東京工業大学(東工大)は10月9日、同大のスーパーコンピュータ「TSUBAME2.0」を用いて、東京都心部の10km四方のエリアに対し、実際の建造物のデータをもとに1m間隔の格子解像度で詳細な気流をシミュレーションすることに成功したことを発表した。

同成果は同大学術国際情報センター(GSIC)の青木尊之 教授と小野寺直幸 特任助教らの研究チームによるもので、TSUBAME2.0に搭載されているほぼすべてのGPU(4264台搭載中4032台)を用いることで実現したという。

計算方法としては大規模計算に適している格子ボルツマン法を用い、発達する乱流を計算するために広域的な平均操作を行わないラージエディ・シミュレーションモデルを導入し、1mの格子間隔で水平方向に10,240×10,080格子、鉛直方向に512格子を用い、計算領域を4,032に分割して4,032台のGPUで計算を行った。

シミュレーションのプログラムはGPUでの計算用にチューニングされたものを活用しており、4,032GPUで600TFlops(単精度計算)の実行性能を得たという。また、電力効率は1W当たり545GFlopsで、少ない電力(エネルギー)で目的の計算結果を得ることができたともしている。

今回のような1m間隔の格子を用いて広範囲の気流計算を行った例は世界でも報告例が無いとのことで、研究チームでは、今回の成果を活用することで、高層ビル背後の発達した渦によるビル風や幹線道路に沿って流れる「風の道」や台風の際の被害などが従来とは桁違いの精度で予測できるようになるほか、排ガス、事故やテロによる有毒ガスなどの汚染物質の拡散も詳細に予測できるようになることから、国民生活の安全・安心に直接的に貢献できると考えられるとコメントしている。

粒子を用いた港区周辺の気流計算を可視化したもの