物理環境と仮想環境のバックアップ作業を統合

Backup Execは、VMware仮想マシンのイメージバックアップのためのAPIである「vStorage API for Data Protection(VADP)」に対応している。バックアップの環境として「Backup Execメディアサーバ」を用意することで、このメディアサーバ側に仮想マシンをマウントし、自動的にバックアップを実行することができる。このときに使われるリソースはメディアサーバのものになるので、仮想サーバ側に負荷をかけずに、定期的なバックアップ作業を実施できるというわけだ。

また、Backup Execでは物理環境と仮想環境を共通のコンソールから管理することができる。このコンソールでは、どの仮想サーバが、どの物理サーバで動作しているのかといった状況も一目で分かるようになっている。さらに、サーバ環境だけでなく、社内のクライアントPCのバックアップなどにもBackup Execを活用している場合、同じユーザーインタフェースから一括で管理することが可能だ。

Backup Execでは仮想/物理を問わず、サーバを管理できる

この管理コンソールには、Office 2010やWindows 8などで採用されている「Fluent UI(リボンUI)」風のGUIが採用されており、必要な情報や、次に行う操作が分かりやすく表示されるようになっている。物理サーバと仮想サーバの混在環境や、バックアップを取るべき対象が増えた場合などでも、このコンソールが管理作業の煩雑さを吸収してくれるという。新たなバックアップ対象が出てきた場合には、環境に合わせてバックアップジョブの初期プロパティが自動的に設定されるなど、作業の省力化をサポートするための機能も充実している。

また管理の効率化という点では、VMware環境向けのプラグインである「Backup Exec Management Plug-in for VMware」の提供も行っている。これは、vSphere Clientにインストールすることで、管理コンソールにBackup Execによるバックアップステータスを一覧表示するタブを追加できるものだ。これによって、VMware環境の管理とバックアップ作業のモニタリングを一元化することが可能になるという。

仮想サーバをより細かい粒度でリストア

Backup Execを活用することで、仮想環境においても物理環境のバックアップと同様の「細かさ」でリストアを行うことが可能になる。

Backup Execの「V-ray」と呼ばれる機能は、仮想サーバのイメージ内部を解析し、サーバ丸ごとだけではなく、より詳細な単位でのリストアを可能にするものだ。ファイル単位、フォルダ単位はもちろんのこと、最新のバージョンでは、Microsoft Exchange Server、Microsoft SQL Server、Active Directoryに関するリストアも可能になっている。

これにより「個々のメールボックス」「特定のEメール」「プライベートフォルダ」「パブリックフォルダ」「カレンダーアイテム」「タスク」「ユーザーアカウントやその属性」「データベース」といった単位でのリストアが実現できる。

「仮想環境のバックアップにおいては、仮想マシン丸ごとをバックアップした上で、その中に含まれる個々のアイテムをリストアできる点が重要になります。他社のバックアップソリューションでは、そのために別途、アプリケーションごとのエージェントを導入する必要があるケースが多いのですが、Backup Execでは『アプリケーション&データベースエージェント』と呼ばれるオプションをゲストOSにインストールするだけで、それが実現できます」(浅野氏)

物理と仮想を柔軟に使い分けて効率的な業務継続を実現

これらに加え、Backup Execでは物理環境と仮想環境が混在する環境でのバックアップ/リカバリを、より柔軟に行うための機能が搭載されているという。それが「仮想への変換(P2V)」機能と、「仮想へのバックアップ(B2V)」機能だ。

これらはいずれも、物理環境でシステムファイルを含むバックアップを設定している場合に、その内容を仮想マシンの形に変換することができるというものである。

P2Vでは、定期的なバックアップスケジュールの中で取得した物理サーバ上のデータを、仮想サーバに変換して保存しておく。これにより、仮想環境を物理サーバのスタンバイ(予備)として使うことができるようになる。万が一、物理サーバに障害が発生し、予備のマシンがない場合でも、バックアップされた仮想サーバを使って仮想環境上でシステムを迅速に再稼働できるというわけだ。

一方のB2Vは、一度取得したバックアップデータを、必要に応じて仮想マシンに変換するというものになる。仮想環境を導入しているのであれば、これらの機能を利用して、より柔軟にバックアップとリストアを行い、いざというときの業務継続を効率的に実現できるはずだ。

物理環境のバックアップデータを変換して仮想マシンに戻すといったことも可能

*   *  *

ここまで見てきたように、サーバ仮想化を導入している場合には、それに応じたより安全で、効率的なバックアップの手法が存在することが分かっていただけたと思う。

数年前であれば、仮想化はまだ「未検証」の技術であり、重要な基幹業務システムをその上で動かそうという取り組みは少なかったかもしれない。しかし、その後の技術的な成熟も手伝い、現在では多様かつ重要なアプリケーションが、仮想環境上で当たり前のように稼働しているといった状況が生まれつつある。

ビジネスを動かすために必要なシステム。そこで生み出され、蓄積される重要な資産としてのデータを確実に守るためにも、仮想環境ならではのバックアップ手法を活用することを、改めて検討する時機ではないだろうか。

シマンテック 関連資料

シマンテック
プロダクトマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャ
浅野百絵果


シマンテックにおいて、小規模~中規模向けバックアップを担当。中堅、中小企業にとって本当に必要な機能を模索している。

主な担当製品は、「Symantec Backup Exec」、「Symantec System Recovery」。日本での製品ポジショニングの決定、市場に対するマーケティング活動などを行っている。

最新ITリスク対策 注目記事一覧