次世代品からAristosのチップを搭載

また、プロダクトファミリも大きく変わっていくことが予定されている。直近では、ゼロメンテナンスとパフォーマンスの向上を図った新製品の開発が進められており、6月中にも正式発表される予定となっている。撮影などは一切不許可だったため、文字のみでの説明となるが、RAIDカードに、NAND型フラッシュメモリを搭載したモジュールと、大容量キャパシタを組み合わせたもので、ライトキャッシュを活用するときに従来使用していたリチウムイオン電池を置き換えることで、ゼロメンテナンスを実現するという。

つまり、リチウムイオン電池は1~2年でバッテリの交換が必要となる。しかし、1Uラックが大量に刺さっているサーバルームなどを思い浮かべてもらえれば、その作業の面倒さは想像に難くないだろう。それをキャパシタとフラッシュメモリを活用することで、キャパシタに貯めた電気でフラッシュメモリにデータを書き込み、データの保護を行うことが可能となるわけだ。5月29日にCypress Semiconductorが似たような製品をモジュールとして組み込み向けに発表していたが、考え方は非常に近いものがあるといえる。

AdaptecのRAIDカード「Adaptec RAID 5445」(これはSeries5だが、新製品はこのボードのシール部の上付近にコネクタが配置され、NAND型フラッシュメモリを搭載したモジュールと大容量キャパシタが接続される形となる)

一方のパフォーマンスの向上に関しては、SSDへのより深い対応を進めるとのこと。ファームウェアのアップデートを行うことで、SSD用に新しいコードでプログラミングできるようになり、SSDの性能を引き出すことができるようになるという。こちらは、そろそろ顧客にサンプルを提供し、チェックを開始する計画だという。

ロードマップの説明を行うPeters氏(Nano SliceもSilver Sliceも着実に開発が進められているとのこと)

また2010年には待望のAristosの第4世代チップ「Nano Slice(開発コードネーム)」を搭載した次世代品2シリーズが予定されている。ロードマップとしては、2010年第2四半期に登場予定とのことで、SAS-2(6Gbps SAS)に対応する。片方は、「暗号化などのセキュリティ強化とキャパシティオプティマイゼーション機能を強化する。つまり、De-duplication(無駄なデータの重複を排除)技術により、ディスク容量をより効率よく活用できるようにする」とのことである。

さらに、2011年登場を計画しているのが、Aristosの第5世代品となる「Silver Slice(開発コードネーム)」を搭載した次々世代品。SAS-3(12Gbps)対応予定で、セキュリティ機能やDe-duplication技術なども搭載される計画となっている。「転送レートが高速になるにつれ、よりパワフルなプロセッサが求められるようになる。こうした要求に対し、自前でチップの開発ができれば、いつ対応したチップが供給されるようになるのか、といった不安を持つ必要なく、ロードマップを決定することができるようになる」とPeters氏はチップ開発能力を手に入れた意味を強調する。

まだまだRAIDとしてできることがある

Peters氏は、Adaptecはユニークな技術をRAID向けに多く持っていると語る。そのため、「ストレージとホストの間にいるという(Adaptecの)中間的なポジションだからこそ、暗号化やデータの整理などを手間をかけずに行うことができるソリューションを提示できる」とし、まだまだRAIDとしてできることが多く存在しており、ホスト側やストレージ側のチップを含めたソリューションよりも、まずはRAIDありきのビジネスを考えていくことが重要との考えを示す。

その戦略の中で重要となるのが、どうやって競争優位性を保つか、であるが、例えばSSDへの対応にしても「SSDのみに特化した対応は考えていない」という。なぜなら、まず第1に、SSDは高価であるためである。無論、MLCを使用した比較的安価なモデルも登場してきたが、信頼性などの面を考えればやはりSLCベースのSSDを使用せざるを得ない。その一方で、HDDは容量対コストが安い。そのため、HDDマーケットのすべてがSSDに置き換わるとは考えられないというのが同社の見方だ。ただし、「もしかすると、HDDとSSDを組み合わせたハイブリッドな使い方が一番の解になるのかもしれない」という。

また、パワーマネジメント機能なども競合は搭載しておらず、同社の特長の1つとなる。「こうしたRAID+αをやっていくことで、他社との差別化につながる。差別化が無ければ、RAIDカードのビジネスは難しい。だからこそ、AdaptecのRAIDカードは、ただのRAIDだと思わないでもらいたい」ということである。

ストレージとホストの間に立つことで、RAID+αの価値の提供が可能になるという

最後に、日本のカスタマやエンドユーザー向けに対するメッセージを聞くと、「なによりも"Adaptec is back"だ。すでに、我々の最近の取り組みにより、チャネルでは結果が出ている。業界トップの3wareが3位のLSIに買収されたのもそういうことだ。我々は今後もドンドン積極的にビジネスを進めていく。ただ、コンシューマ向けについては、製品の利益などを考えると差別化ができなければ、やらないとも言えないが、かなり難しいのが現状だ。まずはBtoBの分野で地歩を固めて存在感を高めていくつもりなので、期待してもらいたい」と、Adaptecが半導体メーカーの一端として復活したことを強調してくれた。