Virtex-6とSpartan-6
|
Photo13:Xilinx Senior Director, Product Marketing, Advanced Products GroupのCharles Tralka氏
|
さて、ここからは同社のCharles Tralka氏(Photo13)に代わって、具体的なVirtex-6とSpartan-6の詳細の話が始まった。
まず最初に、直近でXilinxがターゲットとしているアプリケーション領域が簡単に示された(Photo14)。このターゲットに対して、今回発表されたのはSpartan-6が2製品、Virtex-6が3製品となる(Photo15)。内部構造で言えば、Spartan-6はLXからパラレルI/Oを減らして、その分をPCI Expressに振ったという感じだが、Virtex-6は目的に応じて明確に内部構成を変えているのが判る(Photo16)。もう少し内部構造を見てみると、VirtexとSpartanは、規模こそ違うものの、それを除けば概ね同等の構造とされている(Photo17)。またトランシーバについては、従来のGTP/GTXに加え、新たに11.2GbpsのGTHトランシーバをサポートした(Photo18)。これらによって、広範なI/Fが提供されることになる(Photo19)。
|
|
|
Photo14:FPDの画像品質改善については後で実例も出てくるが、国内のあるベンダはSpartanをこの用途に利用しており、出荷個数は600万個にも及ぶとか。なるほど、このクラスだとこれまでならASIC/ASSPでコントローラを作りこんでしまう数量である
|
Photo15:Spartanは、今回は不揮発性の製品はラインナップされない。一方全製品DSP搭載であり、またSpartan-6 LXTはPCIExpressのEndpoint機能が搭載された。ロジックセル数で言えば、Spartan-3Aが最高でも約53Kなのに対しSpartan-6 LX/LXTは最大147Kまで増やされている。一方Virtexはより高速なトランシーバの搭載を始め、さらに機能が増やされている。ロジックセル数でも、Virtex-5 LXが最大でも331Kなのに対し、Virtex-6 LXTでは758Kと倍以上になっている
|
Photo16:Virtexは目的に応じてかなり差がある。一番バランスが取れているのがLXT、High-Speed Interconnectに特化したのがHXT、DSPとメモリを強化して、データ処理に特化したのがSXTといった形だ
|
|
|
|
Photo17:これは翌日のインタビューで出てきた話だが、以前はLUTがVirtexは6-input、Spartanは4-inputだったが、今回からどちらも6-inputになったとのこと。このため、IPなどはVirtexとSpartanで共通のものが使えるようになったとか。ただしプロセスは同一ではない
Photo19:GTPで遂にDisplayPortがサポートされることになったのはかなり大きなトピックではある。ただし、VirtexはともかくSpartan-6ではこれをDisplayPortに使うと、それでGTPを使い切ってしまうあたりがちょっと難点か。
|
Photo18:"11.4Gbps"は"11.2Gbps"の間違い。ところでSpartan-6 LXTに搭載されるものは、GTPがベース。このため、Gen2の5GT/secには対応せず、Gen1相当となる。ということは、USB 3.0には使えない事になる。このあたり、発表会の後で食い下がってみたものの、今のところSpartan-6にGen2相当のトランシーバ(というか、GTXトランシーバ)を組み込む予定は無いとのこと。ちょっと残念である
|
Photo19:GTP、GTX、GTHそれぞれのトランシーバでどういった通信ソリューションに対応するかを表した図(右側に行くほど、より高速なトランシーバを必要とするソリューションとなる)
|
次に消費電力であるが、そもそもプロセスの微細化により低電圧動作が可能になった上、電源電圧オプションが用意されたり、Clock GatingやHard Wiredなど消費電力を下げるオプションがいくつか用意され、これらを駆使することで従来製品に加えて最大65%の削減が可能としている(Photo20)。
|
Photo20:例えばSpartan-6 LXの場合、当初から1.2Vと1Vのオプションが用意される。またVirtex-6はLXT/SXT共に1Vと0.9Vが選択可能である
|
開発環境については、先ほどPhoto11でピラミッド構造が示されていたが、もう少し細かく説明がなされた。まず基本プラットフォーム(Photo21)では、基本的なものが提供される。従来Xilinxの場合、リファレンスボードとかIPなども、しばしば用途別にバラバラに提供されてきていたが、Virtex-6/Spartan-6ではこのあたりを共通化し、どんなドメイン/用途向けであっても、リファレンスデザインなどは共通化される事になった。
|
Photo21:この共通化は、Xilinxにとっても開発キット作成の手間を省く事に繋がるし、ユーザーにとっても低価格化が期待できるあたり、好ましいものと思える
|
