「さわってみよう Firefox OS」と題する勉強会が11月3日都内で開催された。主催したのは、デザイナーズハック、Tizen JapanコンソーシアムにMozilla Japanが加わった3団体である。まずは、デザイナーズハックとTizen Japanコンソーシアムについて、説明をしよう。

HTML5をみんなで学ぶ勉強会

まずは、デザイナーズハックである。デザイナーズハックは、デザイナーの立場でありながら、最新のマルチデバイスや技術に対応することを目標としている。Webデザインといっても、インターネット上のWebページだけではない。マルチデバイスで、最適なデザインをどう作っていくか?さらにエンジニアとの連携などを標榜する。そのための勉強会などのイベントを開催している。詳細は、公式ブログを参照してほしい。活動内容やどのような目標かを知るだけでも、興味深い。

Tizen Japanコンソーシアムは、モバイル用のオペレーティングシステムであるTizenをテーマに取り上げている。TizanはLinuxをベースにし、タブレット、スマートフォンなどのデバイスで動作するものだ。まだ歴史は浅いが、サムソンなどから、すでに試作機などが提供されている。実装では、HTML5などのWeb標準に準拠している。国内の開発者をメインに、情報交換を行っている。

当初はTizen Japanコンソーシアムによる勉強会であったが、後にデザイナーズハックも加わわるようになった。勉強会では、HTML5アプリプラットフォームにも注目され、Firefox OSについても(今回のセッションでも登壇する)本間雅史氏が講演されていた。そこにMozilla Japanの浅井智也氏も参加した。それがきっかけとなり、今回のハッカソンが開催されることとなった。

図3 今日のテーマ

勉強会といっても堅苦しい雰囲気はどこにもなく、ゆるい雰囲気で楽しみながら進行するのも特徴の1つだ。今回の「さわってみよう Firefox OS」では、午前中にセッションが3つ、午後から実際にアプリ開発を行うというスケジュールであった。個々のセッションは、Tizen JapanコンソーシアムからYouTubeに動画としてアップされる予定である。詳しいセッション内容はそちらを参照していただきたい。本稿では、紙数の都合もあり、キーポイントや実際に筆者がふれたFirefox OSの感想などを紹介したい。

Firefox OSとは?

まずは、今回のメインとなるFirefox OSについて紹介したい。Mozilla Japanの浅井智也氏のセッション(Firefox OSのアプリ作成方法やインストール方法など)の一部である。

図4 浅井智也氏

かつてのブラウザ戦争以来、ブラウザの独自拡張が行われてきた。また、デバイスでもその差が大きかったといえる(iモードなど)。その反省も含め生まれたのがHTML5である。その特徴は、

  • アプリのためのHTML5
  • 互換性のある実装
  • マルチデバイス対応

などである。こうして共通のプラットフォームが形成されたかに見えたが、またしても独自技術による囲み込みが発生している。浅井氏によれば、この2年ほどは、Web技術をサポートするプラットフォームとして共通のブラウザがある一方で、独自技術で囲い込みその中にWeb技術を取り込んでしまおうという動きも存在するとのことだ。Mozillaでは、どのブラウザでも、どのOSの上でも共通して動くプラットフォームが望ましいと考えている。しかし、その実現にはまだまだWebは力不足であり、さらに進化させる必要があるとのことだ。WebがOSのレベルまで進化すれば、独自プラットフォームの囲い込みもなくなる。その発想から生まれたのが、Firefox OSである。Mozillaでは、単に仕様を提案するだけではなく、実装も一緒に提案している。その理由は、仕様がよくても実装したらつまらない、他の技術と組み合わせたらよくなかったといったことも少なくないからである。

HTML5では、マルチメディアのサポート、オフラインアプリ、ファイルの読み書き、双方向通信などさまざまなことが可能になった。しかし、ネイティブアプリでなければできないことも存在する。具体的には、電源が繋がっているか?といったシステムステータスを知る術はなかった。Webアプリではつねに電源が繋がっていて、フル回転してしまう。電池が少なくなれば、処理を軽くする、通信を抑えるといった調整が必須となる。さらにセンサー類を制御、USBなどの低レベルハードウェアなどの制御も必要となるだろう。こういった制約をなくすことが、Firefox OSに課せられた目的である。

図5 Firefox OSの目標?

これをMozillaだけでやっていたのでは、独自プラットフォームになってしまう。そこでMozillaでは、実装と並行して、各種ベンダーと共同でW3Cの標準化なども進めている。

Firefox OSにさわってみる

当日の勉強会では、実際にFirefox OSがインストールされた実機が10台ほど用意された。機種は、海外モデルのGALAXY SIIであった(KDDIの協力があったとのことだ)。ここからは、多分に筆者の個人的な感想が多くなるが、ご了承いただきたい。まずは、実機の画面を紹介しよう

図6 ホーム画面

図7 ブラウザ画面、まさにFirefoxそのもの

図8 設定画面

図9 3Dの動きも比較的滑らかだった

操作感は、AndroidよりもiPhoneに近い。アプリには[戻る]しかなく、アプリの終了は物理ホームキーを使用し、ホーム画面に戻る。まだ開発途中ではあるが、動きはかなり滑らかであった。あとは起動・停止も非常に速いという印象であった。

また浅井氏のセッションでは、Firefox OSを実装した端末が2013年にブラジルでリリースの予定であると伝えらえた。CPUには、Qualcommのローエンドチップが採用されるとのことである。その理由であるが、ブラジルでは、数百ドルもするようなスマートフォンは普及しない。もっと価格をさげ、100ドルくらいでなければ購入対象とならないとのことだ。ローエンドチップを採用することで、バッテリーの持ち時間なども大幅に改善されるであろう(もちろん、動作が遅くなることは避けられないだろう)。現状、スマートフォンユーザーの多くは、バッテリ問題には頭を悩ませていると思う。この点も興味深いといえる。