撮ったその場ですぐにプリントが楽しめるインスタントカメラ、「チェキ」。かつて若い女性を中心に一大ブームとなり、以来、パーティーや結婚式で今も定番アイテムとなっている。そのチェキのニューモデル発表会が、9月12日、都内にて行われた。折しも、カメラ業界はカメラメーカー各社によるデジタルカメラの新製品発表ラッシュである。さらに、スマートフォンのカメラも性能が向上する中、あえてアナログのインスタントカメラの新製品を発売する富士フイルムの意図と戦略をお伝えしたい。
「写真は、かつて晴れの日の舞台のものだった。でも、今はデジカメやスマホの普及で、写真を撮ることが日常の一部になっている」、富士フイルム イメージング事業部長 山元正人氏は、会の挨拶でこう語った。山元氏は「写真が身近になった今こそ、画面の中のデータではなく、手に取れるプリントの価値が見直されてきている」と言う。
その印象は、富士フイルムが行った東日本大震災被災地ボランティア事業で、よりいっそう明確なものとなったという。「津波で流され、汚れてしまったたくさんの写真やアルバムを救済して持ち主に戻す、というボランティアでした。写真には、写っている人々の人生が凝縮されている。これらを形として残すことの大切さを再認識したのです」、山元氏はそのように語った。
また、同社のマーケティングによれば、若い世代はデジタルカメラやスマホに慣れ親しんでいる中で、撮ってすぐ写真が出てくるインスタントカメラを新鮮、新しいと認識しているという。撮ったその場で写真を見せたり、交換したり、余白にメッセージを書き合ったりするリアルコミュニケーションのツールとして機能しているというのだ。カードサイズのフィルムを使用するチェキはコレクションもしやすく持ち運びやすいのもポイントだという。
なお、チェキは近年、韓国、中国などアジア市場大きく売り上げを伸ばしているという。2011年の販売成長率は140%で、これはスマホの伸び率とほぼ同等とのこと。その他の海外市場でも販売されており、「世界各地チェキのないところはない」(山元氏)という。今年度は全世界で160万台を販売目標に据えている。