Guest 02 橋本麻里


1972年神奈川県生まれ。国際基督教大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動を始める。美術、デザイン、文学などに関する幅広い知識を備え、『BRUTUS』、『和樂』、『芸術新潮』などの雑誌に執筆。明治学院大学非常勤講師(日本美術史)、高校美術教科書(日本文教出版)の編集・執筆も行う
ツイッターのアカウントは @hashimoto_tokyo


ツイッターで言葉を発する


橋本「小説家の方々も、どんどんツイッターを始めています。なかでも、もっとも活発につぶやいているのが高橋源一郎氏。どういうところが魅力なんですか?」

高橋「まったく関係ない人たちが、それぞれ勝手につぶやいているだけですよね。これって小説と似ているなと思ったんですよ。たしか、奥泉光さんも、同じようなことを言っていました」

橋本「小説に似ているというのは?」

高橋「小説って、いろんな登場人物が出てくるでしょう? けれども、お互い、そんなに関係なく、勝手に動いている。関わる面白さもあるけれど、関わらない面白さというものもある。ツイッターは、小説のそういう部分に、とてもよく似ている。さらに、関係のない人同士が、何かの偶然でシンクロしてしまう。そういう面白さもある。小説に似ているだけじゃなくて、『これって社会そのものだよな』と感じることも多いし」

橋本「ホームページやブログとの違いはありますか?」

高橋「ホームページの更新は苦痛なんだよね(笑)。だから放置したままになっているんだけど。ぼくの印象では、ホームページは店のようなもの。お客さんに入ってもらわないといけない。客の立場からすると、気軽に立ち寄れないということでもある。対して、ツイッターは公道。いろんな人たちが、てんでばらばらにつぶやいているだけ。流し読みできるというのが、いちばんの魅力じゃないかな」

橋本「140字という文字数だと、結局、つぶやきに終始してしまい、まとまった考えが伝えづらいという指摘もありますが」

高橋「うん、それで"路上ライブ"を始めてみたんだよ。『悪と闘う』の刊行に合わせたパブリシティという意味合いも大きかったんだけど、それだけだと面白くない。だから、タダで読めるけれども、原稿よりクオリティの高いものを、ということは、強く意識していました。それから、下書きはせず、即興で書いていくということも、自分の中のルールとして設定していましたね」

橋本「反響、大きかったですよね」

高橋「『これ、本にまとめてください』という反応があったんだけど、でも、たぶんこれって、ツイッターならではの面白さだよね。ぼく自身の言葉もあれば、いろんなところからの引用もある。たとえば、誰かの詩をぶつ切りにして、放流してみたり。つまり、誰の言葉かわからないまま、断片が漂っている。ある意味、言葉のあり方の理想型かもしれない」