4月18日から20日に掛けて、第15回のCool Chips(Cool Chips XV)が横浜の山下公園にほど近い「情報文化センター」で開催された。主催者発表では、参加者は145名で、7カ国から参加があったとのことである。

初日の4月18日には2件の特別講義が行われ、19日、20日の2日にCool Chipsの本会議が行われた。本会議では5件の基調講演と1件の招待講演、1つのパネルディスカッション、そして4つのセッションで合計9件の論文発表が行われた。また、学生が研究成果を発表するポスターセッションが開催され、22件のポスター発表が行われた。

Cool Chips XVでの発表風景

基調講演では、IBMのBlueGene/Qに関する講演と、富士通の「京」コンピュータのTofuインタコネクトに関する講演が行われたが、これらについては稿を改めて紹介する。

4月19日の最初の基調講演は、携帯電話などの画像処理ソフトを開発しているMorphoの平賀社長の"The Expanding Universe of Embedded Imaging"と題する講演である。平賀社長は東京大学(東大)で画像処理を研究し、東大発のベンチャーとしてMorphoを創立した人である。ディジカメや携帯に組み込まれたカメラでは、プロセサの高性能化とメモリの大容量化により、顔認識などの高度な処理が可能となり、小顔、目ぱっちり化などの写真の範疇を超える処理も開発してきた。また、シャッター期間内に複数回の画像キャプチャーを行い、画像のずれを検出して補正するディジタルの手振れ補正を開発したという。この方法は光学的な補正より安価で、電力消費も少ないという。これ以外に長い露光と短い露光を行い、これらを合成して明るいところの潰れを抑えて、暗いところも見えるというHDR写真などの技術を開発しており、まだまだ、カメラの画像処理は進歩していくという興味深い講演であった。

また、東北大学の羽生教授の"Nonvolatile Logic-in-Memory Architecture Using an MTJ/MOS-Hybrid Structure and Its Applications,"と題する基調講演は、磁気トンネル現象を使うMTJとMOSトランジスタを組み合わせて不揮発性のFPGAやTCAMを作るという講演であったが、都合で筆者は聞くことができなかったので紹介は割愛させて戴く。

そして、4月19日に行われたもう1件の基調講演は、GPUコンピューティングなどの世界的権威であるイリノイ大学のWen-mei Hwu教授の"Application Scalability - Key to Low Power, Performance Growth, and Exascale"と題する講演である。IBMのデータであるが、プロセサチップの集積度は18カ月で2倍になっているが、その上で動かすソフトのソースプログラム行数は10カ月で2倍になっており、ソフトの開発コストが大きな問題となる。従って、将来のシステムでは同じソフトを再度開発するというムダをできるだけ排除しなければならないという。

しかし、高級言語でプログラムを書いても、プロセサコアのアーキテクチャが更新されたり、マルチコアになったりすると以前のソフトはそのまま使えず、作り直しや大きな改造が必要となるというのが現実であるという。

マルチコアなどの並列処理で性能を上げても、計算量がデータ量の2乗に比例したり、N×log(N)に比例したりすると、データ量の増大にともない処理が追いつかなくなってしまう。このため、データ量とリニア比例して計算量の増えるアルゴリズムの開発がスケーラビリティやポータビリティを確保する上で鍵となる。

1つのバイナリがいろいろなプラットフォームでそのまま動くのが理想であるが、これは現実には無理で、プラットフォームに合わせたデータレイアウト、データ移動、スレッドのスケジューリングなどを行う必要がある。しかし、これをソースプログラムに書き込んでしまうとポータビリティが無くなってしまう。このため、Hwu教授らのグループは、DL、GMAC、TM、SHIPという一連のツール群を開発し、1つのソースから、プラットフォームごとに最適化したバイナリが作れる環境を整備しているという。

Hwu教授のグループが開発したポービリティツール群(出典:Cool Chips XVでのHwu教授の発表スライド)

このような新しいツールやAPIを使うことにより、スケーラビリティやポータビリティを持つソフトの開発コストを大きく低減することができるという。そして、Hwu教授は、スケーラブルでポータブルなアルゴリズムやライブラリは、この時代が後世に残せる最大の資産となると主張した。