もうすぐ打ち上げの宇宙ロボット

"宇宙ロボット"というと米国の「ロボノート2」が話題となったが、日本の宇宙ロボット「REX-J」もまもなく宇宙へ向かう。REX-Jは「有人宇宙活動支援ロボット」の技術実証機。宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)3号機に乗せられて、国際宇宙ステーション(ISS)で実験が行われる。2012年に打ち上げられる予定だ。

REX-Jの地上試験モデル。中央付近に格納されているのがロボット本体で、このラック内で移動等の実験を行う

こちらは模型。ロボットアームを伸ばして、フック付きのテザーを右奥のハンドレール(手すり)に引っかける

有人宇宙活動支援ロボットについては、JAXAのWebサイトを参照して欲しいが、このREX-Jで実証しようとしているのは、テザー(ヒモ)を使った移動原理と、巻き取り方式のロボットアームだ。

宇宙ロボットでの難題の1つは、どうやって移動するかということだ。まず思いつくのはスラスタなどの推進系を使うことだが、燃料を消費するので補給を考える必要があるし、衝突など、安全面での懸念もある。

REX-Jがユニークなのは、4方向に伸ばしたテザーの張力を調整することで、任意の場所に移動するという仕組み。テザーが固定されていれば移動範囲も限られるが、ロボットアームを使ってテザーを外したり付けたりすれば、ISSの外壁のような広い範囲でも、次々に移動できるようになる。

ロボットはテザーの固定点で作る三角形から外に出ることはできないが(左)、もう1本張れば移動範囲が広がる(右)。これを繰り返す

ロボットアームの伸展方式もユニーク。ロール状のCFRPを引っ張り出せば、それがポール状になる。REX-Jでは2mまで伸ばすことができる

REX-Jではこの第1段階として、3方向の固定テザーと、ロボットアームで取り付けられる1本のテザーを使って、移動を試みる。将来的には、ISSの外壁の点検や、軌道上での大型構造物の組み立てなどへの応用が期待されている。

そのほか、「高出力精細ロボットハンド」の展示も。器用で握力があるロボットハンドの開発を目指しているそうだ

このコントローラで操作するマスタースレーブ方式になっていた。これと同じ動きをロボットが再現する

宇宙ではどんな油が使われている?

地味ながら面白かったのが宇宙油(真空用潤滑剤)のデモンストレーション。真空の宇宙空間ではすぐに蒸発してしまうため、普通の潤滑油を使うことができない。そのため、特殊な宇宙用の油が使われているのだが、これがなぜ真空でも蒸発しないかというと、非常に分子量が大きいために、分子同士の結びつきが強いのだそうだ。

宇宙油は無色透明。これは「MAC油」と呼ばれている種類で、なんだかフライドポテトを揚げていそうな名前だ

宇宙用MAC油の分子構造。炭素と水素のみで構成される分子だが、平均分子量は910もあって、真空中でも液体でいられる

潤滑油としては、炭化水素系のMAC(Multi-Alkylated Cyclopentane)油や、フッ素系のPFPE(Perfluoropolyether)油などの種類があり、宇宙では用途によって使い分けられている。またこれら液体の潤滑油が使えないような場所では、固体潤滑剤が使われる場合もある。固体潤滑剤の採用例としては、HTV曝露部のガイドレールなどがある。

何種類かの液体サンプルを入れて空気を抜いていくと…。ちなみに宇宙油(中央)の右にあるのは何故かサラダ油

その他イベントの模様を写真で紹介

バスや自転車で来場すると「エコキャンペーン」として記念品をプレゼント。今回もJAXA軍手だった

いつもならロケットの下のスペースで有志グループが展示を出しているのだが、悪天候のためか今回はなかった

物販コーナーは今年も大賑わい。ロケットパンやH-IIA今川焼きなどが定番商品だ

食堂では「はやぶさランチ」(700円)なんていうメニューも。チキンが太陽電池パドルになっている?

小型実証衛星「SDS-1」の試験モデルを使った組み立て体験コーナー。試験モデルとはいえ、本物の衛星と同等

「SDS-1」は大きさ70cm×70cm×60cmの小型衛星。内部は中央の仕切りにより、右がバス側、左がミッション側

今回の新企画「ロケット打ち上げの魅力を語る座談会」の風景。有名ブロガー3氏によるプレゼンが行われていた

このゆるキャラは初めて見たような…名前を聞くのを忘れてしまった