NTT東日本およびNTT西日本は、デバイスサーバーにインターネット通信機能を搭載した光LINKシリーズ「N-TRANSFER」を発売する。この機器を利用することにより、パソコンを介さず簡単にクラウドサービスを利用できるようになる。価格は7,350円。発売は、NTT西日本では10月1日より、NTT東日本では10月中旬よりの予定。

発売開始時点では、NTT東日本のショッピングサイト「Web116.jp」およびNTT西日本のショッピングサイト「West-V」での販売となる。その他のECサイトでは順次販売開始の予定。

「N-TRANSFER」

「N-TRANSFER」は、大きくわけると3つの機能を搭載する製品。1つ目は、「CLOUD-TRANSFER」機能という、USB機器を直接クラウドサービスに接続する機能。これを利用することにより、複合機やスキャナーで取り込んだデータを、パソコンを介することなくクラウドサービスにアップロードできる。現時点では、USB機器としてはエプソンの複合機「カラリオ」およびPFUのスキャナ「ScanSnap」が対応製品として挙げられている(具体的な対応機種名はWebサイトを参照)。また、クラウドサービスとしてはEvernoteが利用できる。対応するUSB機器およびクラウドサービスについては今後も追加される予定。

2つ目の機能は、「DATA-TRANSFER」機能。これは、N-TRANSFER同士でインターネットを介したファイル転送を行う機能。USBメモリなどをN-TRANSFERに接続することにより、インターネット回線を通じてのファイル転送が行える。なお、この機能を利用する場合、送信・受信の指示を行うために携帯電話のメール機能を利用する。

3つ目の機能は、「USB-TRANSFER」という、N-TRANSFERに接続したUSB機器を複数のPCで共有する機能。LAN内での共有、無線ルータを介した遠隔地からの共有に対応する。なおこの機能については、今回の新製品の特徴ということではなく、既存製品でも実現していたもの。

ネットワークインタフェースは10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T対応。デバイス接続インタフェースはUSB 2.0×2(1ポートはドライバソフト用USBメモリが占有、USBハブ接続可)、最大接続可能数は12。サイズ・重量はW60×D95×H28mm(突起物含まず)、約98g。

「パソコンスキルによらずクラウドサービスを利用できるように」

本製品のリリースにあわせて開催された発表会には、NTT東西からの製品紹介・販売戦略説明のみならず、パートナー企業の出席者からのコメントもあり、この製品にかける期待の大きさがうかがえた。

製品を紹介したのはNTT西日本 取締役 サービスクリエーション部長の浅田安茂氏。同氏は、「お客様のパソコンスキルによらず、より便利に、より簡単にクラウドサービスを使える環境を提供する」というN-TRANSFERの製品コンセプトを説明し、"クラウド対応"という点を従来製品との最大の違いとして強調した。

NTT西日本 取締役 サービスクリエーション部長の浅田安茂氏

NTT東日本から出席したのはコンシューマ事業本部 ブロードバンドサービス部 情報機器開発担当 部長の井上修吾氏

想定ユーザー層としては、まずデジタルサービス・機器に親和性の高い30~40代男性を挙げ、名刺や紙資料をデジタル化して外出先などで確認するような使い方が考えられるとした。また、20~40代女性層に対しては、家族の情報や年賀状といったものの整理に利用できるのではないかという。

今後の構想として、現時点でのパートナーであるエプソン、PFU、Evernoteに加え、さまざまなクラウドサービス・機器メーカーとの協力を広げ、さらにその輪を広げていきたいとした。対応機器が増える際には、N-TRANSFERに装着されているUSBメモリにドライバソフトをダウンロードするような形になるという。会場からは「デバイス自体のネットワーク対応・Wi-Fi対応が進む中でどういう存在意義があるのか」という質問もあったが、その点については「簡単に使えるということ、面倒な設定などを行う必要がないという点が特徴と考えています」という回答だった。

販売台数については、NTT東西で今年度にそれぞれ数千台を目標としているという。

ユーザープロファイルの一例として、デジタルサービス・機器に親和性の高い30~40代男性を挙げた

今後の構想として、さらにクラウドサービス・機器メーカーとの協力を広げていきたいという

パートナー企業からは、まずエプソン販売 MD部 部長の鈴村文徳氏が「今後イメージングデバイスをさらに使ってもらうにはWebサービス/クラウドサービスとの連携が欠かせない。そういったサービスをより簡単に提供できるようにする本製品は面白い試みだと考えるので、商品企画・販売連携の面で協力していきたい」と述べ、PFU イメージグループ ECM営業統括部 パーソナルビジネス営業部 部長の松本秀樹氏は「PFUではADFタイプのイメージスキャナを商品化しているが、今年はさまざまなクラウドサービスが実際に使われるようになってきた。その中でもEvernoteとは我が社のスキャナと親和性が高いといえるが、それが家庭の中でさらにカジュアルに使えるようになるのは素晴らしい。今後はさらにさまざまなサービスとアライアンスを組んでサポートしていきたい」とした。

Evernote Corporation 米国本社 CEOのフィル・リービン氏は「これからさらに重要になるクラウドベースの製品がNTTから出てきたのはたいへん大事なことだと思う。こういう実際に使われる製品が出てくることが、クラウドサービスが発展していくためには重要。我々のようなサービスが成長していくためには、先進的なユーザーがサービスを利用するだけでなく、コンピュータに強くないようなユーザーがクラウドサービスの便利さを享受できるようにならなければならない。N-TRANSFERは、我々が見てきたさまざまな機器の中でももっとも進歩したものだと思う」と語った。

パートナー企業から出席した3氏。左から、エプソン販売 MD部 部長の鈴村文徳氏、PFU イメージグループ ECM営業統括部 パーソナルビジネス営業部 部長の松本秀樹氏、Evernote Corporation 米国本社 CEOのフィル・リービン氏

発表会場で行われたデモの様子。エプソン「カラリオ」でスキャンした資料をEvernoteにアップロードし、iPadで内容を表示した

PFU「ScanSnap」を利用したデモも行われた。名刺をスキャンしたデータは、EvernoteのOCR機能で文字識別を行い、検索することも可能