レノボ・ジャパンは9月29日、10.1型の企業向けタブレット端末「ThinkPad Tablet」の製品説明会を開催した。その直前に、Web直販経由での一般販売を開始したことを受けてのものだ。改めて製品特徴が紹介されただけでなく、同社の開発担当者から直接、製品の詳細を聞くこともできた。

「ThinkPad Tablet」の説明会が開催された

まずは同社製品事業部 プロダクトマネージャーでThinkPad製品担当の土居憲太郎氏が、ThinkPad Tabletが狙うマーケットについて紹介した。同氏によると、ThinkPad Tabletでは従来のタブレット端末が担っていた用途をカバーするだけでなく、新たな用途の実現も想定しているのだという。

レノボ・ジャパン 製品事業部 プロダクトマネージャーでThinkPad製品担当の土居憲太郎氏

ThinkPad Tabletは、スマートフォンやPCと競合しないビジネスでの活用を想定していると説明

その最初の例として挙げられたのは、シンクライアントとしての用途で、在庫管理端末やオーダーシステム、ミニデジタルサイネージなどの専用端末としての活用も紹介された。また、ThinkPad Xシリーズのタブレットモデルでも培ったペン入力の精度には自信があるようで、建設業や医療従事者など、素手で端末を操作できない(タッチパネルに向かない)ユーザーであっても、高度なペン入力とタッチパネルの両方に対応するこの製品が最適な端末になるとする。

もちろん、従来のタブレット端末からの置き換えにおいても、ThinkPad Tabletは優位性があるという。起動時間も含めた高速な応答性と、観やすい液晶やモビリティの高さから、セールスマンの顧客へのプレゼンテーションの効率化をうたう。業界用語で"エレベーターピッチ"と呼ばれる、エレベーターでの移動中の数十秒を使った短時間で訴えかけるプレゼンテーションでも、ThinkPad Tabletが活躍できると紹介した。

新たな用途を提案し、従来のタブレットとの置き換えを狙う

続いてはThinkPad Tabletのハードウェアについて、競合のタブレット端末とThinkPad Tabletは何が違うのか? 同社製品開発統括担当 研究・開発 ノートブック製品 開発の木下秀徳氏が、「違いには、3つのポイントがある」として解説した。

レノボ・ジャパン 製品開発統括担当 研究・開発 ノートブック製品 開発の木下秀徳氏

ひとつめのポイントはデザイン。高級感のあるブラックを基調としたボディデザインは、同社の主力製品である、ノートパソコン「ThinkPad」の伝統的イメージを活かしたものであり、同社ならではの独自性を獲得している。

伝統的「ThinkPad」のイメージを踏襲したデザイン

ふたつめはペン入力をはじめとするインタフェース。既存のタブレット端末でも、ペン入力のソリューションは存在するが、同社によれば、それらは多くが"擬似"ペン入力と呼べるもので、指でのタッチの仕組みを利用したものなのだそうだ。ThinkPad Tabletでは256段階での筆圧感知ができる電磁誘導式ペンを採用し、より自然な筆記に近い感覚でのペン入力が可能となっている。

ペン入力には自信があるという。木下氏はThinkPad Tabletのペンを"トゥルーペン"と表現していた

キーボード入力を可能とする専用周辺機器「キーボード・フォリオ・ケース」も、同社らしくこだわったキーボードを実装しているという。キーストロークは1.5mmと浅いが、ThinkPadでのノウハウを活かし、各パーツ形状の細かな工夫などで、打ちやすくしっかりとした妥協のないキーボードを実現したとしている。また、光学式トラックポイントの搭載は、使い勝手はThinkPadのトラックポイントと異なるが、デザイン上の"アイコン"としてThinkPadらしさをアピールするものだろう。

キーボードへのこだわりはレノボならでは

「キーボード・フォリオ・ケース」を利用すればノートPCライクな使い方もできる

3つめはThinkPad伝統の品質。木下氏は、「ThinkPadの目標は"ビジネス・プロフェッショナル・ツール"であり、ThinkPadの名称を使う以上は、ThinkPad Tabletでも必須の品質を実現している」と説明する。ThinkPadで有名な、同社大和研究所での堅牢性テスト(通称、拷問テスト)だが、ThinkPad Tabletでは、持ち運びがより頻繁なタブレットの用途から、テスト基準はThinkPadよりも厳しいものになっているとされた。

堅牢性や熱設計での優位性を紹介。ThinkPad Tabletは、大和研究所においてThinkPadよりも厳しいテストもクリアしているという

ハードウェアだけではなく、ソフトウェアやエコシステムも含めたトータルでのシステムインテグレーションが、同社の強みであり、競合製品との差異優位性であるとして、引き続き、同社主任開発技術担当部員 TM/ノートブック開発 第三TVT開発 與茂孝嗣氏が、ThinkPad Tabletのソフトウェアの特徴を解説した。

レノボ・ジャパン 主任開発技術担当部員 TM/ノートブック開発 第三TVT開発 與茂孝嗣氏

プリインストールされたソフトウェアアプリケーションの中で注目のものが、日本語入力に優れたオムロン製IME「iWnn」、手書き感覚で使えるVision Object製エディタ「Notes Mobile」、そして、柔軟な設定ができる独自のホーム画面用アプリ起動ランチャー「レノボ・ランチャー」だ。

ホーム画面用アプリ起動ランチャー「レノボ・ランチャー」。項目はカスタマイズ可能

「Notes Mobile」の手書きを少し試してみた。そのまま書き込めるのはもちろん、文字変換も悪くない

企業ユーザーをターゲットにしているということで、セキュリティ関連や統合管理機能の充実もなされている。セキュリティ関連として紹介されたのは、フラッシュメディアやストレージの暗号化がされていること、パスワード認証でのMicro USBデバイス制御、Active Directoryドメイン認証によるスクリーンロック機能などで、盗難や紛失時のリスクを減らすことができる。ほか、ウィルス対策ソフトの「McAfee Mobile Security」のプリインストールや、盗難/紛失対策のデータ消去ソリューション「Absolute Solution」も搭載している。

パスワード認証でのMicro USBデバイス制御ができる

「McAfee Mobile Security」はGPSを利用した端末追跡の機能も

統合管理機能では、Wi-Fi構成のインポート/エクスポートの統合管理や、Wi-Fi電源のON/OFFによる省電力化制御などが可能なほか、タブレット端末のアクセスをポリシーベースで管理できる「レノボ・デバイス・マネージメント」サービスを備えている。同サービスでは、SDカードスロットやUSBポートなどI/O類の使用可否や、カメラやマイクの使用可否、提供元不明アプリの制限などといった管理を、XMLポリシーベースで設定できる。

「レノボ・デバイス・マネージメント」