あるバンドの誕生から成功までを描いた青春映画『BECK』が現在公開されている。ハロルド作石の同名漫画を原作としたこの作品を監督した堤幸彦に話を訊いた。

堤幸彦

1955年生まれ。愛知県出身。B型。『バカヤロー! 私、怒ってます』(1988年)で映画初監督。『金田一少年の事件簿』(1995年)、『トリック』シリーズ(2000年、2002年、2003年)、『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)など人気テレビドラマを多数手掛ける。映画監督作品に『溺れる魚』(2001年)、『トリック 劇場版』(2002年)、『包帯クラブ』(2007年)、『20世紀少年』3部作(2009年)、『劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル』(2010)など多数。最新作は『BECK』(公開中)、ドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』(10月8日放送開始 TBS系)など。

ロックバンドの物語であるという部分が突破口

――今回は、『20世紀少年』同様、原作に忠実に描かれているという印象がありました。

堤幸彦(以下、堤)「そうですね。原作のファンでなくても、原作ファンでも、この世界にちゃんと入り込んで欲しいという想いがあったので、丁寧に描きました」

――堤監督は以前のインタビューでも、「ロケ地など、ひとつでも突破口があると、そこから映画としての答えが見つかる」という趣旨のお話をされていました。『BECK』の場合、その突破口は何だったのでしょうか。

「ロックバンドのお話だという部分につきますね。元々、『PVのようなドラマを撮る』ともよく言われていて、それが自分の最も得意とすることでしたし。個人的な部分でも、高校生のころはバンドの事しか考えないで生きてましたから、ロックバンドの物語であるという部分が自分にとっての突破口でした」

――『20世紀少年』でもそういった部分は垣間見えていたのですが、堤監督はかなりのロック少年だったようですね。

「そうですね。当時から『ロックはバンドでなければならない』とか、『メンバーは4人か5人、キーボードがいてはならない』とか、自分なりのこだわりがありました。そういう意味でも、BECKというバンドは、自分が思うロックバンドの理想形だったんです。原作に関しても、全てが僕にとって理想的でした。バンドの人間模様もあり、『手が届く音楽と届かない音楽』というものが描かれている。バンドは現実的なんですが、『奇跡が起こるとブレイクする』という伝説がロックの世界ではずっとある。この原作では、その奇跡がしっかりと描かれていますし」

『BECK』

バンドの誕生から、成長、挫折、成功の軌跡を、堤監督は丁寧に描く
(C)ハロルド作石/講談社 (c)2010『BECK』製作委員会

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