18年間、一度も外に出ることなく、深い森に囲まれた高い塔の上で暮らすラプンツェル。彼女の楽しみは、自分の誕生日に空一面に浮かぶ神秘的な"灯り"を見ることだった。その灯りの正体を明かすため、ひょんなことから知り合った大泥棒フリンとともに初めて外に出ることになるのだが…… |
――まず、本作ではふたりで監督を務められたわけですが、作業分担はどのように行ったのですか。
バイロン・ハワード監督(以下、ハワード監督)「基本的にあまり役割分担はせず、なるべくふたりで一緒に取り組んでいこうという方針だったんです。映画『ボルト』(2008)のときは、完全に役割分担して作業を行ったのですが、今作ではふたりで一緒に取り組んだことで、作品の質を高めていく結果になったと思います」
――その作業方法のメリットはどういったところに感じましたか。
ネイサン・グレノ監督(以下、グレノ監督)「お互いの"強み"を持ち寄って、作品制作に取り組めたことですね。本作には、多くのスタッフが関わっており、ひとりひとりが自分の意見をしっかり持って作品制作に取り組んでいました。なので、それらの意見をふたりでまとめて、実際の作業に取り掛かるというのが一番大事なことだったんです」
――具体的に何名ほどのスタッフが関わったのですか。
ハワード監督「全体では約500名のスタッフが携わっています。アニメーターに関しては50名ほどですね。ディズニーでは、スタッフ全員が同じ社屋で働いているので、非常に働きやすいんです。そういったディズニーの雰囲気も大好きですね」
――本作はグリム童話を原作にしていますが、とても現代風な作品に仕上がっていました。
グレノ監督「本作は、ディズニースタジオ50作品目の長編アニメーション作品ということで、これまでの49の名作の伝統を壊さず、けれども"何か新しいことをしよう"というのが第一の意気込みだったんです。1950年代の映画『ピーター・パン』(1953)や、『シンデレラ』(1950)といった名作と比較し、本作はCGアニメという点で、視覚的にかなり違ったものになると感じていました。また、1番気をつけた点は、これまでのディズニー作品のもつ雰囲気、趣を大事にしながらも、今の観客にすんなり受け入れてもらえるよう、ラプンツェルの性格をこれまでのディズニー作品のヒロイン像とは違い、非常に賢く、ちょっと変わっていて、かなりワイルドな女性へと、現代風の女性に仕上げた点ですね」
――CGアニメーションの魅力を教えて下さい。
ハワード監督「CGアニメーションの特に凄いところは、作品内の環境(背景)を100%コントロールできることだと思うんです。悲しくて孤独なシーンであれば、それに相応しい環境を作り出すことができますし、そうやってキャラクターの感情を強調する手段として環境を使える点がいいと思いますね」
――本作では、ラプンツェルの長い髪がポイントになっていると思うのですが。
グレノ監督「髪の毛をリアルに見せるテクノロジーに関しては、7年ほど前からディズニーで取り組んでいます。実はCGアニメーションの制作において、髪の毛ほど作るのが難しいものはないんです。特に本作において、髪の毛は重要な要素だったので、ひとりのキャラクターと同じくらいの存在感を与えたかったんです」
――3D映像を導入した意図をお聞かせください。
グレノ監督「CGアニメにおいて、"3D"というのは非常に素晴らしいツールになってくると思います。今回、3D映像を導入する際に気をつけた事は、いかにも3Dを見せるためだけの映像(なにかが飛び出してきたりなど)といったものは避けるようにしました。あくまでもストーリーがメインなので、そのストーリーを強調するという意味でうまく3D映像を用いたつもりです。特に、ダムが決壊し、洪水が起きるシーンの3D映像は際立っていると思います。そのほかにも、4万個近いランタンが空に浮かび上がるシーンでも、効果的に3D映像が使えたと思っています」
――最後に日本のクリエイターにアドバイスをお願いします。
ハワード監督「私自身、ハリウッドやロサンゼルスから程遠い、物凄く小さな田舎町で育ったわけですが、どうしてもアニメーターになりたいという夢があり、それに向かって一生懸命努力しました。なので、とにかく非常に強い決意を持ち、夢に向かって最大限の努力をするというのが一番大事だと思います」
――ありがとうございました。
映画『塔の上のラプンツェル』は2011年3月12日ロードショー。
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