ソニーは、ウォークマンの新製品として、3シリーズ12機種を発表。さらにウォークマンを接続することができるドックコンポおよびドックスピーカー5機種も同時に発表した。
新ウォークマンは、7.2mmのスリムな筐体に、2.8型のワイド有機ELディスプレイを搭載し、同社独自のフルデジタアンプ「S-master」を採用した上位モデルのAシリーズ「A850」で3機種。デジタルノイズキャンセリング機能を搭載した普及モデルのSシリーズとして「S750」と専用スピーカー付属の「S750K」とをあわせて5機種。さらに、従来のスティックタイプからデザインを一新し、コンパクトなプレートタイプのボディに1.4型高精細カラー液晶を搭載したEシリーズとして「E050」および、専用スピーカーを用意した「E050K」とをあわせて4機種を、それぞれ新たに投入した。
音楽の進行にあわせて歌詞を自動的にスクロール表示する歌詞表示機能「歌詞ピタ」にカラオケモードを追加したほか、ウォークマンが自動的にお勧めの曲を選曲する「おまかせチャンネル」およびメジャーアーティストの楽曲の試聴がまとめてできる「ちょい聴きmora」機能を新たに搭載している。
いい音で音楽を楽しむ「高音質」、いい音をずっと楽しむ「スタミナ」、いい音を手軽に楽しむ「操作性」というデジタルミュージックプレーヤーとしての基本機能の強化に加えて、いい音をもっと楽しむための「新しい音楽体験」、いい音をつなげて楽しむ「ドック/機器連携」の5つのポイントを、今回の製品では強化したという。
ソニーマーケティングコンスーマーAVマーケティング部門パーソナルAVマーケティング部の中牟田寿嗣統括部長は、「ウォークマンが持つデジタルミュージックプレーヤーとしての基本機能を強化した。それはいい音を聞くための強化でもある。そこで他社との差異化を示していきたい」と語る。
今年のコンセプトとしては、「新しい音楽体験をお客様に提供しつづけること」という昨年からの方針を継承しながらも、若年層を中心とした新規顧客向けに「歌うことが力になる」として歌詞を見て歌ったり、聴いたりする楽しさを提案。また、買い替えおよび買い増しユーザーに対しては、「高品質の素晴らしさ」として、ウォークマンが持つ音質の良さを訴求する考えだ。
音質に関しては、昨年のウォークマン購入者が、他社製品に比べて音質やノイズキャンセリング機能を重視していることからも、その強みが発揮されていることが証明されている。
BCNの調べによると、2010年8月における携帯オーディオプレーヤーの市場シェアは、ソニーが47.8%となり、アップルの44.0%を上回った。同社が調査を開始して以来、単月でソニーがトップシェアとなったのは初めてのこと。アップルのiPodが新製品への切り替え直前であったことやiPhoneに需要の一部が流れているなどが指摘される一方、ソニーが1万円以下の低価格モデルで市場シェアを伸ばしたことが追い風となっていた。今回のソニーの新製品投入により、両社の新製品が出揃ったことになり、競争は新たなフェーズに入ることになる。
ソニーマーケティングの栗田伸樹社長は、「年末商戦ではウォークマンでシェア50%以上」と宣言、今回の新製品に強気の姿勢をみせている。
その50%のシェア獲得に向けたソニーの施策は、今回の新製品でみせた、シリーズごとのユーザーターゲットをより明確化した姿勢に表われているといえよう。
Aシリーズでは、高音質および高画質にこだわるユーザー層がターゲット。また、Sシリーズでは、若年層の新規購入および20代の買い換え購入をターゲットにしている。そして、Eシリーズはかんたん操作を前面に打ち出し、エントリーユーザーが対象となる。
とくにシェア拡大のポイントとしているのが、Sシリーズによる若年ユーザー層の獲得だ。「これまでのウォークマンSシリーズの購入者を分析すると、歌詞表示機能を重視した人は全体では21.3%であったのに対して、10代では32.4%が重視したと回答している。若い人に受けている機能であり、これによって日本の若いユーザー層を獲得していきたい」とする。つまり、若年層の獲得がウォークマンのシェア拡大の切り札といえる。
果たして、ソニーは、新たなウォークマンでどこまでシェアを拡大できるのか。この年末商戦の動きが注目される。