なかなか踏み出せない第1歩を後押し

しかしながら、やはり本格的に定着化の取り組みを実施するには、効果への不安や予算の確保が難しい、という企業も少なくありません。そんな企業にも、まず一歩めを踏み出してもらうために、SAPでは「定着化課題のアセスメント」を実施しています。

参考までにその内容を簡単にご覧いただきましょう。

1.定着化アセスメントサービス

1~2週間という短い期間の中で、課題の整理、課題に関しての定量把握や要因分析、改善案の策定までを行います。あくまで簡易診断ですので、長期間にわたる業務パフォーマンス測定などの実施などは、アセスメントの対象範囲とはなりませんが、定着化専門のコンサルタントが導入企業の課題整理や、定量および定性分析を行うことにより、ざっくりとした進むべき方向性を捉えてもらえます。

2.定着化アセスメントサービス実施事例

定着化アセスメントサービスを行った結果、どのような課題が洗い出されたかの事例を見てみましょう。

ここでは3社の例をご紹介しますが、いずれの会社も自社での課題解決に行き詰まり、先へ進むことができないでいました。

図3: 定着化アセスメントサービス、3社の事例

想像し得る限りの施策を実施してきたが、サポートチームへの問合せが減らないというA社の場合、アセスメントでサポートチームの業務量や業務フロー、問合せ内容について調査したところ、下記の2点が明らかになりました。

  • 減らすべき問合せ量が正確に記録されていない
  • サポートチームが想定しているユーザー部門の役割と、ユーザー部門が想定している自部門の役割に乖離があり、本来各部門で処理される質問が、サポートチームへの問合せとなっていた

マニュアルのページ数が多くなっていることが、ユーザーによるシステム理解を妨げ、業務パフォーマンスを妨げていると考え、マニュアルのページ数を減らすことに注力したが効果の出なかったB社の場合、成果物であるマニュアルの調査や、ユーザーからの評価、マニュアル作成体制や手順についてのヒヤリングを実施することにより、下記の点が明らかになりました。

  • ユーザーの利用想定場面に合わせて、アクセスしやすく、理解しやすいマニュアルになっていない
  • 作成指針のないまま、担当者によってばらばらなマニュアルを作成

データの入力精度を上げるため、入力担当者の操作トレーニングを強化したが、大量のバックフラッシュエラーが解決できずにいたC社の場合、ユーザーロールごとの役割と必要知識、現状の課題を整理することにより、下記の点が明らかになりました。

  • 海外現地法人のマネジメント層が代替わりするうちに、システムの位置づけや全体像についての理解不足が起こり、本社への月次報告システムという誤解まで生んでいた

システムの定着化に成功したプロジェクトでは、定着化施策の企画段階から常にユーザー業務のパフォーマンスを多面的に分析されています。また本稼働後も継続してパフォーマンス状況のモニタリングを実施することにより、課題の早期発見および対策をしています。

業務パフォーマンスのモニタリングや定着化の取り組みを本稼働後に実施するのはパワーが掛かりますが、1人ひとりの業務パフォーマンスの向上が求められる今だからこそ、着手に踏み切る機会ではないでしょうか。

※ 本稿は、SAPジャパン発行の『SAP CERTIFICATION VOL.7』に掲載された特集『ユーザー定着化サービス』を一部加筆のうえ転載したものです。