今まで誰もやらなかった表現がやりたかった

――板野サーカスによって、乱れながら飛行するミサイルや、被写体に対して遅れたりブレたりしつつトレースするリアルなカメラの動きなど、それまでのアニメの文法にはなかった演出がスタンダードになりました。ご自身では、その部分をどう感じているのでしょうか?

板野サーカスのカメラの動きを、監督自らの手振りで解説

板野「当時は、それまでのアニメの決まりごとが嫌で自分なりの作画をしていました。それを担当演出に認めてもらえなかったのですが、『ガンダム』の時に富野監督に認めていただけました。それがきっかけで、自分独自の作画や演出ができるようになったんです。ドラマだけでなく、カメラワークでもメカの描写でも、今まで誰もやってこなかったようなことを、やりたかったんですよね」

――板野さんには『エンゼルコップ』のような傑作もあります。20年前の作品なのですが、東京を舞台にテロリストと特殊公安が暗闘するというハードな設定で、美少女キャラも出てこなくて主役陣は中年男性ばかり……。アクションは全編「板野サーカス」という凄い作品でした。あの作品などは、現在、実写化したら最高だと思うのですが。

板野「そうですね。あれは早過ぎましたね。いつも僕は早過ぎるんですよ(笑)」

――板野監督は今後、どんな作品を作っていきたいのでしょうか?

板野「フル3Dで立体視のテレビシリーズをワンクールでいいからやってみたいですね。背景3Dでキャラクター2Dという日本に多いスタイルでなく、完全に3Dで描きたいんです。家族みんなで、劇場ではなく3Dテレビで観れるような作品を作りたいですね」

――板野監督は平成『ウルトラマン』シリーズなどの実写特撮作品にも参加されていますよね。

板野「あれは、『ジャパニメーションの演出を日本の特撮に持ち込みたい』と依頼されて好きにやらせていただきました。トラディショナルなウルトラマンの飛び方から何から、僕が変えてしまいました。ウルトラマンやメカの飛び方に関しては、もう操演では出来ないというレベルまで進化させたと自負しています」

――やはり実写作品へも興味はあるのですか?

板野「大いにありますね。もし『第9地区』の続編が制作されて、オファーがあったとしたら、日本から特撮で参加したいと本気で思っていますよ」

第9地区 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) ブラスレイター

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発売元 ゴンゾ 販売元 東映/東映ビデオ
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インタビュー撮影:石井健