デル グローバルSMB本部 エンタープライズ テクノロジスト 桂島航氏

SSDはHDDに比べて、耐衝撃性やデータ転送速度などにおいてすぐれていると言われているが、容量当たりの価格が高いことなどから、企業ではそれほど導入が進んでいない。しかし、SSDに関する技術の進化は著しく、企業利用を後押しする技術が登場しているという。今回、デルでエバンジェリストとして企業向けストレージ製品の啓蒙活動を担当する桂島航氏に、企業向けSSDについて話を聞いた。

同氏はまずSSDとHDDの比較を行った。一般に、SSDはHDDよりも容量当たりの価格が高いと言われているが、IOPS当たりで見ると「SSDはHDDの10分の1程度」と同氏。3.5インチで容量300GBのSASは価格が3万5,000円、1GB当たりの価格が117円、IOPS当たりの価格が150円であるのに対し、2.5インチで容量5OGBのSATA SLCのSDDは価格が10万8,000円、1GB当たりの価格が2,160円、IOPS当たりの価格が16.7円だという。

「HDDの場合、"容量がすべて使われているか"という話がある。また、HDDの数は性能で決まるケースが多いので、IOPSで見ることが大切だ」

同氏はTCOを比較するため、SNIAの検証結果を示した。この検証によると、ドライブにかかるコストはどうしてもSSDが高くなりがちだが、消費電力はHDDが2万1,924であるのに対し、SSDは1,742ドルとケタ違いで少ない。また、「SSDはHDDよりもディスクアレイが少なくて済むので、サーバの台数を減らせる」と同氏。

SSDとHDDのTCOの比較

こうした状況を踏まえ、企業におけるSSDの導入を後押しする技術に関する説明が行われた。同氏は、企業でのSSDを後押しするポイントとして、「信頼性向上」「性能向上」「導入コスト削減」という3つのポイントを挙げた。

信頼性を向上する技術には、「ウェアレベリング」と「オーバープロビジョニング」がある。ウェアレベリングとは、書換え回数が少ないブロックへ優先的に書き込んでいく手法だ。この手法には、動的部分のみを用いて更新回数を平準化する「ダイナミック・ウェアレベリング」と静的部分も含めて更新回数を標準化する「スタティック・ウェアレベリング」がある。

ITでは一般にスタティック(静的)よりもダイナミック(動的)な技術のほうがすぐれている場合が多いが、ウェアレベリングではディスクの信頼性を高めるという点でスタティックのほうがすぐれているという。

ウェアレベリングの仕組み

オーバープロビジョニングとは、予備領域を多く持つことでガベジコレクションの効率を高める技術で、企業向けSSDだと20%を超える予備領域を持っている。なかには、予備領域のサイズを変更することで性能向上を図る製品もあるという。

次に、性能を向上する技術として、「PCIeインタフェース接続」と「並列アクセス」が紹介された。PCIe接続はバスに直接挿すことで性能を高めることが可能だ。同社はPCIe接続の「Fusion-ioioDrive160GB」の提供を開始しているが、同製品とSATA SLC SSD 50/100GBを比較すると、読み込みのスループットで5倍、IOPSで20倍となっているほか、レイテンシーに大きな差がある。

SATA接続のSSDとPCIe接続のSSDの比較

しかし同氏は、筐体の前面からアクセスできてホットスワップできるHDDに対し、筐体のカバーを開けないとメンテナンスできないPCIeは保守性では劣っていると指摘した。そのほか、SSDには「RAIDコントローラに接続できない」、「スロット数に限界があるため、多数は搭載できない」、「専用のデバイスドライバが必要である」といったデメリットがあるという。

「並列アクセス」を実現する技術とは、フラッシュメモリ単体でのバンド幅には限界があるため、多数のフラッシュメモリに対して並列にアクセスさせることでバンド幅を拡張するというものだ。ただ、この技術は条件で性能が変化するため、比較が困難だ。

最後に、SSDの普及において最も重要と言える導入コスト削減に寄与する技術として、「AutoTiering」が紹介された。この技術は、SSDとHDDをハイブリッドにして上位から透過的に使わせるというもので、SSDの容量が少なくて済むためSSDの採用を促進すると見られているという。

現在、各社がこの技術に取り組んでおり、さまざまな手法がある。SSDをキャッシュとして利用する手法には、「Filesystem Cache」、「Disk-array Cache」、「Add-on to RAID Card」、「SAN Cache Appliance」がある。また、自動でマイグレーションを行う階層化ストレージを実現する手法には、「Integrated Volume」、「File level migration」、「Volume level migration」がある。

例えば、同社のEqualLogic「XVSシリーズ」はIntegrated VolumeによってAuto-Tiering機能を提供する。同製品では、SSDはライトキャッシュを行い、サブボリューム単位でデータを移動する。

同氏は、SSDはHDDを完全に置き換えることはないだろうが、SSDと大容量のHDDを組み合わせて使う時代が来ることが予想されると述べた。