「2年縛り契約で端末を安く提供してユーザーを囲い込む」といった手法が米国の携帯ビジネスで長らく主流を占めていたが、最近になり解約のペナルティがないプリペイド型の契約プランが多数登場してきている。先日はWiMAXのプリペイド契約プラン登場が話題になったが、こんどのは最新端末も利用できるスマートフォン向けのプリペイド契約プランだ。

ケースバイケースだが、必要なときだけ契約してサービスを利用できるプリペイド方式は非常に便利だ。前述のように途中解約によるペナルティがないだけでなく、短期出張や留学、旅行などで現地へとやってきた人が、手軽に携帯電話を利用するための手段となる。こうした人々にとっては2年契約が負担になるだけでなく、購入の際の在住証明書提示の問題もある(米国ではポストペイド契約に社会保障番号(SSN)が必須)。一方でプリペイド方式を利用する場合の問題は、AndroidやBlackBerryなど、最新型のスマートフォンや高機能電話を選択できず、音声/SMSのみといった旧世代端末や単機能端末がほとんどの場合で選択肢になってしまうことだ。確かに慣れない土地での音声通話機能自体は便利なものだが、地図表示やWebアクセス、メールなど、もう少しいろいろ活用したいという場面はあるはず。

そこで登場するのが今回の米Verizon Wirelessのスマートフォン用通信プランだ。BlackBerry Bold/Stormといった上位機種だけでなく、Palm Pre/Pixi、Droid X/2 by Motorola、Droid Eris/Incredibleなど、同社主力のスマートフォンが一通りカバーされている。このほか、マルチメディアフォンというカテゴリの高機能携帯も何機種かラインナップされており、これらを月額30ドルのデータ通信無制限で利用できる。また後者のマルチメディアフォンの場合、月額10ドルの基本料金に対し、25MB上限を超えたデータ通信で1MBあたり20セントの追加料金が発生する安価なプランも選択可能だ。機種ラインナップの詳細はVerizon Wirelessのプレスリリースを参照のこと。またデータ通信以外の通話プラン料金については同社プリペイド契約プランページを参照してほしい。

現状で、スマートフォンまで包含するプリペイドプランを用意しているキャリアは少ない。米国でいえば、Sprint Nextel傘下のプリペイド専業事業者Virgin Mobile USAがBlackBerry Curveのラインナップを持っている程度だ。Virgin Mobileは最近になり「Beyond Talk Plan」というサービスプランを発表している。音声通話だけでなく、Webアクセスやショートメッセージなども包含した価格プランを用意しているのが特徴で、BlackBerryの場合は指定したプランに対してさらに月額10ドルを追加することで利用可能になる。Virgin Mobileは先日、PC用の定額データ通信プランを発表したばかりだが、旅行者にとっては非常に使いやすい事業者だといえる。冒頭で登場したWiMAXサービスのClearwireもSpringグループの一部であり、Sprintは戦略的にプリペイド契約プランを強化していることがうかがえる。Boy Genius Reportの今年5月のレポートによれば、Springのプリペイド部門CEOのDan Schulman氏が「2010年に新規契約者の7割は長期契約を必要としない(つまりプリペイド方式の)ケースとなるだろう」とコメントしていたという。

とはいえ、プリペイド方式ならではの難点もある。まず複数年契約がないことで端末割引が利かないため、端末購入が割高になること。そしてVerizonとVirgin(Sprint)ともにCDMA方式のため、SIMカード入れ替えなどの業が使えないことが挙げられる。米AT&TもiPad 3G発売時にプリペイド用のデータ通信プランを発表したが、事実上iPad専用であり、SIMカードとマイクロSIMのサイズ上の互換性の問題から、一般には浸透していない。だがもし今後プリペイドでのデータ通信利用が進み、スマートフォンなど最新ラインナップにもこうした契約プランが適用されるようになれば、利用者、特にわれわれ海外からの旅行者にとっては非常に便利な利用環境が整備されるだろう。