価格とポジショニング

ところで価格とポジショニングについて。この表は先のニュース記事にも含まれていたものだが、かなり恣意的な価格である。今回のAMDのメッセージは"Remove 4P Tax"で、要するに従来のOpteron 2000シリーズの価格帯で4P構成が可能なプロセッサを提供する、というものである(Photo10)。

Photo09: ちなみにEEグレード(超省電力:従来だとACP 40W枠)については、Opteron 6000シリーズで提供の予定はないとの事。

Photo10: Opteron 4000シリーズは要するにPhenom IIと同じものだが、トップエンドでも$455だから、個人で2P構成が現実的に可能な枠であるし、Opteron 6000も一番安い6128が$266だから、これも個人で買える金額である。もうそこまでメインストリームサーバの構成価格が落ちてきた、ということになる。

この目的は明確である。一部のハイエンド(専らHPC向け)を除くと、Opteronはまだ4P以上のマーケットをそれほど取れていない。結果、AMDの売り上げに占める4Pマーケットの割合は非常に小さい(以前は10%だが、最近は4%)といった数字になるわけだ。従来このマーケットは利幅を大きく取れる貴重なもので、だからこそAMDもOpteron 8000シリーズをわざわざ用意したわけだが、「売れれば利益が大きいが、売れなかったら意味が無い」という事で、利幅を減らしてでもマーケットシェアを取る方向に積極的に転換したものと考えていいだろう。

ちなみに「そうは言っても2Pと4Pではボードのつくりが全く異なるし、電源やメモリなどの構成パーツも変わってくるから、それなりに価格差はあるのでは?」とは思うのだが、日本AMDの宮本啓志社長(Photo11)によれば「ボードそのものの価格差は恐らく$150程度だろう」との事。勿論ボード以外のコンポーネントの価格差も当然あるが、「かつてはCPUそのものが高かったから、その価格を正当化するためにも色々な付加価値をつけることになり、これが更に価格を引き上げていた。今度は価格そのものがずっと下がったので、従来よりも遥かに敷居が低くなった」との事。何の敷居が低くなったか、というと「4P構成のマシンに1P/2Pのみを装着して出荷、後からアップグレードパスとして追加のCPUやメモリを販売する」という売り方らしい。かつては4P用のCPUの価格が馬鹿高く、2P分のCPUの価格で2Pサーバが3台位買えてしまったりしたので、現実問題としてこうしたアップグレードパスは存在しないも同然だったが、これでまた様子が変わってくるのかもしれない(Photo12,13)。

Photo11: 今年1月に日本AMD社長に就任した宮本啓志氏。前職はDELLでソリューション・イノベーションマーケティング本部長を務めていた。

Photo12: 会場に参考展示されていたDELLの対応サーバー。まだ試作機なのだそうで、型番とかは正しくないらしい。

Photo13: ヒートシンク部のアップ。横長のCPUパッケージにあわせて、ヒートシンクもやけに横長に。