もうひとつ、Paragon NTFS for Mac OS Xの特徴は「高いパフォーマンス」にある。かんたんに言ってしまえば、ファイルコピーの速度がHFS Plusと変わらないのだ。

ところで、OS X向けには、オープンソースソフトウェア「FUSE」の機能を利用した「NTFS-3G」というNTFS互換ドライバも存在する。しかし、FUSEはユーザランド上にファイルシステムを実装するために、ファイル転送時のオーバーヘッドが大きく、カーネルモジュールとして動作するファイルシステムドライバに比べパフォーマンスは大きく劣る。安定性も高いとは言い難い。

1TBのハードディスクを使い、Paragon NTFS for Mac OS XとHFS Plusとでファイルコピー速度を試したところ、表1に示す結果となった。ディスク全体のフォーマットと100件のファイルコピーはHFS Plusを下回ったものの、約810MBのディスクイメージファイル1件のファイルコピーはほぼ同じ結果となった。なお、利用したハードディスクはWestern Digital WD10ERS(SATA/1TB)、OS X Lion 10.7.1が動作するMacBook Pro 13インチ(2.4GHz Core 2 Duo/4GB RAM)にUSB 2.0で接続している。

■表1 Paragon NTFSとHFS Plusのファイルコピー速度比較
Paragon NTFS HFS Plus
フォーマット(1TB) 29.1秒 20.3秒
ファイルコピー(JPEG×100、約194MB) 9.7秒 5.7秒
ファイルコピー(DMGファイル×1、約810MB) 23.8秒 23.7秒

マウントしたNTFSボリュームは、一見では他のファイルシステムと同様。読み書きの速度も、HFS Plusと大差ない

ベンチマークソフト「Xbench」のディスクテストによる比較も行った。結果は表2に示すとおり、シーケンシャル/ランダムとも読み書きの速度はHFS Plusとほぼ同等、HFS Plusをわずかに上回る項目もあるほどで、NTFSというOS Xにとっての異種ファイルシステムを利用していると感じさせなかった。この点だけをとっても、Windowsとの間で大量のデータをやり取りする必要がある環境では、Paragon NTFS for Mac OS Xを導入する意味があるだろう。

10日間ほど運用したうえでの感想だが、大量のファイルコピーを行ってもアクセスエラーを起こすことなく、安定して動作した。安定性はファイルシステムの要ともいえる項目であり、なによりのポイントとなるだろう。インターフェイスにUSB 2.0を使うかぎりでは、アクセス速度もHFS Plus並でストレスを感じることはなかった。より簡潔にいえば「存在感がない」となるだろうか。使う場所を誤れば最大級の侮辱になるが、縁の下の力持ち的存在の製品なだけに、重要なところだと思う。

■表2:Xbench 1.3を利用したParagon NTFSとHFS Plusのパフォーマンス比較(単位:MB/秒)
シーケンシャル
Paragon NTFS HFS Plus
Uncached Write 4K 38.49 33.00
Uncached Write 256K 31.83 32.16
Uncached Read 4K 10.05 10.15
Uncached Read 256K 38.29 38.59
ランダム
Paragon NTFS HFS Plus
Uncached Write 4K 1.73 1.67
Uncached Write 256K 30.83 30.10
Uncached Read 4K 0.78 0.78
Uncached Read 256K 23.19 22.20

システム環境設定に追加される「NTFS for Mac OS X」ペインでは、ファイル/フォルダの圧縮などNTFS独自機能を設定できる