診断基準の公表直後からさまざまな反応

北京軍区総病院は、2005年3月から青少年のためのネット中毒治療を開始。翌年3月には、中国初のネット中毒治療施設である「北京軍区総病院青少年心理成長基地」を設立した。

北京軍区総病院は、ネット中毒の診断基準について、「中国各地からきた3,000人を超えるネット中毒者のうち、代表的な症状を持つ1,300人を対象にした臨床診断、治療経験から作られたもの」と説明。この診断基準が国内外の専門家により、世界的にも先端水準と認められ、権威を持つ診断基準であると主張している。

ところが、この診断基準の公表直後から、中国国内で疑問、批判、懸念、支持などが噴出、いまだに衰える気配がない。2008年12月17日には、中国中央電視台(CCTV)第2チャンネルの人気番組「全球資訊榜(NEWS LIST)」が、この「診断基準」の是非を取り上げた。

最も疑問視されているのは、ネット中毒が、診断基準において「精神障害」のカテゴリに収められていることだ。

ある専門家は、中国には4,000万人の未成年ネット人口が存在し、うち10%がネット中毒少年とされることを踏まえ、「これらのネット中毒少年がネットの過度の利用によって一定の精神障害を起こす可能性は否定できないものの、これを一概に精神障害者と扱ってしまうのは危険」と指摘している。多くの学生、親、教師もまた、ネット中毒が精神障害に結びつけられたことに強く反発している。

こうした反発に対し、北京軍区総病院の陶氏は、「ネット中毒は精神障害の一種。ネット中毒者において、情緒、認知、行為などの面で、一定程度の異常がみられるのも事実。ネット中毒を精神障害に分類することは彼らに対する差別ではなく、ネット中毒者本人、親などに警鐘を鳴らす意味合いをもつ」と釈明している。

「毎日平均6時間以上」との診断基準に合理性はある?

前述のように、診断基準の中には、「学習と仕事以外の目的に、毎日のネット利用時間が平均で6時間あるいはそれ以上に達している」という条件がある。この「6時間基準」も、関心の的となっている。「毎日平均6時間」という条件づけのどこに、科学的な根拠があるのか。その理由を教えてくれと、あるネットユーザーは掲示板に書き込んだ。

これに対し陶氏は、「6時間はキーになる時間」と強調。「我々は4年の時間をかけ、3,000人のネット中毒者を調査した。その結果を基づき、時間基準を9.3時間±3.2時間に絞り、最終的に下限の6時間に決めた」として、「6時間診断基準」の科学的根拠を説明している。

さらに、「誰でもこの診断基準を使って自己診断可能で、6時間に近いならば、ネット中毒者の予備軍だ。一方、仕事のためであるなら、毎日のネット利用時間が10時間以上でもネット中毒とはいえない」と語っている。