――他のPaaSと比べたときの特徴を教えてください。
安納氏 : 非常に多くの企業で導入され、管理者の方々も使い慣れているWindows Serverと同じ機能を利用できるというのは大きなメリットでしょう。もちろん、管理に必要な機能も一式用意してありますし、開発したアプリケーションを簡単にデプロイできる環境も提供しています。
いずれのベンダーが提供するクラウドプラットフォームであっても、既存環境をすべてクラウドに移行することは現時点では難しいと言えます。その点で、Windows ServerやSQL Serverなど自社内に設置(オンプレミス)した環境との親和性が高い点も大きなアドバンテージになるはずです。つまり、既存環境とクラウド環境をスムーズに結びつけるかという点において、Windows Azureには優位性があると考えています。
Windows AzureはHyper-Vのテクノロジーによって仮想化された環境であり、ファブリックコントローラーと呼ばれる内部コンポーネントとの連携により、PaaSとしてのメリットを最大限に生かせるプラットフォームとして設計されています。よって、極力プラットフォーム(OS)部分に手を入れずに使用していただくことで最も効果的に使用することができます。とはいえ、既存業務に使用している独自のライブラリなどをクラウドでも使用したい場合があるでしょう。そうした場合には、VM Role とよばれる機能を使用して、カスタマイズしたOS をWindows Azure 上に展開することができます。
![]() |
――中堅中小企業では、どのような使い方がおすすめしますか?
安納氏 : すべてをクラウド環境に移行するのではなく、いわゆるハイブリッドクラウドとして利用することです。
例えば、本社と支社の間でやり取りされる業務データを同期する際に、直接本社と支社を結ぶのではなく、クラウドをいったん中継させるといった使い方。あるいは、顧客や取引先が利用するアプリケーションと社内のアプリケーションをクラウドを経由して通信したりといった使い方。そして、多くの企業によって導入されている認証基盤である Active Directoryをクラウド上から使用するというオプションも用意されています。パブリッククラウド上にディレクトリサービスを展開することに違和感を持つIT担当の方には、是非ともご検討いただきたい機能です。さらには、クラウドとオンプレミスを仮想ネットワークで結び、クラウド上のサーバーをオンプレミスに設置されているかのように扱うことができます。これらのテクノロジーにより、オンプレミスとクラウドを結合させ、クラウドからオンプレミス、オンプレミスからクラウドを意識せずに利用することができます。
こうした使い方を実現するためのソリューションとして、SQL Azure Data Sync(データ同期)、AppFabric Service Bus(アプリケーション間通信)、AD FS 2.0 & AppFabric Access Control Service(セキュリティ)、Windows Azure Connect(仮想ネットワーク、2011年H1に提供予定、プレビュー版を利用可能)などを提供しています。
――では、中堅中小企業にとって、Azureはどんなインパクトがあるのでしょうか。
安納氏 : 意識していただきたいのは、Windows Azure Platform はアプリケーションプラットフォームだけではないということです。とかく VM Role等に注目が集まってしまいますが、既にご紹介したようなハイブリッドクラウドを実現するテクノロジーに面白さがあると考えています。既存資産を移行することだけを考えるのではなく、AppFabric や Data Sync などの要素技術をうまく取り入れていただくと、いままで技術的な理由や予算的な理由であきらめていたことが容易に実現できる可能性があります。これまで現場のエンジニアの方がそうであったように、クラウドを移行先ではなくインフラの一部として捉えていただけると、新しいITの姿が見えてくるのではないかと思います。