シャープは、テレビ向けの次世代液晶パネルの中核技術として、「UV2A(ユーブイツーエー)」を発表。今年10月に稼動予定の堺工場で生産する液晶パネルに、この技術を全面的に導入する計画のほか、亀山第2工場で生産する液晶パネルにも、同技術を採用することを明らかにした。

今後、シャープが発売する液晶テレビに搭載するほか、外販するパネルも同技術のものへと移行。2010年度に生産される液晶パネルはほぼ全量が、新技術を採用したものになる。また、シャープと関連する海外の液晶パネル生産拠点でもこの技術を採用したパネルを生産する予定。

シャープ 代表取締役副社長 井淵良明氏

シャープの井淵良明 代表取締役副社長は、「UV2Aは、TFT液晶の歴史に残る、世界初の技術。そして、シャープの液晶がこれによって大きく変わる」と位置づけた。

同社では、これまでASV技術を採用。パネル内部にリブやスリットを配置する構造などにより、液晶分子の動きをきめ細かく制御し、高画質表示を実現してきた。だが、構造およびプロセスが複雑であること、高コストであること、開口率が低いなどの問題が出ていた。「今後、液晶パネルに高画質、省エネ、大画面化、低価格化の要求がさらに高まるのに伴い、これまでとは異なる技術が求められていた」(井淵副社長)という。

シャープが開発したUV2Aは、紫外線によって反応する特殊な材料を配向膜として採用。照射方向によって液晶分子の並びを、高精度に制御する光配向技術で、独自の材料開発や照射装置、プロセス技術の開発によって実現した。

UV2A技術の概要

シャープ 研究開発本部長 常務執行役員 水嶋繁光氏

シャープの研究開発本部長の水嶋繁光常務執行役員は、「シャープの技術者が、液晶分子の気持ちになって開発した技術。30年間に渡る長年の夢がかなったもの」と前置きし、「わずか2ナノの液晶分子を、ピコスケールの精度で、任意の傾斜制御を安定した形で行える技術。いわばピコテクノロジーによって実現している。微小なパターンニングが容易であり、パターンにも制約がないという、従来の技術的課題を解決する、現在考えうる理想的な配向技術」とした。

バックライトからの光モレがなく、液晶パネルの開口率も高いため、高効率にバックライト光を活用。深い黒色の表示が可能で、斜め方向からも黒が引き締まって見えるのが特徴だ。

また、次世代テレビとして期待されている高精細4K2Kディスプレイや、3Dテレビにも適しているという。

「従来パネルに比べて、開口率は20%以上上昇している。これは、そのまま20%の環境性能の向上に直結する。また、従来比1.6倍となる5000:1以上の高コントラスト、従来比2倍となる4msの応答速度を実現できる。さらに、リブレス、スリットレスによるシンプルな画素構造とすることで、高い生産性とコストダウンにもつなげることができる」としている。

リブ作製やスリット作製に伴う、レジスト塗布、露光、現像という工程がなくなるために生産プロセスが大幅に簡略化できるようになる。

UV2Aパネルと既存のパネルでは黒の再現性が大きく異なる

リブ/スリットがないUV2Aは開口率が高い

光もれがないので黒が締まって見える

UV2Aパネルを搭載したテレビにはロゴを貼付することも検討している

UV2A技術を採用した液晶パネルの特徴

生産プロセスでも大幅に効率化が図られている

同社では、具体的なコストダウン効果についてはコメントを避けたほか、新技術による液晶パネルを採用した液晶テレビの投入についても、「商品化のスケジュールは別途発表する」(井淵副社長)と明言を避けた。

提携関係にある東芝では、年内にはCELLテレビの発売を予定しているが、同社では、「CELLテレビに採用する液晶パネルはUV2Aではない」とした。