Appleが申請した、TVドラマなど動画コンテンツの再生と広告挿入に関する新特許について、Patently Appleが解説を行っている。メディアと広告は切っても切り離せない関係にあるが、これをどのようにユーザーに見せ、かつ広告主やコンテンツ提供者らが納得する形でフィードバックを送るかがここには示されている。

同件に関する解説はPatently Appleの記事「Apple's Power Advertising Patent May Stir the Crazies into a Frenzy」が詳しい。この特許は「SYSTEM AND METHOD FOR VIDEO INSERTION INTO MEDIA STREAM OR FILE」の名称で、申請番号「20100057576」として登録されている。

簡単にまとめると、例えばTVのエピソードが1つあったとして、これにどのように最新の広告を挿入しユーザーの再生デバイスに保存するか、また再生させるかという方法が記されている。視聴データなどの入手はコンテンツ事業者や広告主には非常に重要なものだが、オンライン/オフラインを問わず、これらデータをいかにユーザーの再生デバイスからフィードバックさせるかについても考慮されている。

TV事業者などが動画コンテンツの配信を行う際、本編のエピソードだけでなく、挿入すべき広告、そして広告を挿入するタイミングや種類を記したメタデータが一緒にユーザーの再生デバイスへと配信される。ここでいう再生デバイスとは、Macなど一般的なパソコン型のものだけでなく、Apple TVやiPhone、あるいはTVそのものなど、さまざまな形態が想定されている。これら機器でユーザーがエピソードを再生すると、メタデータに記されたタイミングで広告が割り込んで再生される。ちょうどTV広告と一緒だ。

この広告上映時間は「AD BREAK」と呼ばれ、1つまたは複数の広告が上映されることになる。そしてこのAD BREAKを通過すると、その直後の本編エピソードのブロックが次のAD BREAKまで「UNLOCKED 」(解錠)された状態になり、自由に再生できるようになる。つまり未再生状態のエピソードは「LOCKED」(施錠)の状態で保護されており、エピソードを先頭から順番に再生してAD BREAKを次々と通過することで解錠され、閲覧可能範囲が広がっていくというわけだ。

この特許で興味深い話題の1つが広告の更新方法だ。本編エピソードとともに配信される広告は、メタデータの中で「寿命」が設定されている。時期の外れた広告やキャンペーン期間を過ぎた広告では意味がないからだ。もしユーザーのデバイスに配信されたコンテンツが実際に再生されるまでに広告の賞味期限が過ぎてしまった場合、ユーザーのデバイスはバックグラウンドで最新の広告を取得すべく配信サーバに対して問い合わせを行うことになる。ストリーミングであれば毎回最新の広告を挿入することは比較的容易だが、いったんローカルストレージにストアする形態では広告の切り替えは難しい。この特許ではそのあたりをフォローする。

またこうした仕組みが存在するもう1つがオフラインで再生を行うデバイスの存在だ。例えば標準のiPodではネットワーク通信機能は持っておらず、コンテンツの転送手段はMacやPCにつないだときのみとなる。そこでiPod内に保存されている動画コンテンツの広告が期限切れとなってしまった場合、PCと同期したタイミングで、通信機能を持つPCがその広告入れ替えを肩代わりする形となる。

また視聴データは逐次蓄積されており、PCなどのネットワーク接続機能を持つデバイスは配信サーバや事業者側のシステムに自動的にフィードバックを返すような仕組みが用意されることになる。だがネットワーク機能を持たない再生デバイスや、移動中での利用が前提のデバイスではデータを返す手段がない。そこで視聴データのログをキャッシュという形で一時的に保存し、PCなどのオンラインデバイスと同期したタイミングでフィードバック送信する形となる(あるいはオフライン状態のデバイスがオンラインになった状態で直に通信する形も考えられるだろう)。このオンライン/オフラインの仕組みをうまくサポートしているのがこの特許の特徴だ。