アナログ半導体ベンダである米Linear Technologyは12月17日、都内で会見を開き、2010年における自社の事業概況およびアナログ半導体市場の動向などの説明を行った。

同社は1981年9月にNational Semiconductor(NS)を退社した現在の同社Executive ChairmanのBob Swanson氏らにより高性能アナログ分野をターゲットにして設立された。

Linear Technologyの創業からの変遷

同氏は、「我々が今、製品化しているものは、設立当時、名前さえもなかったものばかり」とし、インターネットの進展やPoE、ハイブリッド車や電気自動車、エナジーハーベスト、マイクロモジュールなど、近年登場した新規ビジネスの成長を支えるのはアナログ半導体であり、「もはやデジタルでの差別化は難しくなっている。アナログ技術こそが、競合との差別化要因の鍵を握っている」ということを強調する。

2010年の半導体市場は全体で約2800億ドル。このうち、アナログ半導体の市場は420億ドル程度で、そのうち同社がフォーカスする高性能アナログ半導体市場は100~140億ドル程度という。ただし、アナログ半導体の市場成長は2010年から2015年までのCAGRで8%と見込まれており、2015年には60億ドル規模へと拡大することが予測されているという。

アナログ半導体市場の成長予測

こうした市場成長を背景に、同社の売り上げ規模も成長が続いており、2005年に10億ドルを突破。2008年にはハイエンドコンシューマ製品の拡大により過去最高となる売上高11億7500万ドルを達成(会計年度は2007年7月~2008年6月)。2009会計年度はリーマンショックによる影響で10億ドルを割り込んだものの、2005年以前から開発の主体をハイエンドコンシューマおよび携帯電話から、産業機器や航空/防衛、自動車といった分野にシフトしており、「当時、アナリストなどからはクレイジーと言われた。しかし、今、その選択が正しかったということが判明している。そのおかげで、我々のビジネスは多少の波はあるが、堅調に推移することができている」とし、これら新たな分野の成長が自社の成長を支えてきていることを強調する。

2005年以降、売り上げがフラットになっているのは、ハイエンドコンシューマや携帯電話から産業機器などへのシフトが進む過渡期のためとするが、そのおかげでリーマンショックの影響もそれほど受けずに済んだと言う

実際に、「2010会計年度の第3四半期は四半期ベースで過去最高の売上高を達成、第4四半期はさらにそれを上回る売り上げを達成し、リセッション後4半期連続での成長を達成、利益もそれに合わせて拡大を続けている」(同社CEOのLothar Maier氏)とする。

Linearの業績推移。白抜きの文字は同社の決算発表時の成長予測。実際にはそれを大きく上回る成長を果たしているのが分かる

同社のビジネスセグメントは「産業機器」「通信機器」「自動車」「コンピュータ」「ハイエンドコンシューマ」「航空/防衛」の6つ。このうち、「産業機器、通信関連、自動車の分野に注力することで、競合他社に比べて高い成長率を達成した」(Maier氏)とする。

Linearの2010会計年度の売り上げ分野比率

産業機器は、「2010会計年度の36%を占める分野」(Maier氏)であり、多くのサブセグメントで構成されている。中でも、「エネルギー分野は今後の成長が見込める分野」(同)であり、ビル間をつなぐスマートワイヤレスセンサネットワークが伸びると見ているとする。

産業機器分野は複数のサブセグメントに分けられる。中でもエネルギー分野は特に今後の成長が見込める分野としている

また、通信関連は同社売り上げの24%を占める分野。「無線インフラ、ネットワーク機器、携帯電話の3セグメントがあるが、無線インフラとネットワーク機器に注力しており、携帯電話向けは売り上げの1%以下」(同)とのことで、特に無線インフラはスマートフォンやタブレットの伸張が世界規模で進んでおり、今後も伸びが期待できるとする。

通信関連は3Gなどの世界的な進展により、予想以上の成長ができているという

そして自動車分野は、売り上げの12%を占める分野だが、「数年前までは1%にも満たなかった。しかし、今はより効率の高いクルマが求められるということで、電子化が進み、我々としても、どこまで成長できるのか、という話をよくするようになるほどに拡大。特に、HVやHEV、EVには多く採用されており、日本のEVにも用いられている」とする。

自動車関連もエレクトロニクス化の進展により、需要が拡大している。特に日本、韓国、欧州では売り上げに占める割合が大きくなってきている

こうした成長分野にきっちりと開発投資を続け、成果を出していることについてMaier氏は、「多くのことを正しくきっちりと行ってきただけ」とするほか、「リーマンショック時で売り上げが落ち込んでも、工場の閉鎖やリストラなどは行わなかった。これが需要回復期に素早く対応できる結果につながった。また、アナログが複雑化しながらも、カスタマからアナログに詳しい人間が減った。我々は300名以上のエンジニアを13の設計拠点に配置するなど、アナログに対する知識をより深める方向性を示している」とし、「アナログ設計者は数ではない。質が重要だ。複雑化すればするほど、それが如実に効果を表してくる」ということを強調した。

今後についても、カスタマニーズに対応する製品の開発だけでなく、製品のデリバリなども含め、「誰もやらなかったことを行い、市場を築き上げること」(同)を目指し、日本のカスタマに対しても、"深く"そして"長く"製品を供給することで、さらなる事業の拡大を目指したいとした。

左からExecutive ChairmanのBob Swanson氏、CEOのLothar Maier氏、日本法人リニアテクノロジー代表取締役の望月靖志氏