ロボット結婚式を終えて - インタラクションが生み出す親近感
式の後には、報道陣に対し、新郎新婦のお2人への質疑応答の時間が設けられた。
新郎の柴田智広さんは、国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)情報科学研究科 情報生命科学専攻 論理生命学講座 の准教授を務める工学博士で、知覚情報処理・知能ロボティクス研究が専門。新婦の聡子さんはココロ 営業部 RT営業課の主任として広報を担当されており、柴田さんとはいわばお得意先として知り合ったのだとか。
I-FAIRYに人前式の立会人代表をつとめてもらうというアイディアは聡子さんの発案で、「ロボットがもっと人々の生活に溶け込んだイメージ」を表現したい、と考えてのことだったそうだ。最初は柴田さんも驚いたが、世界初ということで一生の記念になる式になったと言う。2人ともロボット関係のお仕事、まさにロボットが結んだ縁ということで両家のご家族の方も理解があり大賛成だったとか。
聡子さんは「ロボット業界の人だけでなく一般の人たちにもロボットを身近に感じてもらえればと思いました。こうしたシーンで活用することで、友達感覚のロボットがもっと増えていけば楽しいと思います。」と語った。
現在も聡子さんは日常生活で掃除ロボットの「ルンバ」を使っているそうだが、今後I-FAIRYのようなロボットが家庭に入る未来が来るか、という質問に対しては、柴田さんが「例えば、犬が家にいたりすると、それだけでコミュニケーションが発生しますよね。ロボットも、すごく高度な知能を持っていなくても、家の中で動き回っていて時々反応してくれるだけでも、いろいろなコミュニケーションが発生して楽しいのではないかと思います」と回答。I-FAIRYの豊かな表現力を評価し、より賢く、自律移動の機能などを持たせていけば、ルンバのように普及する近未来もあるのでは、とした。
今回I-FAIRYは立会人としてのプログラムに従って動いていたが、そこにハートを感じることができたか、という質問に対しては「おっしゃる通り現在はプログラム通りなんですが、リハーサルの体験だけでも楽しかったですね。実際は動かしている方(モーションのプログラマ)とインタラクションをする訳ですが、その場でどんどんポーズを変えてもらったりする内に、もっとロボットにコミュニケーションして欲しくなる。そこに心があるかと言われると微妙なところですが(笑)、楽しかったのは間違いない」と回答。リハーサルでの試行錯誤で希望のモーションをするようになっていったI-FAIRYとのコミュニケーションを通じて、お2人とも非常に親近感を感じるようになったそうだ。
また、柴田さんは「今はまだプログラムで行われている動作も研究レベルではどんどん知能化という方向に進んでいる」と指摘、インタラクションのリアルタイム化、高度化によって、よりロボットに「心」を感じられるようになるだろうということを示唆した。
かくして、「世界初のロボット結婚式」での大役を無事に果たしたI-FAIRY。前述のように本来は案内ロボットとしての活躍が想定されており、特にウェディングプランなどを設けている訳ではないが、レンタルの要望があればココロまで問い合わせて欲しいとのこと。費用については応相談だが、ベーシックモデル一式の購入価格は630万円となっており、この場合は購入後の演出変更費用も含まれる。また、追加予算次第で外装のカスタマイズにも応じるそうだ。
なお、この「ロボット結婚式」のニュースは海外映像メディアでも報じられ、動画サイトにアップされた式の様子には多くのコメントが寄せられている。I-FAIRYのデザインについては「カワイイ!」「クール!」と好評だが、その一方で結婚の儀式を厳格に考える人からは「ロボットに結婚を誓うなんて!」という驚きの反応も多く見られ、国内外の宗教意識やロボットに対する考え方の違いを浮き彫りにする形にもなったようだ。読者の皆さんはどうお考えになられるだろうか。