シャープは8月23日、IH炊飯器の新製品「ヘルシオ炊飯器」の記者発表会を開催した。製品ラインナップは、上位機種の「KS-PX10A」と下位モデルの「KS-GX10A」の2機種(いずれも0.5~5.5合炊き)。両機種ともに発売は9月20日で、価格はオープン。推定市場価格はKS-PX10Aが9万円前後、KS-GX10が7万円前後となっている。

ヘルシオ炊飯器のラインナップ。プレミアムモデルのKS-PX10A(右)はレッドのみ、スタンダードモデルのKS-GX10A(中央、左)は、レッド、ホワイトの2色展開

シャープではこれまで、1万円台の低価格を中心にIH炊飯器を販売していたが、今回発表された新製品は、5万円以上の価格帯のいわゆる"高級炊飯器"。盛り上がりを見せる高級炊飯器市場に乗り込んだ形だ。釜の設計・構造や高火力機能に力を注ぐ他メーカーの高級炊飯器に対して、シャープは史上初の"洗米できる炊飯器"として独自路線を打ち出したのが特徴。

洗米機能の仕組みは、本体内側に「かいてんユニット」を備え、釜内を撹拌して米研ぎをするというもの。このユニットは、シャープが他の白物家電でも取り入れている「ネイチャーテクノロジー」と呼ばれる、自然界の生物からインスパイアした機構・設計技術を採用。今回は、水の抵抗を低減する構造を持つとされるペンギンの後退翼と、整然とした螺旋をつくり、衝突を抑える魚群の習性に着目。部品の形状を模し、水流を再現することで、米の飛散と衝突を抑え、洗米時における栄養素の流出を防ぐことにこだわったとしている。

他メーカーの高級炊飯器と比べると、横幅と奥行きを抑え、高さのあるやや縦長の本体。表面がフラットな構造で手入れがしやすい

プレミアムモデルの液晶、操作部

シャープによると、洗米というのは本来、表面の裸糠を取り除くのがいちばんの目的だという。しかし、手洗いすると糠(ぬか)と同時に別の栄養素まで流出してしまう可能性が高い。特に、サブアリューロン層と呼ばれる部分には、オリゴ糖、アミノ酸などの旨み成分、ビタミンB1、ナイアシン、マグネシウムなどの栄養素、酵素といったお米のおいしさや栄養に関わる要素が豊富に含まれているという。これを新製品の洗米機能で洗うことで、手洗いに比べ多くの栄養素を残せる。同社が委託した研究機関による調査では、ビタミンB1は約22%、ナイアシンは約17%、マグネシウムは約23%、それぞれ残存量がアップ。

上記の箇所について、掲載当初の内容に一部事実とは異なる部分がございましたので削除しました。

かいてんユニットは、洗米時だけでなく、炊飯時にも活用される。吸水時に水流で撹拌することにより、米粒が重なり合うことを防ぎ、約10%吸水力が向上。加熱時は、撹拌により温度ムラをなくし、60度前後の温度帯を維持。60度というのは、糖化酵素と呼ばれる米の甘みを引き出す成分が最も活性化される温度だという。シャープでは、かいてんユニットなしの場合に比べて約14~19%程度還元糖量をアップさせることに成功したと説明している。

さらにその後の沸騰工程では、かいてんユニットの翼部分が収納された状態でユニットが回転。これにより、沸騰時に発生する"おねば"の泡を切り、高火力を持続し、旨み成分とも言われるおねばを内側に閉じ込めておく効果も発揮する。同社の比較によると、炊き上がり後の米粒の表面のおねば層は、ユニットの回転なしの場合に比べて約2倍の厚さがあるとのことだ。

内部構造。内蓋部分に「かいてんユニット」を装備しているのが特徴。ユニットは簡単に取り外しでき、水洗いできる

かいてんユニットの実演

内釜の下側に着色した米を置き、上部は通常の米を入れて炊飯した結果の比較。写真上はかいてんユニットでの撹拌がない状態。写真下はかいてんユニットにより、米粒がしっかり混ざっているのが分かる

動画
かいてんユニットで撹拌する様子を撮影。30秒~1分程度の間に150回転して洗米するという(再生時間約21秒、ファイルサイズ7.36MB)

記者発表会には、本製品の開発に協力した、新潟大学農学部応用生物化学学科教授で農学博士の大坪研一氏が出席。「ヘルシオ炊飯器は、撹拌しながら炊飯するというのが大きな特徴。日本人にとってご飯で大事なのは、味と食感をいかにして引き出すか。かまど炊きのようなご飯を家庭で簡単に再現できる、予想以上に素晴らしい炊飯器が完成した」とコメントし、お米の第一人者として同製品に太鼓判を押した。

新製品の開発にあたり、炊飯後の糖質検査などの監修で協力した、新潟大学農学部の大坪研一教授

「"健康"と"おいしさ"を両立する調理機器ブランド『ヘルシオ』の一製品として新たに炊飯器を発売する」と、事業戦略と新製品のコンセプトを説明した、シャープ 健康・環境システム事業本部調理システム事業部長の藤井氏

2モデルの主な仕様の違いは、液晶画面と操作パネルで、KS-PX10Aが4.3型ホワイトバックライト液晶で静電タッチ式、KS-GX10Aが3.7型高反射型液晶でタクト式。カラーはKS-PX10Aがレッドのみ、KS-GX10はホワイトモデルも用意する。サイズはW26.3×D34.7×H23cmだ。

炊飯メニュー数はそれぞれ37種類、31種類。白米、無洗米、玄米、発芽玄米、分づき米の5種類のコースがあり、標準メニューの"ごはん"のほか、浸し時間を10分程度長くする"極上"、約27~37分程度で高速炊飯できる"おいそぎ"、"炊きこみ"、"おかゆ"、"極美がゆ"、"すしめし"、消費電力を抑えて炊飯する"エコ炊飯"が共通で、上位機種では"カレー用"、"少量"、"おこげ"メニューが追加されている。

また、調理メニューには、かいてんユニットが自動で撹拌して調理する"まぜ技クッキング"メニューをKS-PX10Aが20メニュー、KS-GX10が17メニューを搭載。それぞれ合計42、26の調理メニューが用意されている。

発表会で披露された調理例(クリックで拡大とスライドショー)

炊きあがったばかりのごはん。内釜はハードガラス鉄釜を採用している

試食用に提供された、白米とおかゆ。白米はふんわりとした食感で、白米もおかゆもお米の味がしっかりと感じられた

かいてんユニットのあり/なしで作った肉じゃがの比較。写真左のかいてんユニットを使用したほうがしっかり具材が混ざり合って煮汁もしっかり浸み込んでいる様子

その他の調理メニューで作ったサンプル