NVIDIAは、モバイル端末向けプロセッサ「Tegra 3」を報道関係者向けに解説するセミナーを開催し、市場動向やクアッドコアの必要性などを説明した。同社のテクニカルマーケティングエンジニアのスティーブン・ザン氏は、「最大のパフォーマンスを最小の消費電力で実現する」ことを目指したのがTegra 3だと話す。

Tegra 3チップ

Tegra 3を搭載したASUSのEee Pad Transformer Prime TF201

Tegra 3は、NVIDIAのモバイルプロセッサの第3世代目で、昨年11月に発表。すでにASUSTek Computerなどがタブレット製品に投入しており、同年2月にバルセロナで開催されたMobile World Congress 2012ではスマートフォンでの採用製品が発表された。すでに海外では、Tegra 3を搭載したスマートフォンHTC One Xの販売も開始されている。

Tegra 3搭載のタブレット

MWC 2012で発表されたTegra 3搭載スマートフォン

ザン氏によれば、2011年には34種類のタブレット、67種類のスマートフォンがTegraを採用し、Tegra 3搭載タブレット、スマートフォンも拡大している。ザン氏は、「1,920×1,200ドットのディスプレイを搭載したハイエンドモデルからお求めやすいモデルまで、幅広い選択肢がタブレットで登場している」とアピールする。

2011年に登場したTegra搭載タブレット、スマートフォンは100種類を超えた

ハイエンドだけでなく、メインストリーム向けにTegra 2を搭載したスマートフォンも登場

Tegra 3を解説するに当たって、まずザン氏が取り上げるのがクアッドコアという点。1つのプロセッサに対して4つのコアを持つクアッドコアプロセッサは、今年前半の大きなトピックの1つだ。Tegra 3は世界初のモバイル向けクアッドコアとしてTegra 3を発表しており、ザン氏はクアッドコアの必要性を説明する。

さまざまなTegra 3のトピックの中でクアッドコアが大きな特徴

マルチコアは、単線の道路に対して複数車線の高速道路とされる

スマートフォンやタブレットが身近な端末となり、昨年はデュアルコアが一般的になった。そうなると、デュアルコアを前提としたアプリが登場してきて、そうしたアプリが一般的になると、さらにそれ以上のパフォーマンスの要望が高まる、とザン氏は指摘。それに加え、LTEやWiMAXのような高速通信も普及してきており、通信が高速化・広帯域化すると、今までモバイル環境では利用できなかったサービスやコンテンツが利用できるようになる。ハードウェアが進化するとソフトウェアが進化し、通信環境の進化も相まって、「高性能なプロセッサが常に求められている」とザン氏は説明する。

性能が高くなると、それを使ったアプリやサービス、コンテンツが作られ、そうしてさらに要望が強まり、新しいハードウェアが開発される、という循環で、これは今までもPC業界の進化の過程と同じだ。ザン氏はこうした進化がPC市場を発展させ、そしてモバイル市場も今後発展させると話す。

プロセッサの高速化では、PC業界でも2004年ごろまではシングルコアだったが、駆動周波数が4GHzに達するころに「消費電力の壁にぶつかった」(ザン氏)という。そのためマルチコアかが進み、11年には8コアまで拡大した。

モバイルでも同様で、シングルコアでは1.5GHzを境に「これ以上の速度では爆発的な消費電力が必要になる」(同)状態で、2010年にデュアルコア化、2011年にはクアッドコア化し、「PCよりも速いペースでマルチコア化した」(同)とのことだ。ザン氏は、PC業界に関連する開発者などは、すでにPCで体験したマルチコアの波であり、マルチコア化の経験が生かせると語る。例えばAndroidやiOSで使われているWebブラウザエンジンWebKitは、PC用のエンジンをベースにしており、マルチコアをサポートしているし、家庭用/PC用ゲームもマルチコアを前提としているため、モバイル端末への移植でのマルチコア化に対応している。

PC向けプロセッサとモバイル向けプロセッサのマルチコア化の流れ