ただそうなると、IPやソフトウェアはともかくハードウェアはどうなる? という話は出てくるが、今回からリファレンスデザインは共通のベースボード+特定用途向けメザニンカードの形で提供されるようにするとの事で(Photo22)、差異はこのメザニンカードで吸収するという事だそうだ。その差異を提供するのは、「ドメイン特化部分」ということになる(Photo23)。
|
|
Photo22:これは会場で動作デモを行ったSpartan-6のベースボード。黄色で囲まれた部分は、カメラI/FとDisplay I/Fを搭載したメザニンカードとなる
|
Photo23:ここではFPGAを「どういう使い方をするか」で分類する形になる
|
その先がマーケット特化部分ということになり、このあたりまでは標準ソリューションが提供される形だ(Photo24)。最後が顧客固有のデザイン(Photo25)ということで、市場特化部分までうまくIPやツール、ソフトウェアを入手できればクライアントはこの部分だけに開発を集中すれば良い事になる。これらの提供時期だが、2009年第2四半期から提供が始まり、特定市場向けに関しては2010年あたりから本格投入になる模様だ(Photo26)。
|
|
|
Photo24:例えばルータを作るとすると、ドメイン特化は「Connectivity」を選ぶ事になる。ただしルータといっても、それが「Wirelessルータ」なのか「有線ルータ」なのか、あるいはWiMAXとか3Gのフェムトセルかもしれないわけで、どういうマーケットに投入する製品かで搭載する機能が変わる事になる。この辺りが「市場特化部分」となる
|
Photo25:問題は、ドメイン特化部分や市場特化部分でどれだけのソフトウェアやIPが提供されるか、であろう
|
Photo26:ちなみに市場投入はSpartan-6の方が早く(Spartan-6 LXはすでに出荷が始まっているそうだ)、Virtex-6がやや後追いになるとの事
|
さて、ここからは具体的な利用例が幾つか示された。まず車載Infortainment Systemである。従来はSpartan-3に外付のImage Processorで構成されていた製品(Photo27)を、Spartan-6に置き換えたところ、Image ProcessorをSpartan-6に取り込むことに成功したという(Photo28)。この結果、EBOMを83ドルから41ドルに低減し、かつ消費電力も6.5Wから1.4Wに削減が可能になった(Photo29)。
|
|
|
Photo27:Spartan-3内部では、MicroBlazeが制御用に動き、これがHost(画面左のグリーンのブロック)と通信しながらさまざまなデバイスを制御していた。またImage ProcessorとはLVDS経由で通信していた
|
Photo28:これは単純な置き換えで、機能ブロックそのものは増えていない。が、Image Processorが行っていた作業をSpartan-6内に完全に取り込むことに成功した
|
Photo29:1チップ化により小型化も可能になるわけで、これもメリットの1つと言って良いだろう
|
次はFPDのコントローラで、従来は2つのFPGAを含む5チップ構成だった製品(Photo30)をSpartan-6で置き換えた例(Photo31)。消費電力の低減と信頼性向上、システムコスト低減に役立ったとしている。
|
|
Photo30:このケースでは発熱が問題だったそうで、コントローラ部の低消費電力化が主要な目的だった模様
|
Photo31:再利用可能なIPというのは、Xilinxが特定市場向けに提供するIP(LED DriverやImage Processing)、ASICで使われていたIP、および顧客が独自に持っていた画像改善回路のIPなどで、それらはすべて再利用されたとのこと
|
Virtexの事例では、3GPP-LTEの基地局向けに、従来Virtex-5を2つ使っていた構成(Photo32)を、Virtex-6では1つに集約できた(Photo33)とか、光ルータ(Photo34)でASICやMUXを置き換える事で7チップから4チップに集約した(Photo35)例、あるいはその他の用途に向けた実例が示された(Photo36)。
|
|
Photo32:Virtex-5では送受信を別々に分離して実装していた
|
Photo33:Virtex-6ではこれを集約することでチップ個数の削減と消費電力低減を可能にしている。ちなみにVirtex-5 SX50Tで52K、SX35Tで35KほどのLogic Cellであり、一方Virtex-6 LX130Tで128K、LX195Tで200Kとなるから、単純にLogic Cellの数だけで考えればLX195Tで4x4の実装が可能なのも当然であろう
|
|
|
Photo34:従来だとトランシーバが最大でも6.25GHzだったので、Optical Moduleとの間にMuxを入れて速度調整が必要で、これが余分に1チップ増やす理由にもなっていた
|
Photo35:すっきりした構成に
|
|
Photo36:このあたりの細かい説明はなく、軽く流した感じ。ただロジックセル数も大幅に増え、消費電力が大幅に下がったから、複雑な処理を行う目的であればVirtex-5よりも小さくまとめる事が可能であろう
|