「iPad mini」とはどのような製品か?

Wall Street Journalなどが以前に報じた話を総合すれば、iPad miniのディスプレイサイズは7.85インチで、韓国LG Displayと台湾AUOがディスプレイ製造を担当、そして解像度はRetinaではない従来製品のPPI (Pixel Per Inch)水準のものになるという。つまり、ディスプレイサイズは現行の9.7インチ(10インチ)サイズからやや小さい、いわゆる7インチクラスのものとなり、非RetinaということでiPad 2以前の1,024×768程度の解像度がそのまま採用されることになるとみられる。

ディスプレイをこのサイズ・解像度にした理由としては、この解像度とアスペクト比であれば従来のアプリがそのまま動作することが挙げられる。iPhone 5ではディスプレイの縦横比を変更するという大きな決断がなされたが、iPad miniは製造コストをそれほどかけられない製品である可能性が高い。つまり純粋にiPad 2をそのまま小型化したイメージだと考えられる。非Retinaのディスプレイを採用する最大のメリットの1つは「強力なGPUパワーとメモリ容量が必要ない」ことで、これによりプロセッサを「A5X」ではなく、第5世代iPod touchでも採用された「A5」にできるほか、液晶開口率等の問題でバックライトの輝度を上げずに済み、バッテリ搭載容量を減らして薄型軽量化や低コスト化に結びつけることができることになる(「なぜA5か」という点については、後ほどもう少しくわしく解説する)。

また、そのほかの噂では、iPad miniでは本体背面にiSightカメラ、本体前面にFaceTimeカメラの2つのカメラを装備する可能性が示唆されている。筆者もデュアルカメラの存在は複数のソースから話として聞いており、可能性としてはかなり高いとみられる。カメラ搭載はユーザーにとっては嬉しい話だが、同時にある面でiPad miniの設計思想の根幹における世間の評価との矛盾もはらんでおり、非常に興味深い。当然、iPhone 5で採用された「Lightning」ポートも搭載してくるだろう。

3G (LTE)搭載の有無も大きなポイントだろう。従来のiPadであれば、Wi-Fiのみを搭載したモデルと、それに加えて3G (+LTE)モデムとGPSを搭載した「Wi-Fi + Cellular」モデルの2種類が用意されている。Wi-Fi搭載は必須として、問題は3Gモデル登場の可能性だ。筆者としては「3G搭載はアリ」という意見で、その理由としてはiOS 6のマップで初めて搭載された「Turn-by-Turnナビゲーション」機能の利用にあたっては、3G通信ならびにGPS搭載が必須となっている。iPadでも「3G通信が可能なiPad 2以降の機種」が利用条件となっており、カーナビ用途を考えれば3Gモデルをあえて出さない理由はない。

ソフトウェア&サービスの目玉は「iBooks 3.0」か?

バージョン3.0の登場が噂されるiBooks

ハードウェア方面でのスペックで注目を集めがちなiPad miniだが、スペシャルイベントを直前に盛り上がりつつあるのがソフトウェア方面の強化の話題だ。The Next Webが先週末に報じた「iBooks 3.0」がその中心で、これがiPad miniにおけるソフトウェア+サービスの中核になる可能性が指摘されている。この話は、もともとはフランスのBlogサイト「iGen.fr」が発見したもので、iTunes上に登録された「Largo Winch」という書籍コンテンツがiBooks 3.0以上のソフトウェア対応を要求しており、スペシャルイベントのタイミングでこのiBooks最新バージョンが発表されるのではないかとの推測だ。

Forbesによれば、Largo Winchはフランスで人気のグラフィックノベルであり、その映像がすでに公開されているという。そこでiBooks 3.0では、現行のiBooks 2.2に比べてよりこういったビジュアル要素を前面に押し出してくるのではないかとみられる。Good E-Readerもこの意見を支持しており、「コミックブック」といったビジュアル中心の書籍をより魅力的に見せるための工夫が行われると予測する。Apple Insiderではこのほか、Appleが重視する教育市場への何らかのコミットメントと、Apple TVへのiBooks導入を3.0へのバージョンアップを機に行ってくるのではないかとコメントしている

音楽や映像関連でiTunesの新しいサービスが発表される可能性もあるが、23日のスペシャルイベントではソフトウェア部分の紹介において、まずこのiBooks 3.0に焦点が当たるのではないかと考えられる。7.85インチというサイズは従来型のiPadに比べて可搬性に優れており、電子ブックリーダーとしての活用を考えるうえで重要なポジションを占めると推察できる。そして現在市販の電子ブックリーダーとの差別化を考えるならば、強力なプロセッサ機能を利用してよりリッチな表現を目指すのは自然だからだ。

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