WS2012上で活躍する「Microsoft Online Backup Service」
SkyDriveのパワーアップにより、盛り上がりを見せているオンラインストレージ。先週のレポートでもご報告したように、バルクHDD(ハードディスクドライブ)のギガバイト単価をちょっと超える程度の価格設定がなされるほど、安価になりつつある。もちろんストレージ単価の低下もさることながら、2009年頃から世界各地で稼働しているMicrosoft DataCenterの存在も大きいだろう。
同データセンターは、前述のSkyDriveだけでなくWindows Live各サービスはもちろん、Office 365やWindows Azure Platformといったクラウドサービスのオンラインストレージとして活用されている。だが、ますます増える需要に対応するため、今年2月には以前から運用していたダブリンの同データセンターを約10,405平方メートルもの敷地を拡張し、ストレージ用機材を追加設置した。
Microsoftが、この広大なオンラインストレージを活用する方法として開発を進めているのが、「Microsoft Online Backup Service」である。二年前の2010年頃から求人情報経由でWindows Azureベースのサービスを開発しているという噂が漏れ聞こえていたが、同サービスの進捗(しんちょく)状況が明確になることで、さまざまなことが明らかになってきた。開発中のサーバー向けOS「Windows Server 2012」向け機能として予定されている同サービスは、Microsoftが用意したオンラインストレージをバックアップ領域とし、従来のWindowsバックアップ機能と同じ感覚で使用できるというものである(図05)。
図05 Windows Server 2012では、Microsoft Online Backup Serviceが組み込まれ、オンラインストレージを用いてファイルやフォルダーのバックアップが可能になる予定だ(画面は"8" Beta版) |
現在のベータ版では、従来の標準バックアップツールを拡張するスタイルではなく、Microsoft Online Backup Service Agentをインストールして使用する仕組み。将来的にどのような形式になるか不明だが、現時点ではベータテスター向けに配布されたアカウントを使用して、ローカルストレージの内容を特定のサーバーにデータ転送している。ただし、システム状態のバックアップは作成できず、特定のファイルおよびフォルダーが対象。
つまり、VSS(ボリュームシャドウコピーサービス)を用いたNASやファイルサーバーがオンラインストレージに置き換わるというものだ。もちろんHTTP over SSL/TLSを用いるなどセキュリティ面に配慮しているが、気になるのはストレージ容量である。最終的な容量は決まっていないものの、ベータテスト開始時は10Gバイトが割り当てられていた。そしてテスターに送られた電子メールで、使用可能容量が100Gバイトに拡大した。
本来、Windows Serverシリーズでバックアップを行うには、System Center Data Protection Managerなど専用の製品を運用する必要があるためハードルが高い。その点、本サービスを用いることでデータ保護は必須ながらも大規模なバックアップシステムの運用は不要というユーザー層のニーズを埋めることができるだろう。
その一方で気になるのがWindows 8への反映だ。前述の2010年時点では、Windows 8のクライアントバックアップ機能と連携すると説明されていただけに、同様のサービスが提供されるのだろうか。少なくともWindows 8 Consumer Previewの時点では、バックアップ機能は用意されているが内容はWindows 7と同等。ただし、名称が「バックアップと復元」から「Windows 7のファイルの回復」に変更されている(図06)。
"Windows 8のファイルの回復"になっていないのが単なるミスなのか、Microsoft Online Backup Serviceに似たシステムが搭載されるのか、現時点では計り知ることは難しい。まもなく登場する「Windows 8 Release Preview」の存在が、答えを出してくれるだろう。
阿久津良和(Cactus)