2011年のPC冬商戦で特に注目したい製品が、"Ultrabook"と呼ばれる薄型軽量のモバイルノートPCだ。インテルが提唱したUltrabookは、単なる携帯性に優れたモバイルノートPCではなく、今後のPCの在り方をも変える可能性を秘めている。ここでは、Ultrabookの何が従来のノートPCと違うのか、そのコンセプトの紹介と、各社から登場したUltrabookの特徴や選び方を解説していきたい。

各社から登場した第1弾のUltrabook

Ultrabookとは、その名の通り、従来のノートPCの概念を超える新たなコンセプトに基づく製品の総称だ。2011年5月に開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2011の基調講演において、インテルは初めてUltrabook構想を明らかにし、2011年後半にはその第1弾となる製品が登場すると予告した。

2011年11月末の時点で、日本国内で正式に発表されたUltrabookとしては、日本エイサーの「Aspire S」シリーズ、ASUSTeK Computerの「ZENBOOK」シリーズ、レノボ・ジャパンの「IdeaPad U300s」、東芝の「dynabook R631」が挙げられる。すべて、第1弾のUltrabookとしては、高い完成度を誇る魅力的な製品だ。

インテルの最新CPUである、開発コードネーム"Sandy Bridge"こと「第2世代インテル Core プロセッサー・ファミリー」を搭載し、従来のネットブックなどに比べて高いパフォーマンスを備える。第1弾のUltrabookに搭載されているCore iシリーズは、インテル ハイパースレッディング・テクノロジーによって最大4スレッドの同時実行が可能であり、Webブラウズや文書作成はもちろん、写真や動画の編集なども十分こなせるだけの性能を誇る。

各社の製品をごく簡単にまとめておこう。

日本エイサーの「Aspire S」

ASUSTeK Computerの「ZENBOOK」

Aspire SシリーズはHDD搭載の下位モデルと、SSD搭載の上位モデルが用意されている。前者は実売価格が8万円前後という低価格が魅力で、後者はCore i7と256GB SSDを搭載し、高い性能を誇る。

ZENBOOKシリーズは、11.6型ワイド液晶を搭載したUX21Eシリーズと13.3型ワイド液晶を搭載したUX31Eシリーズに大別される。それぞれにSSD容量が異なる2モデルを用意しており、合計4モデルの中から選択可能だ。中でもUX31Eシリーズは、1,600×900ドットの高解像度液晶を搭載していることが魅力だ。

レノボ・ジャパンの「IdeaPad U300s」

東芝の「dynabook R631」

IdeaPad U300sはCore i7と256GB SSDを搭載し、最厚部でも14.9mmというスリムなボディを実現している。dynabook R631はインタフェースが充実しており、USB 3.0やHDMI出力だけでなく、D-Sub15ピンのアナログRGB出力や有線LANポートの搭載もウリだ。

Ultrabookのコンセプトと特徴

インテルは、Ultrabookのコンセプトを"ノートPCを再定義する"ものだとしている。ユーザー1人1人のライフスタイルに応じた、より"パーソナル性"を前面に押し出したノートPCというのがポイントだ。具体的なUltrabookの特徴としては、

  • 薄くて軽い
  • 高性能
  • すぐに起動する
  • バッテリ駆動時間が長い

といったところが挙げられる。まず、薄くて軽いというポイントだが、インテルはUltrabookのフォームファクターを、厚さ21mm以下と規定している。通常のノートPCは、厚みがだいたい30mm程度、より大型のものなら40mmを超えることも多い。

日本エイサーのUltrabook「Aspire S」シリーズを例に挙げると、厚さは最厚部でも17.5mm、最薄部はわずか13.1mmと非常にスリムだ。一般的なノートPCの半分程度の厚さだと考えてよい。重量については特に規定はないが、やはり従来のモバイルノートPCに比べて軽い製品が多い。Aspire Sの重量は約1.33kg(SSD搭載の上位モデルの場合)と軽く、女性でも比較的ラクに持ち歩ける重さだろう。

日本エイサーの「Aspire S」シリーズは、最薄部の厚みが13.1mm、最厚部でも17.5mmに収まっている

性能については冒頭でも述べたように、インテルの最新CPU、第2世代(Sandy Bridge)のCore iシリーズを搭載する点がポイントだ。デスクトップ向けのCore iシリーズと比べて動作クロック数は多少低いのだが、Webブラウズやインターネット上の動画再生、オフィスアプリケーションといった主要な用途では、体感的な違いはほとんどない。

スリープや休止状態からの復帰が高速なことも、Ultrabookの大きな魅力だ。例えば、Aspire Sの場合、「Acer Instant On」と呼ばれる独自機能を搭載しており、HDDモデルでもスリープからの復帰が約1.5秒、休止状態からでも約6秒という短時間の復帰を実現している。

スリープ状態から高速に復帰する「Aspire S」

特に休止状態からの復帰は、従来のHDD搭載ノートPCでは平均的に約25秒ほどかかっていたので、実に4倍以上も高速化されているのだ。スリープからの復帰はほぼ一瞬であり、スマートフォンやケータイを使っているような感覚といっても過言ではない。

また、Aspire Sには、スリープや休止状態からの復帰後、無線LANアクセスポイントに素早く再接続する「Acer Instant Connect」と呼ばれる機能も搭載されている。復帰してから約2.5秒で無線LANに再接続されるため、高速復帰のAcer Instant Onと組み合わせることで、スリープからネット接続までは約4秒、休止状態からネット接続まで約8.5秒で完了する計算だ。

「Acer Instant On」と「Acer Instant Connect」の概要(日本エイサーの資料より)

これまでのノートPCでは、例えば仕事を途中で中断してスリープ/休止状態にすると、仕事の続きをやろうと思っても復帰や無線LANの再接続に時間がかかっていた。この点は体験として実感している人も多いだろう。それがUltrabookならば、スリープ/休止状態から素早く復帰して無線LANに再接続できるので、細切れの時間も有効に活用できるというわけだ。

バッテリ駆動時間についても、Ultrabookではほとんどの製品が6時間を上回っており、電源のない場所でもそこそこ安心して利用できる。また、ここも大きなポイントなのだが、休止状態での消費電力が、従来のノートPCに比べて大きく削減されている製品が多い。Aspire Sの場合は約50日間も、休止状態で待機させておける。Ultrabookは「使いたいときにすぐに使えるPC」を目指して開発が行われているのだが、第1弾のUltrabookは、すでにこの目標をかなりのレベルで実現しているのだ。