楽天が7月2日に都内で開催した記者会見では、電子ブックリーダー「Kobo Touch」の発売と同社子会社Koboの日本における電子書籍事業への参入について発表された。7月19日に「Kobo Touch」が発売され、同日にコンテンツ配信がスタートする。ここでは、会見の内容を中心にお伝えしよう。

楽天が発売する「Kobo Touch」はポケットに収まるサイズだ

楽天が昨年11月に買収したカナダのKobo社は、世界190カ国、900万人が利用する電子書籍サービスを運営しており、カナダ、米国、英国、フランス、ドイツ、オランダなどグローバルに事業を展開している。このKoboのサービスを今回、日本国内で開始するというわけだ。

記者発表会に登壇した楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長は、今回の事業展開について「コンテンツ」「サービス」「デバイス」の3つの側面からアピールした。

Koboを通じて日本の文化・経済発展に貢献したいと述べる三木谷氏

「Kobo Touch」というデバイスを知る

まず「デバイス」だが、今回発売となる「Kobo Touch」は縦165mm、横114mm、厚さ10mmで重さは185g。カラーバリエーションはブラック、ブルー、ライラック、シルバーの4色で、背面はキルティング風のデザインとなっている。触り心地などは後半でレビューする。

表から見るとこんな感じ

背面は4色で展開する

発売日は7月19日で、価格は7,980円。本日よりKobo特設サイトにて予約受付を開始しており、販売は楽天市場や楽天ブックス、家電量販店を通じて行う。また大手書店では実機に触れられるタッチ&トライスペースを設けるという。

バッテリー持続時間については1回の充電で1カ月利用可能とのことで、一冊あたりのファイルサイズを1MBと考えた場合、最大約1,000冊を詰めて持ち運ぶことができる。また、利用者のニーズに合わせて文字サイズを17段階に拡大することも可能で、フォントはモリサワフォントなど11種類を搭載している。さらに、購入したコンテンツはKobo Touchだけでなく、PCやタブレット、スマートフォンでも読むことができる。

これまで電子書籍端末は一様に苦戦を強いられてきた。Koboは幅広い層に受け入れられる端末となるだろうか

「Kobo Touch」のコンテンツを知る

続いて「コンテンツ」だが、発売と同時に提供する日本語コンテンツは約3万冊。うち1万冊が無料コンテンツとなる。ジャンルは小説、エッセイ、ビジネス書、コミックなど多岐にわたり、すでに国内の主要な出版社のほとんどと合意しているという。

また、将来的にはラインナップを150万冊まで増やすことを目標とし、Kobo専用の独自先行コンテンツも提供していきたいとのことだ。コンテンツフォーマットには「EPUB3.0」を採用する。

配信される作品について具体的なタイトルの発表はなかった

「Kobo Touch」ならではのサービスと三木谷氏の意気込み

最後に「サービス」について。電子書籍コンテンツの購入は「kobo イーブックストア」で行い、楽天会員IDを使用して購入すると、金額の1%の楽天スーパーポイントが付与される。また、Koboには自分が読んだ本の履歴や読書量、読書する時間帯などが一目でわかるソーシャルリーディング機能「Reading Life」が搭載されるほか、これらの情報をFacebookを通じて友人とシェアすることもできるという。

三木谷氏は発表会で、日本人の読書習慣が薄れていること、特に若者世代の読書離れについて懸念を表明し「わたし自身、人生の中で色々な本との出会いがあり、自分の人格が形成されたと感じている。読書量の減少は日本の国家的な危機ではないか」とコメント。「Koboを通じて読書革命を起こしたい」と意気込みを語った。

「端末自体で大きな利益を上げるのではなく、まずは市場の拡大を狙う」という三木谷氏。とはいえ7,980円という価格は「損失が出る金額ではない」という

さらに、日本のコンテンツについて「残念ながら日本の魅力的なコンテンツのほとんどは国内に収められている。韓国では国家と民間が一体となって様々な産業を発展させようという動きがある。日本にはさらに幅広いコンテンツがあるが、物理的な制約でなかなか海外にリーチできなかった」と現状を分析し、「海外でも同じ問題があり、それを変えたのが電子書籍事業だった。デジタルがアナログを駆逐するのではという議論があったが、実際はより多くの人が本を読むようになりマーケットが成長した」と、電子書籍事業を通じて読書文化をもり立てていきたいと述べた。