ルネサス エレクトロニクスは11月29日、ミッドレンジ用マイコン「RXファミリ」の新製品として、高性能かつ低電圧・低消費電力を実現した32ビットフラッシュメモリ内蔵マイコン「RX200シリーズ」の製品化を発表した。第1弾製品として「RX210グループ」を2011年3月から順次サンプル出荷する。

RX200シリーズの第1弾製品「RX210」

低電圧・低消費電力を追求

RXファミリは発表当初から、RX200シリーズと高速・高性能を追求した「RX600シリーズ」を予定していた。RX600シリーズはすでに約500製品を製品化し、さまざまな分野で320件以上のデザインウィンを達成しているという。

今回製品化したRX200は、RX600とCPUやピン配置が互換で、周辺機能やツールを共通化した上、低電圧・低消費電力を追求した製品。RX600と同様に、旧ルネサス(ルネサス テクノロジ)が開発したMONOS型フラッシュメモリ内蔵プロセス採用し、さらに動作電流やリーク電流に配慮している。

同社執行役員 MCU事業本部長の水垣重生氏は、「RXファミリの高性能CPUと低電圧技術を組み合わせることで、1.62Vの低電圧で20MHz動作時に31DMIPSの業界最高クラスの性能を実現した」と強みを強調した。

RXシリーズの展開

高性能・低電圧・低消費電力に最適なプロセスを採用

ルネサス エレクトロニクス 執行役員兼MCU事業本部本部長の水垣重生氏

省エネ家電や携帯端末のニーズに対応

ターゲットアプリケーションは、省エネ家電、バッテリ駆動の携帯端末、電力メーターなどを想定している。将来的にはUSB搭載機器への展開も予定している。家電向けにはエコ・省エネ・高性能・安全機能、携帯端末向けではロングバッテリライフかつ高性能、といったニーズがある。これらのニーズに対応するため、RX200シリーズは以下の特長を備えている。

  1. 低電圧動作
  2. 低消費電力
  3. 高性能
  4. 安全機能

市場ニーズ

低電圧動作

低電圧動作については、1.62~1.8Vで20MHz、1.8~2.7V動作で32MHz、2.7~5.5V動作で50MHzを実現している。RX600では高速動作を実現するために電圧を上げたが、RX200は動作周波数を50MHzに絞ることで、低電圧動作を可能にした。

また、動作下限電圧と同じ1,6Vでフラッシュメモリの書き換えが可能であるため、1.62Vバッテリ駆動機器において別電源が不要となる。

さらにフラッシュメモリでは、コード用フラッシュメモリを2KB単位で小ブロック化し、必要領域のみを書き換えることで、書換時間を大幅に短縮する。従来品「M16C」の16KBでは2KBの書き込みに280msを要していたが、RX200では36msで可能という。

低電圧動作

フラッシュメモリの超低電圧書換と小ブロック化

低消費電力

低消費電力については、動作時に0.2mA/MHzで、RX600に対して約38%低減している。また、スタンバイ時にはRTC動作時で1.3μA、RTC停止時で0.3μAとなっている。動作時とスタンバイ時の両方の電流を大幅に削減することで、システムの低消費電力化に貢献する。2700mAhのバッテリでマイコンを1日5分間動作させた場合、RX200はバッテリ寿命を従来の4年5カ月から6年5カ月へ2年延長できるという。

また、ELC(Event Link Controller)を搭載しており、割り込みコントローラを介さずにイベントから直接モジュールを起動できる。このため、モジュールの高速起動が可能になる他、CPUスリープ状態でも起動できるため、低消費電力化に寄与する。

低消費電力

ELC(Event Link Controller)

高性能

高性能と低消費電力との両立については、動作周波数当たりの処理性能において、RX200は1.56DMIPS/MHzで、RX600の1.65DMIPS/MHzと遜色ないレベルを実現している。また、1DMIPS当たりの消費電流は0.13mA/DMIPSで、処理性能・消費電力ともに競合製品を上回っている。

また、演算速度比較のデモでは、100桁の円周率の計算において、M16Cは約13秒を要するのに対し、RX210は約5秒で可能なことを示している。

高性能と低消費電力の両立

演算速度比較のデモ

安全機能

安全機能は、家電向けに重要な機能であり、欧州で準拠が義務付けられている安全規格「IEC60730」に対応している。具体的には、RAMの故障テストをアシストするDOC(Data Operation Circuit)、通信エラーを検出するCRC(Cyclic Redundancy Check)、クロック周波数の上昇・低下を検出するCAC(Clock Frequency Accuracy Measurement Circuit)、独立したクロックで動作するウオッチドッグタイマなどのフェイルセーフ機能を搭載している。これらをチップに内蔵することで、ソフトウェアの負荷や外付け回路を大幅に削減している。

安全機能の搭載

今後の展開

第1弾製品のRX210グループでは、パッケージで80ピンから100ピン、メモリ容量で64KBから512KBまで、まず28製品を投入する。2011年度中に累計約100製品の製品化を予定している。

すでに試作チップは完成し、サンプル出荷の準備を進めているという。1000個受注時のサンプル価格は、512KBフラッシュメモリ、64KB RAM内蔵の100ピンLQFPパッケージ品で680円。

量産は2011年9月に開始し、1年後に月産200万個を予定。製造プロセスは130nmプロセスを採用する。製造拠点は、NOMOS技術を核としているため、西条工場(愛媛県)と那珂第二工場(茨城県)を予定している。

なお、開発ツールについては、当面はRX600と同等の開発環境を提供する。2011年以降に向けて新統合環境を合わせて、整備を進めているという。

RX200の売上目標は、月産200万個体制時に年間40~50億円。RXファミリ全体で2012年に年間200億円以上の売り上げを見込んでいる。

RX200シリーズのロードマップ

RX200テストチップ

RX200開発ツールの提供計画