これは、天の川銀河の小さな衛星銀河「大マゼラン雲」の中にあり、地球から約16万光年向こうに位置しているスーパーバブルの画像だ。大質量星を含む多くの新星は星団NGC1929内で形成されていて、この星団は星雲N44に組み込まれている。「星雲N44」の名前の由来は、マゼラン雲の中の44番目の星雲であるところからきている。

A Surprisingly Bright Superbubble

大質量星は強い放射線を発するため、高速で物質を放出し、勢いよく進化したのち、超新星として爆発することになる。その時に発生する風と超新星による衝撃波によって、周辺のガスに「ス-パーバブル」と呼ばれる大きな穴が開けられる。合成画像には、NASAのチャンドラX線望遠鏡がとらえた風と衝撃波によって生まれた高温領域(青)、そしてスピッツァー望遠鏡が赤外線で撮影した塵と高温領域より温度の低い領域(赤)が写っている。また、南米チリにあるマックスプランクESO望遠鏡で光学撮影した領域(黄色)は高温で、若い星の紫外線放射によって星雲内のガスが輝いている。

高エネルギー天文学が長年抱えている問題は、N44を含む大マゼラン雲内のスーパーバブルが、モデル予測値よりも多くのX線を放っているという点だ。このモデルでは、X線を放出する高温のガスは、大質量星や超新星の残骸からの風によって発生したと仮定している。しかし、チャンドラX線望遠鏡を使った過去の研究では、このモデルに含まれていないX線放射源がふたつあるとの報告があった。そのふたつのX線放射線源とは、穴の壁に吹き付ける超新星の衝撃波と、穴の壁から蒸発する高温物質である。また、チャンドラの観測によれば、穴の中で水素とヘリウムより重い要素が増えていることの証拠は得られていないため、この仮定がX線放射に関する第三の説明となる可能性は消える。チャンドラの性能をフル活用して長期観測を行うことによってのみ、X線放射源の違いを区別することが可能になるだろう。