シンプルになったWindows 8のプリンタードライバー

コンピューターが進化することで不要になると言われていた周辺機器がある。その筆頭に数えられていたのがプリンターだが、2012年現在も多くのオフィスや家庭で活躍し、欠かせないデバイスの一つに数えられているのが現状だ。ペーパーレスという言葉も生まれ、一部の大手上場企業ではペーパーレス化を推し進めているものの、社会全体がプリンターを不要と感じるようになるのは、まだまだ先の話。

そのためWindows 8リリース後も、プリンターが周辺機器における重要な位置を占め、使い続けられることは自明の理である。だが、Windows 8ドライバーモデルの変更により、プリンターに対するアプローチが変更されるのはご存じだろうか。このWindows 8とプリンターの関係について述べているのが、プリンティングチームのリードプログラムマネージャーであるAdrian Lannin(エイドリアン・ランニン)氏。

Microsoftでは、最初のWindows 1.0からWindows 9x系と称されるWindows Meまで使用していたプリンタードライバーの構造をバージョン1/バージョン2と称し、Windows 2000からWindows 7まで採用してきた同構造をバージョン3と称してきた。そして、Windows 8では同構造を刷新すると同時に「4」へバージョンアップ。従来よりもファイル数やサイズを軽減し、Metroアプリケーション経由での印刷を実現したと言う。

そもそもプリンタードライバーには、作成した内容をプリンターが対応する形式に変換してから送信する仕組みが備わっている。古い話になってしまうが、この変換処理をプリンター側で行う高価なプリンターに対し、安価な印刷システムを提供するため、同社はWPS(Windows Printing System)という規格を提唱した。このWPS規格に対応したプリンターは、コンピューターのハードウェアリソースや導入済みフォントを利用し、プリンター側の負担が減るため、安価なプリンターが世に出回ったことがある。

しかし、WPSはその名のとおりWindows OS専用の規格であるため、ほかのOS用のデバイスドライバーが提供されることはなかった。また、Windows OSのバージョンアップにも追従せず、筆者もWPS対応プリンターを使っていたが、Windows OSを更新するタイミングでWPS対応プリンターを廃棄した記憶がある。これはWindows OSが過渡期にあった時代の失敗例だが、V4では多くのプリンターで共用できるプリンタークラスドライバーの枠組みを作成し、オーバーラップする部分を排除することに成功した。

図07はWindows Vista/Windows 7/Windows 8でデバイスドライバーを導入する際に必要なディスク容量をグラフ化したものだが、Windows Vistaが768MB(メガバイト)に対し、Windows 7では446MB、Windows 8では184MBまで軽減している。これは、数百にも及ぶプリンターを検証すると同時に、年を重ねることでニーズが減るプリンターのサポート体制を考慮した結果だ(図08)。

図07 各Windows OSにおけるデバイスドライバーが要したディスク容量(公式サイトより)

図08 同社のプリンターラボで検証されたプリンターたち(公式サイトより)

前述のとおりWindows 8では、古いプリンタードライバーも併用できるため、デスクトップアプリケーションからの印刷で戸惑う場面は少ない。その一方でMetroアプリケーションは独自のサンドボックス上で実行されるため、抜本的な改良とこれまで述べてきた改良が必要だったのだろう。なお、Metroアプリケーションから印刷する際は、プリンター固有の機能を呼び出すUIも改良される(図09)。

図09 Metroアプリケーションから印刷する際のUIも変更される(公式サイトより)

ブログ記事では、このほかにもプリンタードライバーのレンダリング構造に関する改善や、Windows RTからの印刷環境に関しても言及されているので、興味のある方はご覧いただきたい。いずれにせよ、Windows 8以降はプリンターとの接続やデバイスドライバーの管理が容易になり、よりシームレスな印刷環境が提供されそうだ。

阿久津良和(Cactus)