山頂に到達したものの……

標高1550m付近。突然、樹林帯がきれて、視界が開けた。目の前には、白砂の広大な斜面が広がっている。ここが雁ヶ原への最後の登りだ。雁ヶ原からは八ヶ岳や南アルプスを遠望できる、とコースガイドに載っていた。期待に胸を膨らませながら、砂地の斜面を登って行く。……が、稜線に出ると、周囲は白いガスに覆われ、まったく展望がない。

白砂の斜面と巨大な奇岩によって形成された雁ヶ原の独特な景観。「こんな景色、初めて見ますよ !」と編集Hのテンションも上がる

日向山の山頂を目指し、最後の斜面を懸命に登る。あともうひと踏ん張りだ !

とりあえず地形図を取り出し、PRX-7000Tの右上のボタンを押す。モード針が「COMP」に移動したのち、秒針だけが回転をはじめ、北の方角を指し示した。秒針の方向と地形図の北方向を合わせて、あらためて周囲をぐるりと見渡す。晴れていれば、南西に甲斐駒ヶ岳、北東に八ヶ岳が見えるはず。だが、この日はどれだけ目を凝らしても、山々の姿は真っ白なベールに隠されたまま。「せっかくここまで登ってきたんだから、景色見たかったなぁ……」と編集Hも残念そうだ。

PRX-7000Tの方位計測モードで方角を確認し、周囲の地形と地図を見比べようとするものの、山頂付近は雲に包まれ、周りの景色はほとんど見えなかった…

晴れていれば、こんな素晴らしい景色が見えていたのに !(写真提供・北杜市役所)

方位計測と地図の使い方(音声が流れますのでご注意ください)

次に高度計測モードに切り替える。表示された高度は1630m。地図上の実際の標高(1659m)とは約30mの誤差がある。牛山氏によれば、「登山口から山頂まで標高差540mを一度も補正しないで登ってきたため、誤差が出てしまった」とのこと。正確な計測をするには、やはり補正が重要なのだろう。ということで、山頂の標柱からすこし下ったところにある三角点で、あらためて高度計を1660mに補正し、ゆるやかな登山道を登山口まで一気に下っていった。

日向山山頂の牛山氏(写真左)と編集H(写真右)。苦労して登った分、登頂の喜びもひとしおだ

山頂にて高度を計測すると、「1630m」を指し示した

下りはじめる前、三角点で高度を補正する

アナログ表現でできる機能を厳選

「多機能」と「アナログ」は果たして共存できるのか ? ―― 今回の取材前、筆者はこんな疑問を抱いていた。実際、PRX-7000Tは、PROTREKシリーズの従来のデジタルモデルと比べて、搭載された機能の数は減っている。だが、牛山氏は次のように語る。

牛山氏「デジタルの場合、表現方法が自由になるぶん、さまざまな機能を盛り込みがちになります。しかし、このPRX-7000Tでは、アナログ表現でできる機能を厳選しました。結果として、シンプルで使いやすい多機能時計を完成させることができたと自負しています」

PRX-7000Tはフェイスデザインがものすごくカッコイイ。一見すると"多機能なアウトドアウオッチ"とは思えない。4本の針が独立して動く"SmartAccess"を採用し、そのメカ的な動きにも魅了される

確かにPRX-7000Tを山で使用してみて、便利さを実感した。頻繁に使用する高度計と方位計は本体右側の専用ボタンをワンプッシュすれば計測できるし、高度補正もりゅうずを回すだけなので、操作性が非常にいい。しかも見た目は、アナログ時計としての上質さも備えているので、アウトドアシーンだけではなく、普段使いやビジネスシーンでも違和感なく使いこなせるだろう。スーツスタイルやビジネスカジュアルにとても似合うのはもちろん、ドレッシーなシーンでも腕もとが映える。

「多機能時計は欲しいけど、腕時計はやっぱりアナログがいい !」。そんなこだわりを持ち、これまでPROTREKシリーズの購入に二の足を踏んでいた人も多いのではないだろうか。しかし、これからは「多機能」と「アナログ」の間で悩む必要はない。アウトドア好きで、しかもアナログ主義のユーザーにとって、PRX-7000Tが待望の一本であることは間違いない。