IACに先立って、いろいろな小さな会議が開かれる。9月28日に行われた「超小型衛星シンポジウム」は、今年初めての企画。SSTLの定義によると、ミニ衛星とは50~500キログラム、マイクロ衛星は10~50キログラム、ナノ衛星は1~10キログラム、ピコ衛星が0.1~1キログラム、フェント衛星が0.1キログラム以下のものとなっている。この会議では、キューブサットに代表されるナノ(超小型)衛星が対象で、開発者やサブシステムの製作販売会社、打ち上げアレンジサービス会社等が集まって、活発な議論がなされた。参加者は60名くらい。大学衛星関係者やそこから派生したベンチャー会社等の関係者が多く、全体的に若い世代が多く集まった。

発表の様子。トップバッターは、東京大学の中須賀真一教授

SSTLのマーティン・スィーティング教授は、今回のIACの組織委員長として大忙し。多忙な日程の合間を縫っての特別講演。小型衛星の世界を切り開いた氏は、若い世代の台頭を歓迎しながらも、超小型衛星実利用の可能性にはなかなか手厳しいコメント。

「小型衛星と超小型衛星は違う。1990年代、小型衛星の実利用は、技術的な限界があって難しかったが、技術力の進歩によって、地球観測のような実利用サービスを提供できるようになった。超小型衛星の限界は、物理法則によるものだから、超小型衛星の現実的な使い道がどれくらいあるか疑問に感じている。多分、小規模の科学的観測とか、解像度の低いリモートセンシング、軌道上で他の衛星のチェックなどの用途に限られるのではないか」と述べた。

講演中のマーティン・スィーティング教授

コーヒーカップ大の衛星やクレジットカードくらいの大きさの衛星なども開発し、小さい衛星で実現できることの限界を知り尽くしているスィーティング氏に対し、発表者の1人で、今年8月8日に超小型衛星を作る会社「アクセルスペース」を設立したばかりの中村友哉氏は、次のように語る。

「大型衛星と同じことを実現しようとすれば、物理法則の壁があるけれど、超小型衛星は大型衛星の代わりをするものではなくて、別のことを実現するものだと思う」

超小型衛星の可能性を語る中村友哉氏

英国の「小型衛星」の創始者であるスィーティング教授と、日本の「超小型衛星」の創始者とならんとしている日本の若い世代。どちらの言葉が正しいかは、これから創られる未来が教えてくれるだろう。