唐突だが、私の家には象印マホービンのホームベーカリー「パンくらぶ BB-HB10」があり、大変重宝している。夜、小麦粉とスキムミルクと少量の砂糖、イースト菌、水を入れてタイマーをセットしておくと朝には焼きたてのパンが1斤できあがっている。
聞くところによれば、パン作りとはこねたり寝かしたり焼いたりで6時間もの格闘であり、ようやく完成したものが発酵が足りずにカレーのナンのようになったり、お好み焼きもどきができたりといった、実に手間がかかる上に失敗率の高いものらしい。
私は「パンくらぶ」でしかパンを作ったことがないので、そんなことは何も知らない。面倒なのは秤で小麦粉や砂糖を正確に分量するところだけである。あとは「パンくらぶ」に任せている。朝、いい匂いがして、昨日の夜もよく仕事をしたようだなと思う。"靴屋の小人"ならぬ"パン焼きの小人"が「パンくらぶ」なのだ。
自分で焼いたパンは旨いのだ
そんなイージーに焼いたパンがどうかというと、これがうまい。かなりうまい。
フランス料理屋に入れるようなパン屋のパンにはさすがに負けるが、商店街の昔ながらのパン屋さんの焼き立てパンとはほぼ互角、スーパーで売っている工場製のパンとは比較にならない。切ると粉の香りがふわーっと立ち、もっちりしたアツアツの白い生地にバターを塗ると本当に幸せである。ごはんは炊きたて、パンも焼き立てが一番おいしい。
問題は食べ過ぎてしまうことだ。家族3人、うち1名は小学校低学年でたいして食べられないはずなのに、焼くと朝だけで1斤がキレイになくなってしまう。おいしいものは危険だ。
そんな「パンくらぶ」に新モデル「BB-KW10」が登場した。私のお気に入りのBB-HB10とBB-KW10で何が変わったのか? よく見ればパンのレシピが若干変わっていた。分量がちょっとだけ違う。
そこで試しにパンを焼いてみたが、手順は同じ。水を入れてから粉や砂糖を入れて最後にドライイーストを加える。焼き上がったパンはやっぱりおいしい。以前のモデルとの差は私にはほとんどわからなかった。家庭で焼き立てパンを味わいたいならこれで十分である。これ以上できるならやって欲しいが、そうすると発酵バター入れたりとかどこ産の粉を使うとかイースト菌は生がいいとか、家庭での日常食からどんどん遠ざかりそうなので、これでいい。
粉物に対応! 自宅でそば打ちの夢が実現
じゃあパン焼き以外で何が変わったのかというと、BB-KW10ではそばやうどんといった粉物を扱えるようになったのだ。粉を練ってくれるのだ。これは世の中のお父さんにアピールするのではないか?
気の利いたそば屋は、店で打つところを見せる。白木の台に粉を打ち、練ったそば粉を麺棒で広げていく。見ていると、それほど難しそうには見えない。できそうな気がする。店のようにたくさん作るのは無理でも、家族の分ぐらいは作れるんじゃないか? と思う。
そば屋を回ると、味が千差万別で驚く。そば粉と小麦粉を水で練って切る……たったそれだけの食べ物なのに、作る人によって別物と言っていいほど味が変わる。練り方か? 切り方か? だんだん打てる気になってくる。自分だったら、もっとおいしく打てるような気がしてくるのだ。自分が旨いと思える、自分のためのそばは自分で打たないとダメなんじゃないのか?
中年男性はそうしてそば打ち道に足を踏みこんでしまうのだ。私も体験そば打ち教室に一度は行ったので、その気持ち、よく分かる。あれはやりたくなる。
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