ベンチマーク徹底検証
iPad miniのCPUには、デュアルコアの「Apple A5」が採用されている。そしてGPUはPowerVR SGX 543MP2/デュアルコア、メモリ容量は512MBと、基本スペックはiPad 2と同等といっていい。液晶パネルが7.9インチであることと、画素密度が約20%高い163ppiであること、一方で重量は308gと約半分に抑えられていることを除けば、確かに小型iPad 2と言われうなずける部分はある。
演算によるCPUおよびメモリのパフォーマンスを測定するベンチアプリ「GeekBench 2」で試しても、実際のところ両者は僅差に近い結果となった。さらに、より高性能なApple A5Xを搭載した第3世代iPadとの結果もほぼ同じ。演算性能に関するかぎり3モデルの性能差は小さく、パフォーマンスに与える影響は軽微といえる。
表1:Geekbench 2.3.6の結果
iPad mini | 第3世代iPad | iPad 2 | 初代iPad | |
Integer | 673 | 689 | 686 | 373 |
Floating Point | 903 | 919 | 915 | 469 |
Memory | 825 | 833 | 828 | 700 |
Stream | 322 | 333 | 286 | 336 |
TOTAL | 748 | 762 | 754 | 468 |
※初代iPadのみiOS 5.1.1 |
もちろん、初代iPadとの差は歴然。クロック数だけ見ると、A4とA5は800MHz-1000MHzの可変仕様と等しいが、A4のコアはARM Cortex-A8の拡張版、A5のコアはARM Cortex-A9と異なる。メモリアーキテクチャもLPDDRからLPDDR2へと変更され、消費電力削減と帯域向上により高速化が図られている。特に整数/浮動小数点演算の性能差は大きく、iPad miniにとって解像度こそ等しいが完全に過去のデバイス、と言っていいだろう。
次に、GPUを見てみよう。iPad miniには、iPad 2と同じGPUコアのPowerVR SGX 543MP2/デュアルコアが搭載され、1,024×768/163ppiの液晶パネルを駆動する。SGX系コアは、最大16基の浮動小数点演算ユニットをSIMD(Single Instruction Multiple Data)で構成するため、デュアルコアのA5では32ユニットを積む計算だ。
これを初代iPadと比較してみよう。A4のGPUは同じSGX系コア(PowerVR SGX 535)だがシングルコアであり、浮動小数点演算ユニットは16と半分。そしてA4のメモリはLPDDR、帯域が向上したLPDDR2を採用するA5には大きく見劣りする。
両モデルの性能差は、数値でもはっきりと確認できる。OpenGLベンチマークアプリ『GLBench 2.1.5』を利用し、新旧iPad4モデルをテストしたところ、iPad miniとiPad 2はほぼフルフレームレート(60fps)だったが、初代iPadはかなり厳しい結果となった。
一方、第3世代iPadは、より強力なGPU(PowerVR SGX 543MP4/4コア)とCPU(A5X)を積むものの、画素数が4倍ということもあり、フレームレート自体はiPad mini/iPad 2に及ばなかった。過去行ったテストでは、第3世代iPadを下回る結果となったことがあるが(リンク)、アプリがバージョンアップされたこともあってか、今回はiPad mini/iPad 2が上回った。とはいえ、その差はわずかだ。
表2:GLBenchmark 2.1.5
iPad mini | 第3世代iPad | iPad 2 | 初代iPad | |
Egypt / standard | 6709(59fps) | 5,965(53fps) | 6,648(59fps) | 1,406(12fps) |
Pro / standard | 2977(60fps) | 2,912(58fps) | 2,954(59fps) | 1,017(20fps) |
このように、iPad miniの描画パフォーマンスは、Retinaディスプレイ搭載の第3世代iPadを上回るものでも、同じCPU/GPUを積むiPad 2を下回るものでもない。アクションゲームなど描画性能が重要なアプリを試すと実感できるが、各モデルの操作性いはサイズや重量、解像度など物理的な理由が主で、アプリなどを通じて得られる「エクスペリエンス」の質に影響するほどではない。このあたりの調整の巧みさはAppleならでは、"買いたいと思うときが買い時"といわれるApple製品たるゆえんだろう。