「BiND for WebLiFE*」シリーズなどのWeb制作ソフトウェアを開発してきたデジタルステージが来る7月27日、満を持して5年ぶりに新作Web作成ソフト「LiVE for WebLiFE*」を発売する。同ソフトウェアは、「従来のWebサイトとは違う新しいもうひとつのWeb表現として、見る者の心を動かす"プレゼンテーションするWebサイト"を提案していきます」と宣言する新しい概念を打ち立てる意欲作だ。今回、デジタルステージ代表取締役社長平野友康氏になぜこのソフトウェアを開発したのか、そして、平野氏の提案する新しいWebサイトとは何かについて話を伺った。

これからのWebトレンドは「プレゼンテーション型Webサイト」

――LiVE for WebLiFE*を開発することになった経緯を教えてください。

デジタルステージ代表取締役社長平野友康氏。同社の代表作のWeb制作ソフト「BiND for WebLiFE*」開発プロデューサーを行いながら、UstreamでWeb制作者を支援するフリースクール「ウェブコンポーザー学校」の配信、メディアへの出演や執筆活動などを積極的に行う。著書に「ソーシャルメディアの夜明け」

平野:「僕は現在のWebサイトについては"書籍型Webサイト"と"プレゼンテーション型Webサイト"と大きく分けて二つに分けて説明できるだろうと考えています。書籍型のWebサイトというのは、複数のページで構成されるテキストと画像を中心としたWebサイトです。いわゆるニュースサイトやブログなどを含め一般によく見られるものです。BiND for WebLiFE*を開発した5年前は、SEO全盛の時代で、いかに検索で上位に表示されるテキスト中心の書籍型サイトを作るかが求められていました。見た目やデザインなども含めて一般の方には理解しにくいプロフェッショナルの世界でした。そんな中でプロ・アマを問わず、すばらしいサイトが簡単な操作で作れたほうがよいだろうということで生まれたのがBiNDでした。」

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Webの歴史は目まぐるしく変化してきた。メモ帳にHTMLタグを打ち込みながらブラウザで確認し、FTPでアップロードする時代から、専用ソフトを使ってサイト構造を意識しながら作成する時代、CMSやブログを活用しSEO対策を高めていく時代へと流れてきた。ここで平野氏が言う「書籍型Webサイト」というのは、"情報"を表示することのみに終始するWebサイトと言えるだろう。平野氏はこれを、批判的な意味で用いているのではない。"書籍"はいろいろな知識や情報を与えてくれるし、そこには価値がある。それとは別の目的でのWeb活用が広がりつつあることを指摘している。

――もう一つの「プレゼンテーション型Webサイト」というのはどういうものでしょうか?

平野:「もう一つの"プレゼンテーション型Webサイト"は、FlashやHTML5、CSS3やjQueryなどの最新のWebテクノロジーを使った、ビジュアルと音楽を前面に出したフルスクリーン型のWebサイトと言えるかも知れません。BiNDを発表して5年経ち、時代が大きく変わり、今はこのプレゼンテーション型サイトがWeb業界で急激に注目されはじめています。プレゼンテーション型Webサイトというのは、特に広告やブランディングに非常に多用されていて、今後Webサイトの半分以上はこの世界に向かっていくのではないかと感じています。これは、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアの発展とも無関係ではありません。

例えば僕が最近、Webサイトを見るときはFacebookやTwitterなどのリンクから飛ぶことが多いのですが、"これ素敵だな"と惹きつけられて思わず商品を買ってしまったり、お店に行きたくなったり、「いいね」を押したりするのは、これらは実は、Webサイトを通してプレゼンを受けていて、それによって心が動かされているんだということに気が付いたんです。

ネット時代のプレゼンテーションというものは、誰かが壇上に立ってスピーチするのを椅子に座って見るのではなく、Webの中でなんとなくFacebook やTwitterから飛ばされて、クリックしながら進んでいく形へと変わってきているんじゃないかと。そう考えると現状をすごくすっきりと整理できたわけです。」

平野:「また、働き方や生活スタイルの変化、"ギフト経済"、"クラウドファンディング"などの言葉に代表されるような、別方向からのニーズも高まってきています。プロジェクトをやりたいときに出資者を募る、といった企業主体ではなく個人主体の活動への変化が増えはじめているという言い方もできるでしょうね。

これらの活動は、今は小さく見えるかも知れませんが、時の経過とともにどんどん大きくなり、トレンドになっていくんだと思います。もちろん、前提としてソーシャルメディアやソーシャルネットワークの普及が挙げられます。日本では特に、3.11という大きな災害が、人と人との関係を新たに見直す契機になったと考えています。未曾有の大惨事の中、ボランティア活動などを通して個人が積極的に自己表現をするようになってきたのです。

個人で活動する人が著しく増えた。僕らはプロ・アマを問わず、"こういうことをやりたい"という人たちのプロジェクトを「じぶんプロジェクト」と命名しています。プレゼンテーション型Webサイトを必要とする人たちは、まさに「じぶんプロジェクト」を抱えている人たちです。」

LiVEに収録されるテンプレート例

縦のスクロールと横のスクロールが設定できる

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平野氏は、TwitterやFacebookという隆盛を極めるソーシャルネットワークを良く分析している。自身のTwitterでのフォロワーは2万6,000を超え、坂本龍一氏のピアノソロツアーをUstreamで世界に配信し、約20万人以上に視聴させたり、Ustreamを利用してWeb制作者を支援するフリースクール「ウェブコンポーザー学校」を立ち上げるなど先端のWebを知り尽くした人物でもある。

著書の「ソーシャルメディアの夜明け」では、TwitterやFacebookを20年に一度の変革期と捉えており、個人が持つ良い企画やプロジェクトを小口の支援者で集める"マイクロパトロン"や"ギフト経済"などのキーワードも、時代の流れを敏感に感じ取って、"Web制作"のあり方を考えている。従来のWebサイトは情報の一方通行が前提だったが、SNSやコミュニケーションサイトは、それらの流れを双方向のものへと変えたことはご存じの通りだろう。