ロケットはどうして飛ぶのか

傘袋ロケットの実験が終わっても、まだまだ実験は続く。次に飛び出てきたのはペットボトルを使ったロケット。とはいっても、一般的な水と圧縮空気を入れて、一気に弁を開放させる事で、水の反作用によって飛行する、といったものではなく、ちゃんとした化学反応を用いた代物。いわゆる液体燃料エンジンの説明のために用いられたもので、将来的なエンジンとして原子力エンジンや、レーザーロケットエンジンなども検討されていることが説明された。

ロケットを飛ばす前に、液体燃料エンジンの燃料である水素と酸素の燃焼の実験。袋の中に水素を充填させ、そこに酸素を注入、そして火をつけると……、という理科の実験でもやるものだが、充填量が今回は多めのため、爆発音も相当なものとなった。ちなみに、実際のロケットでは1秒間にドラム缶1個分の水素と酸素の燃料が行われていることも説明された。

ビニール袋に水素と酸素を詰めた状態での燃焼実験

動画
酸素と水素の詰まった袋に火をつけると…(wmv形式 736KB 6秒)

と、相当量の水素と酸素の燃料はかなり危険が付きまとうということで、今回のペットボトルでは、気化したエタノールを充満させた中に酸素を投入し、燃焼させたものを中村氏が実現してみせた。

ペットボトルロケットに点火する直前の様子(この後、目で追えない速度で手前に飛んでいった)

宇宙と地球では何が違うのか

人類の宇宙への挑戦、そして宇宙へ行くための手段であるロケットと来た次の中村氏の子供達への質問は、「なぜ、地球にだけ生物が存在しているのか」というもの。金星は地球とほぼ同サイズだが、太陽に近いために地球以上に高温となる。また、火星は地球より遠いため低温となる。

金星と火星の温度は当たり前と言えば、当たり前なのだが、地球も実は地表温度は条件によっては-18℃程度となるという。それを防いでいるのが大気の存在である。地球の重力の影響により大気は、宇宙に放出されずに地表近辺に存在しているわけだが、その大気の中でもポイントは酸素の存在ではなく、「温室効果ガス」であるという。

昨今の地球温暖化の原因として温室効果ガスは悪者かのように扱われているが、これが微塵もなければ、熱を封じ込めておけないので、地表温度は下がることとなる。問題なのは、温暖化ガスが産業革命以降、急激に増え続けてきたことであり、JAXAではこうした温室効果ガスを観測するために、2009年1月23日に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」を打ち上げた。ちなみに地球の大気の厚さは、先述の20cm球で考えると、ラップ1枚分にしかすぎない。

この大気が、地球の重力によって生じるのが大気圧である。そこで中村氏が実演して見せたのが、「逆さコップの実験」の巨大版。一般的に同実験はコップにフタを乗せてひっくり返してもフタが落下しないというものだが、今回は2リットルの水入れに満々と水を注ぎフタを置いてそれを引っくり返すというもの。

満々と水を入れた容器にフタを被せて、それをひっくり返して、手を離すと…

さすがにこれを全員でやるわけにもいかないので、これは見せるだけだが、大気圧を感じる実験として、アルミ製の空き缶を密閉状態にして真空引きを行うというものが行われた。また、ガラスビンの中に風船と水を入れて、真空引きを行うとどうなるのか、という実演とともに、子供達も実際にしぼんだ風船を詰めたビンを真空引きする実験に挑んだ。

真空引きのための道具一式

アルミ缶を密閉して空気を抜いていった状態

ガラスの筒に封じられた風船の周りから空気を抜いていった状態