iPad miniの発売からはや1週間。最初は違和感を覚えたが、慣れはじめると従来のiPadが「大パッド」に感じられてしまうほど、という感想をよく耳にする。だが、理由はその大きさと重量だけだろうか? 今回は、Wi-Fiモデルユーザ大注目の「iPhone 5テザリング」と、ベンチマークテストを通じたCPU/GPUのパフォーマンスチェックを通じ、その魅力の理由を探ってみたい。

本レビューの前編となる「初めて登場した、"9.7インチじゃないiPad" - iPad mini徹底レビュー(前編) あの機能、この機能をチェックする」も合わせてお読みください。

iPhone 5でテザリング、実はBluetoothが便利

筆者の周辺にiPad miniについて尋ねると、約3割がCellular版待ち、残りがWi-Fi版を購入済みか購入予定という状況だ。元々iPadの購入層は7~8割がWi-Fiモデルを選ぶとのデータがあるため、驚くほどではないが、それでもiPhone/iPod touchとの違いを改めて感じてしまう。ここ1年ほどでコンビニエンスストアなどに無料Wi-Fiスポットが多数設置され、外出時のインターネット接続環境が改善されたことも影響していそうだ。

その傾向に拍車をかけそうなトピックが「テザリング」だ。以前からAndroid端末やモバイルルータという方法も存在したが、Apple製品ファンの多いiPadにおいては、先日発売されたiPhone 5でようやく一般的な選択肢になったといえる。iPhone 5ユーザであれば、定額の通信費が加算されるセルラー版より、Wi-Fi版を志向することが自然だろう。

テザリングに対応したiPhone 5があれば、Wi-Fiモデルの機動性は格段に高まる

しかし、iPhone 5のテザリングで快適にiPad miniを使えるかどうか。iPhone 5側の設定はこちらのコラムを参照いただくとして、iPad miniは接続ルートがワイヤレスに限定される。USBで接続可能なMac/Windowsマシンをクライアントにする場合に比べ、条件が若干不利なのだ。

iPhone 5のテザリングは、インターネット共有を有効化するだけでは不十分。いちどスリープしてしまうと、そのままの状態ではWi-Fiアクセスポイントとして検出されないのだ。『設定』→「インターネット共有」の順に画面を開きしばらく待てば、Wi-Fiの信号を発するようになり検出可能になるものの、iPhone 5がスリープするたびにこの操作を行うのはかなり面倒。なお、筆者はiOS 6.0/6.0.1でこの現象を確認している。

Bluetoothで(テザリング機能が有効な)iPhone 5に接続開始したところ。最初はペアリングの手続きが必要だ

スリープ後にWi-Fiアクセスポイントとして検出されない問題は、現在のところ前述の方法でしか解決できないが、「Bluetooth接続」という方法がある。同じテザリングでも、接続がBluetoothであれば、iPhone 5がスリープ中であっても難なくBluetoothデバイスとして検出されることを確認している。

肝心のアクセス速度だが、Wi-Fiに比べると落ちるものの、感覚的にはIEEE 802.11b程度は確保できている印象を受けた。試しに、「SpeedTest」というアプリで実効速度を測定してみたところ、iPhone 5が上り9.8Mbps/下り1.1Mbps(LTE)のところ、BluetoothでそのiPhone 5に接続したiPad miniは上り1.5Mbps/下り0.6Mbpsという結果になった。スリープのつど「インターネット共有」画面を開くのが手間なことを考えれば、悪くない選択肢だといえる。

iPhone 5にBluetooth PANで接続したiPad mini。左上に表示された鎖状のアイコンと「Bluetooth」の表示に注目

iOSデバイスの通信速度を測定するアプリ「SpeedTest」で、LTE回線に接続中のiPhone 5を測定したところ。上りが平均9.8Mbps/下りが平均1.1Mbpsと、まずまずの速度

iPhone 5にBluetooth PANで接続したiPad miniの通信速度。上りが平均1.5Mbps/下りが平均0.6Mbpsと、IEEE 802.11b並の実効速度を得られた

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