質問1: Google Chromeについてどう思う?
直接Ubiquityには関係がないが、Mozilla Labsのメンバーとしてどう考えているかという視点から、ほかにもいくつか質問を行った。やはり気になるのはGoogle Chromeをどう意識しているかだ。Chromeのマルチプロセスアーキテクチャやセキュリティモデルはかなり妥当なもののように見える。Mozilla Labsのメンバーはこうした設計をどうとらえているのだろうか。
Aza Raskin氏は、Chromeの参入は競争性の向上という点でいい結果をもたらしていると考えているようだ。Chrome関係者との意見交換も実施しており、双方に利点があるという。
また、Chromeで実現されているマルチプロセスは、Mozilla内部でも長い間議論されてきた課題だという。しかしWindows以外で同様の仕組みを実現しようとするとOSがサポートしていない機能を使っているため困難になる。MozillaとしてはFirefoxのマルチプラットフォームという点だけはゆずれないため、マルチプロセスの採用は見送ったとしている。依然としてChromeのOS X版が登場していないのは、そもそも実装が困難という理由があるだろうと説明している。
Mozilla LabsではWebアプリケーションをデスクトップアプリのようにするPrismプロジェクトがあるが、Chromeではこれがすでにある程度実現されている。Firefoxの開発が遅れているのではないかという指摘には、たしかに大量のユーザーを抱えることで慎重に動いているという点は事実だが、完成品を提供するGoogleと、インスピレーションを提供し続けるMozillaという立場の違いから、うまい具合にお互いが機能していると説明している。
質問2: JavaScript2がECMAScript 3.1の拡張にまとまったことはどう考える?
いわゆるJavaScript 2のベースとしてECMAScript 3.1が採用されECMAScript 4が譲歩したことを尋ねてみた。Aza Raskin氏は、個人的見解と前置きした上で、現在のJavaScriptはコピーアビリティに優れているので、JavaScriptを拡張する方向性としては妥当な結果になったのではないかと述べている。JavaScriptに対する不満の大勢は大規模開発に向かないということにあるが、優れた開発ツールの登場である程度対応できるだろうということだ。Mozilla LabsではすでにJavaScriptとツールを連携させるための専属の担当者も確保されており、状況は改善されているという。
ちなみに氏はPythonのファンとのことで、Python 3については、Unicodeサポートなどの問題が抜本的に解決されるよう期待しているとしていた。
質問3: Mozilla Labsには、日本語を理解できる者が数名いる?
実は、Mozilla Labsのメンバーのうち3人は日本語を理解できるという。実際筆者は、きわめて単純ながらも日本語解析コードがUbiquityの初期コードに含まれているのを見て、驚いた記憶がある。これはMozilla Labsのメンバーが日本語に興味を持っていることが理由だ。そのきっかけは、いったいなんだったのだろう。
まず、Aza Raskin氏が日本語を理解できる。大学院で2年間日本語を学んだほか、東大の物理学研究室関連の仕事をしに来日していた期間がある。また、Jono DiCarlo氏とDan Mills氏も日本語を理解する。Jono DiCarlo氏は、17歳で大学を卒業した頭の切れる人物で、総務省・外務省・文部科学省及・財団法人自治体国際化協会・地方自治体が実施しているJET Programmeを利用し3年間ほど日本で英語の教師として働いた経験がある(日本語では「邪脳」と名乗っている)。またDan Mills氏の彼女は、日本人だそうだ。
Jono DiCarlo氏はFirefox 3 Summitでローカライズの関係者と会議をもったとき、そのあまりの熱心さに心打たれたことがあるという。その出来事以来、Jono DiCarlo氏は国際化に一層熱心になった。Ubiquityの設計時に最初から国際化を盛り込んだのは情熱に打たれたからで、現在でもUbiquityの日本語パーサ開発に精力的に取り組んでいるという。
日本語の勉強で何が難しいと思ったかとAza Raskin氏に問うと、「"空気"が読めない。それが難しいと思った。コンテキストがすべてなのに、日本語の場合はコンテキストをはっきり言わないからね」と説明があった。
読者へのメッセージは、「Ubiquityコマンドの作成を!」
UbiquityはまだAPIが固まっていない段階にあるのだが、Aza Raskin氏は、読者へのメッセージとして「ぜひともUbiquityコマンドを作って公開してほしい」と語った。もちろんコアな開発に飛び込んでくれるのは大歓迎。しかし、まずはコマンドを作成するといった作業も大いに手助けとなるというわけだ。