ヤマハは、初音ミクなどに代表されるVOCALOIDシリーズの進化版となる「VOCALOID3」の発表を記念し、AKIHABARA85にて、「VOCALOID3発表パーティ」を開催した。

本イベントでは、VOCALOID3の開発状況やリリース予定をはじめ、機能と仕様の公式発表、パートナー各社との協力状況や音声データベース制作状況などが紹介された。イベントの司会進行は、多数のネットストリーミング放送などへの出演でもお馴染みのジェット☆ダイスケ、たたの両氏。多数のVOCALOIDコスプレーヤーも参加し、ブロガーやネット動画共有サービスなどと密接に結びついている、現在のVOCALOID文化の一端を実感できる演出がなされていた。

ジェット☆ダイスケ、たた両氏による司会で「VOCALOID 3発表パーティ」は進行。会場には、多くのマスコミのほか、多数のボーカロイドPなどが集まった。また、この模様は、ニコニコ生放送でも中継が行われた

発表会の冒頭に登場したのは、VOCALOIDの生みの親でもあるヤマハ研究開発センター音声グループ劔持秀紀氏。VOCALOID3では、これまで不自然に感じられた音程のつなぎや、さ行/わ行の発音などが、より滑らかでナチュラルな合成音になると紹介した。また、主に入力・編集作業を行う「VOCALOID3 Editor」のユーザーインタフェースでは、従来のピアノロールに加え「トラックビュー」を追加。各トラックの管理や作業効率も一段と向上したという。さらに、「VST Host」をはじめ、伴奏トラック再生、VOCALOID Job Plugin、多言語化対応(日本語/英語/中国語/韓国語/スペイン語)など、ユーザーの声を反映した数多くの新機能が追加された。なお、新バージョンからは、これまで一体として提供されていた、エディタ部分と歌手の歌声ライブラリ(データベース)が分離して提供される。

VOCALOIDの父ことヤマハの劔持氏による「VOCALOID3」プレゼンテーション。トラックビューなど、数々の新機能を採用し、音楽制作ソフトウェアとしても完成度が高まった

ヤマハからは、VOCALOID3に対応した歌声ライブラリ「VY1 for V3」、「VY2 for V3」に加え、アーティスト坂本美雨の歌声をフィーチャーした新ライブラリなども登場が予告された

続いて、VOCALOID3への音声データベースの制作を予定するパートナー各社が登壇。クリプトン・フューチャー・メディア、インターネット、AHS、Zero-G、PowerFXなどお馴染みのデベロッパーに加え、ボカロレボリューション制作委員会、1st PLACE、スタジオディーン、モエジャパン、ボーカロイドフェスタ、SBS ARTECH(韓国)など、数多くの企業が新規参入を表明し、従来にない歌声ライブラリの提供のみならず、VOCALOIDの新たな広がりや展開を期待させる発表となった。

ボカロレボリューション制作委員会からは声優、喜多村英梨をキャラクターボイスとして採用した歌声ライブラリが、1st PLACEからはアーティストLiaの歌声ライブラリが発表され、注目を集めた

イベント後半には、実際の歌を手本とし、VOCALOIDのパラメータを調整し、より自然なニュアンスを持った歌唱を実現する「VocaListener」(通称ぼかりす)の開発者である、産業技術総合研究所の後藤真孝氏、中野倫靖氏が登場。VocaListenerの技術は、ヤマハとの共同開発により新機能「VOCALOID Job Plugin」のひとつとして、有償にて販売予定とのことなので、VOCALOID3と合わせ、ぜひとも早期のリリースに期待したところだ。

産総研の後藤氏、中野氏による「ぼかりす」の解説が行われた。VocaListenerは、歌声合成を使用した音楽制作を支援するために、ユーザの歌唱音声から歌声合成パラメータを自動推定するシステムだ(左)。イベントの最後には、音・音楽・ネットワークおよびデバイスの研究開発を行う「ヤマハ研究開発センター音声グループ」のVOCALOID3開発メンバーが総登場した(右)