コンパクトなアタッチメントを取り付けることで、既存のケータイが3D対応になる

富士通研究所は4月26日、既存の携帯電話やスマートフォンのカメラを3D対応にするアタッチメントとクラウド技術を開発したと発表した。まず、ニフティが運営する「デイリーポータルZ」上で実証実験を行い、今後商品化などを検討していく。

今回の技術は、2つのレンズを持つ小型で安価なアタッチメントを携帯電話やスマートフォンのカメラに取り付けて静止画や動画を撮影し、それを専用サーバーにアップロードすることで3D動画像に変換、ダウンロードできるというもの。3D変換技術を端末側ではなくクラウド側に実装した点が新しい。映画館では3Dコンテンツが増え、テレビも3D対応が進んでいる。スマートフォンでも裸眼3D対応のディスプレイを備えたものも登場しており、ユーザー自身が3Dを撮影する機会は多くはない。2つのレンズ・撮像素子を持つ3D対応カメラや、1つのレンズで3Dを生成する機能を持ったカメラが提供されており、スマートフォンでも2つのレンズを持つ3D対応機種が登場している。しかし、3D撮影に対応したスマートフォンは、機種が限られている。

富士通では、2011年5月にドコモ向け携帯電話「docomo PRIME series F-09C」を発表。同端末で、2枚の写真を撮ることで3D合成する技術を投入した。さらに、3D対応PCや3D動画サイト「FMV 3D park」を運営するなど、3D対応を進めている。しかし、撮影に専用機器が必要、撮影した2つの映像の合成でずれが生じて見づらい、見やすい3D映像に変換するには負荷が高いといった課題を抱えている。

3Dの視聴環境が増え、富士通でも3Dの取り組みを続けてきた

従来の3D撮影においてはさまざまな課題があった

この問題の解決策として、今回の2つのレンズを持つ小型のアタッチメントを開発。小型かつ安価なレンズを既存の携帯電話やスマートフォンに取り付けることで2つの動画像を撮影できるようにした。

開発したアタッチメントは、精度は犠牲にしつつ、小型で安価に仕上げた

3D映像は、人間の右目と左目にある視差を利用することで立体的に見せる技術で、同じ映像に対して右目用と左目用でずらして撮影し、合成することで3D化を実現している。

今回発表したアタッチメントは、携帯電話などに装着することで、そのずれた動画像が撮影できるようになる。アタッチメントは単純な構造で、レンズの精度も高くない。そのため、撮影した映像にゆがみが生じてしまい、3Dに合成するには補正が必要となる。そこでこの補正と合成をクラウド側で行う方法を採用。端末側のコストをかけずに3D合成を可能にした。

実際に撮影しているところ。画面を2つに分割しており、そのまま撮影すると、左右で少しずつずれた映像が記録される。このため、撮影される動画像の解像度はおおむね1/4程度になるそうだ

4枚のミラーを使ったアタッチメントだと、撮影した画像にゆがみが生じる。これをクラウド側で補正して合成する。左右の映像で同じ点を見つけ、ゆがみがあってもキレイに合成するのが今回の技術のポイントだ

合成自体は、静止画であればすぐに行え、動画の場合は「実撮影時間の5倍ぐらい」(同社)の時間が必要だという。しかし、アップロードしてしまえば端末に負荷がかからない。加えて、LTEやWiMAXなどの高速通信を利用することで、送受信が高速に行えるので実用的になったという。

クラウドでの処理によって、3Dコンテンツを合成する

撮影した動画像をアップロードしてしばらく待つと合成され、ダウンロードできるようになる。静止画はMPOファイル、動画はサイドバイサイドのMP4形式で提供される

3D非対応のスマートフォンであれば、赤青のアナグリフ形式で表示して3Dメガネを使って視聴する

3D対応テレビであればそのままサイドバイサイドで専用メガネを使って視聴する

実証実験では、オリジナルコンテンツで定評のある「デイリーポータルZ」内の「3DポータルZ」で開発したアタッチメントを配布。ニフティのサーバーに3D合成技術を供与し、富士通研究所が運用することで、3D動画像の投稿を促す。

裸眼3D対応のフォトビューアーではそのまま閲覧できる

デイリーポータルZ上でアタッチメントの配布が行われ、3Dコンテンツの投稿もできるようになる

これによって、ユーザーが手軽に3Dの動画像を撮影し、3Dコンテンツの拡大を期待する。富士通研究所では、今後も3Dに関する研究を続け、今後は侵入検知のようなセキュリティ用途や、実際のものがそこにあるように見せる製品開発支援、遠方の家族が目の前にいるように見えるお見舞いサポートなどといった分野への応用を実現したいとしている。

これによって動画像のコンテンツが拡大すると期待する

今後の3Dへの取り組み

なお、今後の商品化については決まっておらず、アタッチメントは「どこかのメーカーに作ってもらいたい」(同社)考えで、クラウド側の技術をライセンス供与するかなど、具体的なビジネス化は今後の検討だとしている。また、今回の技術は、6月4日に米国で開催される国際会議「IEEE ISCE」で発表する予定。