曽根氏は、国際会計基準を適用するメリットの1つである経営管理の高度化について、「財務諸表のカテゴリー表示や、マネジメントアプローチによるセグメント情報の表示など、財務諸表の表示にかかる基準が変わることで、企業は、意思決定に有益なより細かな財政状態、経営成績、キャッシュフローに関する情報などを得ることができる」とする。

これは、具体的には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書に相当する、財政状態計算書(Statement of financial position)、包括利益計算書(Statement of comprehensive income)、キャッシュフロー計算書(Statement of cash flow)の表示において、それぞれ、事業(Business)、財務(Financing)、法人所得税(Income Tax)、廃止事業(Discontinued Operations)といったカテゴリーを設けることを指す。また、キャッシュフロー計算書の表示方法については、国内の多くの企業が適用する間接法ではなく、直接法も検討されており、包括利益計算書との差分を説明する調整表の開示も要求されるという。

「国際会計基準は、財務諸表において、企業業績をこれまで以上に詳細に開示することを求めている。企業業績を見える化し、見えた業績を分析、将来のビジネスに生かすことが重要になる」

財務諸表の表示項目は変更され、より細かな開示が求められる

包括利益計算書との差分を説明する調整表の開示も要求される

課題としては、金融庁が提示している6つの課題(1. IFRSの内容、2. IFRSを適用する場合の言語、3. IFRSの設定におけるデュープロセスの確保、4. IFRSに対する実務の対応、教育・訓練、5. IFRSの設定やガバナンスへの我が国の関与の強化、6. XBRLのIFRSへの対応)の中でも、4.IFRSに対する実務の対応、教育・訓練で示されている作成者(企業)の作業負担が大きいだろうとする。具体的には、IFRS適用に伴う変更点整理や、連結・単体会計処理方針の設定、会計処理手続きの設定、人材育成・体制整備、システム整備など。米国大企業のケースでは、3200万ドルのコスト負担になるとの試算もあるという。

曽根氏は、対応の手順として、5つのフェーズ(調査・計画、設計、構築、移行、実施)に整理し、戦略、プロセス、人・組織、システムの側面から対策をとることを提案。J-SOX対応と同様、全社的な取り組みが求められることになる。

「2012年3月期からフェーズ5を終えた任意適用会社が増えてくるだろう。任意適用に対応する場合、準備期間を考えると、調査・計画については現在から開始しておくべき。また、強制適用時に対応する場合、コンバージェンスが進んでいるため任期適用をめざすよりも対応工数は少なくて済むと思われる。ただし、外部リソースの活用を考える場合は、人材確保ができるかどうかも懸念される。強制適用時に移行を考えている企業についても、はやめの準備をするにこしたことはない」

また、具体的なシステム対応としては、グループ共通システムの整備を提案。国際会計基準は連結財務諸表を対象にしているため、個別と連結で基準が別になる。その際に、例えば、エクセルを使っての会計基準組み替えやデータ収集を行っていては非効率になる。そこで、「勘定科目統一、2つの会計基準対応、連結財務諸表の自動生成という3要件を満たしたグループ共通システムが求められる」とした。