魅惑のハゲマッチョ逆恨み伝説!?
ハイテンションな前置きが長くなったことをお詫びします。
さてさて、「GOW」はどんなゲームなのか知らない人も少なくないだろう。というのも「GOW」シリーズは、前述したように、SCEAで開発されたにもかかわらず、日本ではあくまでも洋ゲーの1つとしてカプコンが販売してきたこともあり、メガヒットというまでには及ばなかった。「GOW」シリーズは、どちらかといえばコアなゲームファン向けタイトルだったのだ。ただ、これが欧米では大ヒット。プレイステーション 2時代においては、SCE純正アクションゲームとしての金字塔を打ち立てたのであった。
日本と欧米間で温度差の激しい「GOW」シリーズ……ということで、まったく世界観を知らない人もいると思うので、本稿でも簡単に説明しておこうと思う。なお、より詳細なストーリー解説は、筆者の執筆したPSP版『GOW』のレビューに記しているのでそちらも参照してほしい。
「GOW」シリーズは、ギリシャ神話の世界観が元になっていて、神々は荒々しく、そして人間も非常に欲深い黎明の時代を舞台としている。主人公を務めるクレイトスはスパルタ人の戦士。スパルタは紀元前にギリシアのペロポネソス半島に実在した都市国家で、近年では、大ヒットアクション映画『300』(2007、アメリカ)でも描かれたこともあるので、耳にしたことくらいはあるかもしれない。
クレイトスは一騎当千のスパルタ軍戦士だが、とある戦争で絶体絶命の窮地に追い込まれてしまう。無敵の戦士と崇められてきたクレイトスも、このときばかりは神頼みで勝利を懇願する。神々の僕となることを条件に、戦神アレスは、クレイトスに奇跡の神通力を与え、この力を使ったクレイトスは辛くもその戦争に勝利。ただし、神々は、このときに結んだ契約にクレイトスが背かぬように追い詰めるため、自分の妻子を自ら殺めるようにクレイトスを謀略に掛ける。
自らの意志に反して妻子殺しを果たしてしまったクレイトスは狂気と悪夢に苛まれるが、その神通力はさらに増すこととなり、神々への叛旗の機会をうかがうのだった……。
『GOWゼロ』の異名をとるPSP版『GOW』は、戦争で窮地に追い込まれたクレイトスが神々との契約を交わした直後が描かれており、『GOW1』ではムービーで軽く描かれていただけの「神々への謀反」の動機が身にしみて分かるストーリーとなっている。PSP版からのプレイを勧める理由はここにある。
時系列的にはPSP版の直後になる『GOW1』では、クレイトスに妻子殺しを仕向けた戦神アレスを倒すまでの旅路が描かれる。『GOW2』では戦神アレスを倒したクレイトス自身が戦神となるが、根底に神々を憎む心を持つクレイトスは、その絶大なる力の矛先を他の神々に向けるようになる。これをいち早く察知した全能の神ゼウスはクレイトスを神々の世界オリュンポスから追放する。
神々に騙され、神々に裏切られたクレイトスは、その怒りを力に変え、すべての神々を殲滅することを誓う。クレイトスは『GOW2』の旅路の中で、かつて神々と対等に戦いながらも敗れ、地獄へと追放され虐げられてきた巨人タイタン族と出会い、彼らの力を神殺しに利用しようと企てるのであった。
なんだか、ストーリーをまとめて振り返ると、「身勝手な願いをしたクレイトスの逆恨みストーリー」という感じで、どっちが悪役だか分からないのだが、ある意味、クレイトスは、欲望に忠実な人間の本性の塊のような存在であり、"一周回って"共感してしまうような、未だかつてないゲームヒーロー像として設定されている。
さて、ストーリー展開としてはPSP版『GOW』と『GOW1』はセットで一作分という感じで、『GOW1』のラストで"ひとまず"のストーリーの決着を見ていたのに対し、『GOW2』では、"2"でありながらも、"神殺しの旅"という新たな伝説がスタートしたという様相で、『GOW2』単体では未完という感じで終わっていた。
今作『GOW3』の最初のシーンで、神々と巨人タイタン族とが全面戦争を行っているような唐突な始まりは、こうした流れが直前にあったためなのだ。