携帯でのテレビ視聴の普及は道半ば

今年上半期、中国経済に陰りが見え始めた時、人々はこの「厳冬」が早く過ぎ行くことを待ち望んでいた。だが人々の期待に反し、「金融危機」というより厳しい大寒波が襲ってきた。引き続き携帯電話市場の状況を見てみよう。

今年上半期のトレンドからみると、携帯電話の応用機能にはさほど変化はなく、GPS機能付き携帯電話の量産もできなかった。そのため、各キャリアの増益には結び付かなかった。中国携帯最大手の中国移動(チャイナモバイル)のTD-SCDMA商用化テストが始まり、「3G」という新コンセプトが消費者に受け入れられたが、ネットワークの整備に手間がかかり、いまだに短期間での爆発的な伸びは示されていない。その一方、テレビ機能付きの携帯電話が一時的にせよ売れたのは、北京五輪という特別のニーズがあったからだ。

しかし、北京五輪後、3G携帯電話の売れ行きは下降の一途を辿っている。はっきり言えることは、携帯電話のスクリーンの大きさや解像度の問題によって、携帯でテレビを観ることの魅力を消費者にアピールできないでいる、ということだ。

中国人の多くは現在も、これまでのテレビ視聴習慣にとらわれている。そのため、携帯電話でのテレビ視聴が、ショートメールや音声サービスのようなサービスと同列に認知されるには、まだ相当時間がかかりそうなのである。

したがって、テレビ機能が携帯電話販売を劇的に上向かせる起爆剤になれるかといえば、かなり難しいのだ。そこへもってきての金融危機、である。将来への不透明感が増す中、消費意欲は一層減退し、結果として今年度下半期の携帯電話市場のさらなる縮小がもたらされる可能性が高いのだ。

過去30年来、中国人が初めて体験する本格的な金融危機に

実際のところ、過去30年間にわたり高度経済成長を享受し、生活水準を向上させてきた中国人は、今回初めて本格的な金融危機の怖さを体験している。

今回のレポートの締めくくりとして、8年連続で「大躍進」といえる高成長を遂げてきたゲーム業界を見ておこう。

オンラインゲーム業界の主流が有料方式から無料方式へ転換、さらにまた最近さまざまな料金徴収方式が開始され、注目を集めている。その背後には、業界全体の短期利益しか考えない悪弊が潜んでいる。中国のゲーム市場を愛好家の裾野の規模からみると、中国のオンラインゲームが日韓のネットゲームに勝っているように見える。

しかし、中国で人気の高いオンラインゲームである「魔獣世界」や「完美世界」ですら、「天龍八部」や「征途」などから挟み撃ちされており、その市場地位を守れるとは限らない。ネットゲーム業界に永遠の絶対優位性なるものは存在しないのだ。

ほとんど全てのネットゲーム企業が、未だに「テスト導入センター」として、外国作品の代理部門を保持しているが、2006年あるいはもっと早い時期から、中国の国産オンラインゲームはすでに輸出されていた。「完美世界」が日本へ、「剣侠情縁」がベトナムへ、「航海世紀」がドイツへといった具合である。

2007年、中国で新聞・出版業界を統括する行政機関である新聞総署副署長の(※)書林氏は、ゲームショウ「CHINAJOY」において、「我が国のオリジナルのオンラインゲームによる海外からの収益は5,500万ドルで、その伸び率は175%、今や中国全国から20余りのネットゲームが、20カ国余りの海外市場に向け輸出されている」と語っている。

※鳥へんにおおざと

オンラインゲームの輸出による収益は1億ドルにも達していないが、自らのゲーム製品を輸出し、ドルを稼ぐことが中国オンラインゲームメーカーの新たなビジネスとなってきているのだ。

ところが、グローバルな経済ニーズの減少により、中国オンラインゲームのニーズも大幅に減少すると予測されている。その一方でグローバルな経済萎縮にもかかわらず、開発や代理コストは上昇する一方なのだ。

コストの上昇により、投資の回収周期が伸びるのは確実で、場合によっては元が取れない恐れすらある。一方でゲームに対するニーズはあるが、一方では高いコストを支払わなければならない。これが、中国のオンラインゲーム企業が、今回の経済危機が襲ってくる直前段階でそもそも直面していた課題だった。

金融危機のしわ寄せで中国の最もレベルの高い上場市場であるA株市場の株価が暴落したため、中国人はあらためて財布の紐を締め、株は買わない、不動産価値の下落に用心しろ、マイカー購入計画も遅らせたほうがいいと自ら言い聞かせるようになった。人々の物質的ニーズが減少する中で、オンラインゲームのような支出が削られていくのは至極自然な成り行きだろう。

アメリカの金融危機による中国オンラインゲーム業界全体への波及は始まったばかりで、中国国内の200社近くあるオンラインゲーム企業間の競争は、いまも熾烈を極めている。しかし、これまで見てきたように、元来コア競争力に欠ける中国オンラインゲーム企業には、さらなる試練、数多の試練が待ち受けている。業界筋の指摘する通り、今次のアメリカ金融危機が間接的に中国オンラインゲーム業界の再調整を加速させる可能性は少なくないのである。