はWindows 7と比較して、2.7倍ペース」だそうだ(図06~07)。

図06 NTTドコモとの法人向けタブレット市場に関する協業状況

図07 法人市場向けデスクトップアプリの対応状況

前回のレポート記事で、MicrosoftがWindowsストアアプリ開発者のための「Windows Store App Labs」を用意したことに触れたが、日本国内はWindows 8搭載タブレットの法人向け導入を支援する「Windows 8アプリ検証ラボ」を期間限定で設置すると発表した。

各社の法人向けWindows 8搭載タブレット型コンピューター、Active DirectoryやSharePoint Serverなどのオンプレミスサーバー環境を設置し、業務向けアプリケーションの検証を可能にしている。発表された2012年11月29日から2013年3月末までと約四カ月の短い期間なのが気になるところだが、現在Windows 8の導入を熟慮している企業の強い味方になるだろう(図08)。

図08 大手町テクノロジーセンターに設置される「Windows 8アプリ検証ラボ」の説明

Windows 8が備える機能を踏まえても、これまでWindows OSをビジネスシーンで活用してきた企業の移行先として合格点に達しているのも理解できる。タブレット型コンピューターやWindows To Goで、ビジネススタイルが変化する可能性も少なくない。だが、設備投資を控える動きが強い現状を踏まえると、Microsoftや日本マイクロソフトが一体化し、Windows XPからの移行を予定している企業の後押しやアピールを、より強める必要があるだろう。