台湾では政府主導による国家全体の無線ブロードバンド化を目指したプロジェクト「M-Taiwan」を組織し、国を挙げてWiMAXの普及に取り組んでいる。M-Taiwanは、6月2日から6日まで開催されたWiMAX関連イベント「WiMAX Taipei 2009」でWiMAXを利用したさまざまな応用例を展示していた。

WiMAXを利用した様々な応用例

M-Taiwanブースのアプリケーション事例は安心がテーマの「WA!M-Security」、生活がテーマの「WA!M-Living」、効率がテーマの「WA!M-Commerce」、以上3つのテーマごとに実例デモが行われていた。ちなみに「WA!」とは「WiMAX Applications」の頭文字からとったものである。

M-Taiwanブース

WiMAXを利用したトラッキングシステムのデモ

WA!M-Securityのコーナーでは、車載型GPSモジュールにWiMAX端末を装着し、トラックなどの速度や位置をリアルタイムで送信することでさまざまな道路情報を収集するデモが行われていた。渋滞情報や運行状況などを監視できるほか、ビデオカメラを搭載すればストリーミング映像をWiMAX回線で送信し、実際の道路状況を確認するといった応用も可能になる。情報は運送会社が利用するだけではなく、警察が共有することでより詳細な道路交通情報を市民に提供することも可能になるだろうとのこと。現在高雄市で実証テストが行われている。

車載GPSの背面にUSBタイプのWiMAX端末を装着する

リアルタイムに収集されたデータは様々な用途に応用できる

生活に根付いたサービスのデモが行われていたWA!M-Livingのコーナーでは、遠隔地教育などの応用例が展示されていた。またモバイルWiMAX機器を搭載したワゴン車を所有する調査会社のデモでは、車内に調査アンケート用のPCを設置することでプライバシーを保ったまま市場調査を行っている応用例が展示されていた。消費者の意見を、映像を使ってその場で送信したり、集計データを即時にまとめることが可能だという。M-Taiwanでは、Lifelabと命名された同様のワゴン車は5台所有しており、WiMAXのサービスエリアで実際に利用されているとのこと。

台湾の調査会社、Trending Researchによる市場調査専用車。WiMAXユニットを搭載する

車内には2つの個室があり、プライバシーを保ちつつPCを使ったオンデマンドな調査も可能

実際に大手清涼飲料水メーカーの市場調査などにも使われたとのこと

WA!M-Commerceのコーナーは通信や放送系のデモが行われていた。WiMAX機器を搭載したTV中継車やイベント会場などの遠隔放送システムが実用化に向けテスト運用が行われているとのこと。WiMAXサービスの展開が広がれば台湾全土、都市部から山間部など、あらゆる場所からの放送が可能になるという。

WiMAX搭載のTV中継車

こちらは遠隔地からのリアルタイム中継のデモ

リアルタイムに電波強度を表示するフィールドテストアプリ

台湾の情報産業の開発強化を目的とする非政府組織「Institute for Information」は、WiMAXのテスト機器などの展示を行っていた。中でもフィールドテスト結果をリアルタイム表示できる「MAXism」は、WiMAX機器メーカーなどに有用なアプリケーションである。テストに利用できるWiMAX機器はbeceem製チップセットを搭載した端末。MAXismをインストールしたPCにWiMAX端末とGPSを接続するだけで利用できる。

このPCを搭載した自動車などで市街地を走行すると、WiMAXの電波強度が3G化されリアルタイムでGoogleアースの写真上にビジュアル化されていく。関連データも収集可能でその場での調整工事や後からの確認なども視覚的に行える。このMAXismはWiMAX端末メーカーなどのフィールドテスト作業軽減化のために開発されたものだという。

フィールドテストアプリケーション「MAXism」のデモ

グーグルアース上にリアルタイムで電波強度が表示されていく

WiMAXの売りはコストと速度とカバレッジ

M-TAiwanブースで展示されていたアプリケーションの多くは携帯電話のHSPA/3G回線を利用できるものも少なくない。ではWiMAXを利用するメリットはどこにあるのだろうか? 数値上の速度はWiMAXもHSPAも大きな差はないようだが、各ブースの担当者が話していたのは「速度とコストバランスはWiMAXに利点がある」という点だ。WiMAXはWi-Fi技術の応用でもあることから、関連メーカーの多い台湾企業などから今後安価な端末・機器が多数登場することが期待されているという。

また台湾の3Gの普及はまだ都市部などに限られているが、WiMAXは今年中に6社が全土で事業展開をする予定である。カバーエリアは3G/HSPAよりWiMAXのほうが先に広がると予想されており、台湾ではカバレッジの面でもWiMAXに優位性があるだろうという見方だ。